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チャーリー&ティミー
チャーリー&ティミー
novelistID. 28694
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八咫占札の日常 大アルカナ

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「なんだろこれ?」
夢野がルーレットに触れようとした瞬間どこからか声が聞こえてくる。
「夢野さんが一番最初の御客人でしたか。」
その声は八咫だった。
部屋の暗さと八咫の薄気味悪さにびっくりして元SMの嬢王は小さな悲鳴を上げてしまう。
「あの……私フォルトュナコーヒー頼んだはずだけど……」
「そのルーレットを回してください。」
「いや答えになってないんだけど。」
八咫が告げたとおりに夢野はルーレットを回す。
カララン。
カララン。
カラカラ。
カラッ。
ルーレットが止まる。止まった数字は3。
「夢野さんの対応アルカナは女帝。」
ただの偶然である。
ただの偶然である。
この男は私のことは知らない。
夢野は心の中でそう思う。
「では占いましょう。」
八咫は置いてあるテーブルの上でシャッフルを行う。
サラサラサラサラ。
タロットは一枚も落ちない。
そのとき夢野の耳に生暖かい息がかかる。
「ひゃう!」
そこに居たのは……縫だった。
「お客様。ご注文のフォルトュナコーヒー・ジ・エンプレスでございます。」
ジ・エンプレス?
「あの私が頼んだのはただのフォルトュナコーヒーなんですけど?」
「お客様の対応アルカナが女帝ですので女帝の方限定のコーヒーです。」
さっきから女帝、女帝と……
「こちらのコーヒーですが、コロンビア産のコーヒー豆とブラジル産のコーヒー豆をある比率でブレンドしたものです。女帝ということでカップには3の数字が彫られております。こちらのカップは女帝用ですので大変薄くできております。火傷しないようお気を付けください。」
たしかにそのカップはほかのカップに比べてとても薄くできているようだ。
カップの縁には金で細工がしてありそれで白鳥と3の文字が描かれていた。
「それでは始めます。」八咫の声を合図に縫は軽く頭を下げて部屋を出る。
「コーヒーをすすりながらで結構ですのでご協力お願い致します。」
八咫はまとめたカードを裏にして展開する。
「この中から二箇所区切るところを選んでください。」
夢野は5番目と14番目を選んだ。
八咫は手馴れた手つきでタロットを三つのデッキに組み直す。
夢野はコーヒーを飲む。
程よい甘さと少しきつめの苦さ、そして後味がなくすっきりとした味わい。
その美味しさを楽しみながら夢野は八咫の言うことを聞く
「では区切ったカードのデッキに1・2・3と番号を割り振ってください。」
「じゃあ。真ん中3。左が2。」
「ご承知いたしました。」
八咫はニッコリと笑うと右のカードを開けた。
「このカードは戦車の正位置。勝利、征服、援軍、行動力、成功、積極力、突進力、開拓精神、独立・解放を表します。あなたは過去とても成功していましたね?おそらくいろいろな有名人にも呼ばれたはずです。行動力は高く、人を支配することが相手の心を開拓していくのだと心の底で思ったはずです。」
夢野は飲んでいたコーヒーを吹いてしまう。
運のよい事に八咫はガラス一枚隔てた向こう側で占っている。
「おお。危ない危ない。ガラスがなかったらタロットがコーヒーまみれになるところでした。」
「……」
夢野は口をあんぐりと開けている。
八咫は左のカードをめくった。
「女教皇の正位置。象徴するは知性、平常心、洞察力、客観性、優しさ、自立心、理解力、繊細、清純、独身女性。過去成功していた仕事が面白くなくなったんでしょう。それはおそらくあなた自身の自立心でしょうか。人を支配するというのは半面自分の弱さを隠すための虚栄ですから。あなた自身はもともと知性的な女性でしょうから姿を隠すために今までの自分と違うような、ありえないような格好をしている。ついでに言えば独身と……」
「悪かったわね!三十路にもなって独身なんて!」
若干不機嫌になった夢野ではあるが目は驚きで見開かれたまま。
八咫の占いはあたっているのだ。
「そして未来」
ゴクッっと夢野の息を呑む音が聞こえた。
「恋人の正位置。合一、恋愛・性愛、趣味への没頭、浮気、調和、選択、楽観、絆、試練の克服を表します。何か素晴らしい人との出会いがあるでしょう。あと趣味に没頭する時間も取れるでしょう。ただし大きい選択をするのでしょうね。でもそれは幸福につながる道です。」
「で、先生!その選択ってどんな選択なんですか?!」
ついに興奮した夢野がガラスに顔を押し当てて聞き始める。
手には鞭を持ちそうな勢いだ。
「さぁ?」
「さぁ?知ってるんでしょ!さぁ吐け!」
「知りません。私はぼやけた未来しか見えませんし……。」
……。
………。
…………。
「ねぇ。それマジ?」
「近い未来なら水晶玉で見えますが……遠いとぼやけるんですよ。ちなみに今日は……。」
八咫はそばに置いておいた水晶玉を覗き一言。
「……あなたのストーカーがひとり減ります。」
「え?それ、本当?」
内心ガッツポーズを取る夢野。
「ええ。おそらく今日電話をかけてくるでしょう。諦めます。」
八咫はにっこり笑うと「お次のご客人がおりますので。」
と、夢野に退室を呼びかけた。

「いやぁ。あれほんもんだわぁ」
「夢野さんそれ本当ですか。」
義輝と姉妹、夢野は女神フォルトュナの気まぐれサラダをつまみながら談笑する。
「だから本当だといったんです☆」
「……あれは本物なのです。正直あの時は背中の震えが止まらなかったのです。」
シノとシアはサラダのトマトを口にいれながら話す。
サラダの内容はレタスとトマト、フレッシュチーズにスライスオニオンと簡素なものだったが値段の割に4人がつまむにはちょうどいい量でドレッシングもイタリアンと美味しく出来ていた。
「言うことことごとく当たってんだもんなぁ。怖いよ。不気味とかオバケとかの比じゃないよ。ああゆうのは自分が見られている気がして嫌だなぁ。私は。」
レタスを取り皿に盛った夢野はそれを口に入れる。
「あ、夢野ちん。チーズとトマトを一緒に食べると美味しいよ。」
「え、まじ?(パク)美味しい!」
そんな中で義輝は考える。
(まあ、タロットは結構抽象的ではあるからな。タロットは、絵柄の中に点在する抽象的な事象を以って、被占者の問題点を浮き彫りにするのが本来の役割だと俺は思う。)
一方その頃五月雨は……

「……」
「象徴アルカナは塔……どう転んでも不運ですね……」
暗い部屋の中、少女は男の顔を見ている
「過去を表すカードは節制の正位置。自制が効いていたようですね。あなたと喋ると不幸になる……そう思っていましたね?」
少女の顔は驚きに満ちている。
「ふむ、しかも報われない人を死によって救っていた。献身は重要ですね。」
横から入った縫はそっと五月雨の前にコーヒーを置く。
「フォルトゥナコーヒー・ザタワーです。」
五月雨はコーヒーをそっと口にする。
なかなかの味に五月雨も少し嬉しそうである。

「で、現在のカードは力の正位置。大人の女性、実力ある、一枚上手、楽しむ、女性のペース。……これは大人の女の人が絡んできます。それも近いうちに……。彼女は楽しんでいるようです。……醤油?」
五月雨はあっけにとられていた。
力の意味はこれで問題ない。しかし醤油とは一体何だ?醤油って?
「醤油ですか?」
「醤油です。」
「醤油ってあの醤油ですか。」