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杉が怒った

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第3章 植物は化学工場



――毒性獲得の理由は、種子や実、若芽が動物や昆虫や鳥類などの餌となることを抑止することが目的とされている。致死性の物質から、下痢程度の症状で済むものまで幅が広い。中毒の殆どが食中毒で90%はキノコによる。症状は胃腸型中毒症状、コレラ様症状、脳症状の3種があり、発生時期は秋季に集中する。キノコ以外にはアルカロイド系の物質を含有する草花によるもので、代表的な物にはトリカブトのアコニチン、ジャガイモのポテトグリコアルカロイド(ソラニン)、青梅のアミグダリンなどがある。
 人間に対する毒性はないがアブラナ科の植物では、発芽前後にイソチオシアネートなどの成分が増加する。これは、成長途上で昆虫類や鳥類の餌となることを抑止する事が目的で毒性は弱く、貝割れ大根やスプラウトの辛味成分が該当する。豆類では生の豆の状態に毒性分(レクチンなど)があり、下痢を起こす――


豊田は、先日眼にしたものと自分の症状から杉に何が起こっているのかを知ろうと、インターネットで検索してみた。あの日、尾高山で赤い花粉状のものを付けた杉の花を見てから、沢までたどり着いた頃、嘔吐感に襲われ、吐いたのだった。吐くことによって少しは楽になったが、頭は乗り物酔いのように重い不快感を示し、這う様にして沢の水で顔を洗いしばらく横になっていたのだった。

調べた結果、植物は化学工場であり、多くの植物が空気中や土壌からの物質で毒を生産していることがわかった。しかし、調べた限りではそれらの毒が花粉に現れることは無い。そうする意味が無いからだ。長い長い進化の途中で植物と動物はお互いの性質を利用しあいながら進化してきた。例えば昆虫が蜜を得るために花粉(雄しべだろう)を体につける。その花粉を別の花に蜜を探しに行った時に雌しべに触れて受粉させる。昆虫はなるべく楽に蜜を得たいと思う。植物はなるべく少しの蜜で花粉を運ばせたいと思う。その結果花の形も色々なものがあり、それぞれに呼び寄せる昆虫も違うという棲み分けができている。杉など圧倒的に広い面積を占めているものは昆虫に頼らず、受粉を風に託した。風媒花だ。もちろん昆虫や動物に受粉を邪魔されることはないので、毒性を持つ必要がないのである。


作品名:杉が怒った 作家名:伊達梁川