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 ハゲの親父も、若い男も、太った女も見境なく、苦悶の表情を浮かべ、あるいは画面下に消えていった。
 いかほどでも貰い受けるつもりで連打したが、女性が慌てて止めに入った。なんでも壊れてしまうそうだ。
 結局、私は粗品である一万円の商品券と引き換えに命を散らす仕事に従事し、良い汗をかき、日当をもらいうけて閉鎖空間たる車両から逃亡した。

 ニュースは毎日欠かさずに聞き流す。これは日課で習慣だ。鳥のさえずりよりもよほど心地よい。
 嗚呼、今日もこの国は平和なようだ。
 私の殺した人間どもは、今、どのようにしてのうのうと生きているのだろうな。ふとそのような興味が湧いたと思えば、テレビの画面のハゲの親父が映し出されえはアナウンサーが解説を入れていく。
 死刑が執行されていたようである。なんとも、爽快な朝の出来事であろうか。
 久方ぶりに、他人と仕事以外で会話が弾むかもしれないな、と心が温まる。
 さて、仕事に行かねば生きていけない。
 今日もどこかで、誰かがボタンを押しているのだろうか。金をもらい、架空の命を散らす仕事に従事するのだろうか、それは実に難儀かつご苦労なことだろうと実体験を踏まえて、名も顔も知らない恐らくは同類たる人間を憐れんだ。
作品名:ボタン 作家名:88