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D.o.A. ep.17~33

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Ep.29 黒い空





第2・第3・第4軍と、謎の侵略勢の交戦がはじまってから、かなりの時間が経過した。

オークのみで構成された敵勢力には、戦術などない。
行われているのは、ただ大きな波がロノアをおおわんがために、ただ内陸へ内陸へと進もうとするようなことだった。
堤防たるロノア王国軍は、時が経つごとに少しずつほころんでけずりとられていく。
中央突破を目標に延々とつづく戦いは、泥沼のような削りあいへと発展し、時間と兵力を消費させている。
おびただしい死体の数の報告に、後方の総司令部や大本営は地団駄を踏みたい気持ちだった。
ここに来てさえ、オークを手向けてきている敵の正体がまるでつかめないのに、犠牲ばかりが増えていくのだ。

敵についてわかっていることといえば、シンボルのみだろう。
―――ヘビと炎と羽の描かれた、黒紫赤の三色の旗。
国旗かどうかは定かでないが、すくなくとも誰一人見たことのある者はいない。
しかしそもそも、国家ほどの勢力でなければ、かのほどの大船隊を保有し、差し向けることができるとはおもえないので、知らぬ間に興った新国家かもしれない。
おそるべき高水準の技術をもち、人間ではなく魔物を兵力としてつかうことのできる新国家―――。
どんな国だ、とハスカードは、寒気をおぼえた。
オークが個々に手にしている武具の粗悪さを差し引いても、ロノアとはくらべて、レベルがまるで異次元だ。
金が豊富ならどうにか追いつけるという話ではない。
敵は未知の技術を知っている。まるで未来か、異世界から来たかのようだ。
直接戦っている兵たちには伝えられていない情報を総合し分析して、話しあうまでもなく敵の強大さが理解された。
勝てるだろうか、という懸念の段階は超え、今では重役らの間で負けるのではないか、という声がささやかれるようになった。
ただそうはいっても、だからどうする、ということは考えの埒外だ。
なにしろ相手は、人間にとって過去現在、未来永劫において敵対するであろう、魔物なのである。
人間同士なら、過去の営みをふりかえり、講和だの降伏だのと言っていられただろうが、言葉も通じず、金にも興味がない相手に、人間同士の戦争の掟を適用できるはずがない。
目に見える相手が求めているのは、人間の血と肉、そして暴力だけだ。
ゆえに、「負けるのではないか」などと心配してみたところで、戦って抗い続けるしかないのである。

「ハスカード準武成王閣下!緊急のご報告です」
懸念事項をかかえすぎて、頭痛になやまされていた時、バン、と派手に扉が開かれる。
限りない回数、この部屋に飛び込んできて、すでに見慣れた軍人の顔だ。
いつもいつもせっぱつまった様子で息を荒げていて、実際にその報告は緊急で重要なものだが、今回はいつもに増して急いている。
ハスカードがいぶかる。彼はずかずかと歩み寄り、

「王都近辺にオークが出現しました、今すぐ指揮をおとりください」
予想をはるかに飛び出た報せをもたらした。





作品名:D.o.A. ep.17~33 作家名:har