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カシューナッツはお好きでしょうか?

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22.警察官川島



「あ、ハルカさん。この前の『カシューナッツ』のライブ行きましたよ! やっぱりハルカさんが一番輝いていました」

「ありがとうございます」

 ハルカちゃんはにこやかな顔で俺の話を聞いていた。

「いやー、でもまさかほんとにハルカさんが僕に連絡くれるなんて……びっくりだなぁ。まさかアイドルとこうやって食事ができるなんて、夢みたいです」

 ハルカちゃんは無言で微笑み、たらこパスタを器用にフォークで巻き取り、品の感じられる所作で口へと運んだ。

「ところで、川島さんは社長さんとお知り合いだということでしたが……」

 ハルカちゃんが「川島さん」と俺の苗字を口にした。それはつまり、彼女が俺という存在を認識したということだ。そう思うと無性に嬉しくて、俺は舞い上がり、思わず嘘をついた。

 「そ、そうなんですよ! やつとは大学時代からの友人でね。いやー、ほんとあいつにはいろいろとしてやったものですよ……」

 ハルカちゃんの目がキョトンとしているのに気がつき、俺は思わず言葉の語尾を濁した。

「え? 川島さんはおいくつなのですか? とても社長さんと同じ年代の人とは思えないのですが……」

 そうか、ハルカちゃんはあのへんなおじさんが実は28歳だっていうことを知らないんだ。

「……驚くかも知れないけど、あの社長、まだ28歳なんだよ」
「うそ!!」

 ハルカちゃんは店中に響き渡るような声を発した。よほど信じられなかったのだろう。完全に瞳孔が見開いていた。

「す、すいません……」

 ハルカちゃんは自分でも信じられないくらいの声を出してしまったことを恥らい、顔を真っ赤にして小さくなった。あぁ、なんてかわいいんだろう……

「わ、私、社長さんに会いたいんです。お願いです。社長さんに会わせてください」
「う、うん。わかったよ……」

 思わず了承してしまったが、困った。実際、変なおじさんとは友達でもなんでもないんだから。さて、どうしようか……。

 俺はすっかり冷めてしまったボンゴレソースパスタを口に入れながら思案した。