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杉が怒った

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第9章 何者?



日野は、寒さを感じながら目を覚ました。少しずつ覚醒してゆく脳に、何者かに襲われたことがよみがえった。不自由な手足……だが、手は自由に動いた。足も動くし、目隠しも無い。夢? そんな筈はない。日野は立ちあがって自分の全身を眺めた。顔を撫でてみる。手のひらに粘着テープの名残りと思える感触があった。手足も見ると、その名残があった。

自分の行動を思い起こして、カメラを探した。しかしどこにもカメラはなかった。落として気付かない筈は無い。それはストラップによって首にかけてあったのだから。日野はようやく、この事件を隠したがっている組織があるのを感じた。

あの杉はどうしただろう。日野は外を見て夕方になっているのを知った。杉のあの赤い花を撮ったのは、何時だったろう、おそらく午後2時頃だったろうと思った。
注射によって眠らされていたのだろう。頭が少し酔っ払ったような気分が残っていた。

何をすればいいんだ。身の危険は無いのだろうか。日野はあらためてあたりの様子を伺った。物音はしていない。そのまま外に出た日野は赤い花粉をつけた小杉の所に向かった。すぐに異常さを感じた。空間があるのだ。あの小杉が根元から切られていた。ここまでする組織? 日野は恐怖を感じ、ヒザが震えているのが分かった。


作品名:杉が怒った 作家名:伊達梁川