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杉が怒った

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第8章 工事中断



尾高山トンネル工事現場で何が―― そんなタイトルの週刊誌の記事が目にとまった。豊田は記事を読む。
 
【……作業員が次々と不調を訴え、病院に運び込まれた。症状は喘息様の呼吸困難、じんましん、嘔吐などで、血圧が低下して、顔色が悪くなってしまったようだ。現在、原因を調査するために工事は中断されている……
 また、この工事を巡っては根強い反対運動が長期間続いており、工事反対派の妨害工作かとの見方もでたようだが、関係者以外の立入は確認されておらず、地元の長老は、聖なる山に穴をあけた罰ではないかと真面目な顔で話している。
 数日前は、このトンネル工事入口付近で崩落事故が起きている。大雨があったならともかく、全く水の出ていない崩落は、今のところ原因がわかっていない。幸い作業員は早めに異変に気付いて難を逃れたようだ……】

 豊田は、この二つの事故の関連はわからなかった。しかし、作業員が不調の症状が自分が経験したことと一緒だと思った。やはりあの赤い花粉に毒があるのかもしれない。そう確信したとしても、じゃあどうすればいいのだという所に行き着いてしまう。

証拠写真を撮ってこようか、そう思ったが、もし自分の想像どおりにあの紅い花粉が毒だったら、そしてもっと増えていたらと思うと腰が退けた。

山が怒っている? 植物が怒っている? いや杉が怒っている? 杉が代表して人間に警告を発しているのかも知れない。豊田はそう思うと、全てが納得できる気がした。最近勉強しただけだが、植物は地中と大気からの成分で色々な毒を作り出すことができるのだ。杉花粉は受粉させる為に花粉を飛ばすのであるが、かなり広範囲に飛ぶ筈だ。えっ、それが毒だったら……豊田は、めまいに似た感覚に陥った。


作品名:杉が怒った 作家名:伊達梁川