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僕の村は釣り日和4~賛美歌

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 僕は思わず叫んでしまった。ニンニクと特性ソースがからみ合い、川魚独特の臭みは感じられない。ムニエルだから油っこいかと思ったが、意外とさっぱりしている。僕は次から次へとブラックバスを口に運んだ。
「いやー、本当においしいなぁ。確かにスズキに似ているかもしれない」
 父もそう言いながら、ブラックバスを頬張っている。
 向かいに座っている東海林君を見ると、まだ手をつけていない。両手を組み、まるでお祈りでもしているかのようだ。一分くらいして、静かに目を開けると、彼はようやくブラックバスをナイフで切り始めた。
「うん、うまい!」
 東海林君が静かに言った。彼は一口一口噛み締めるように味わっているようだ。彼の新記録となったブラックバスの味は、きっと僕の舌とは違う味をとらえているのかもしれない。
「おかわり、ありますよ。どんどん召し上がってくださいね」
 キャサリンさんがエプロンを着けたまま、テーブルに座った。ポールさんが彼女にもビールを勧める。するとキャサリンさんはチビチビとすすり始めた。まるで父親が焼酎を飲む時のようだ。
「それにしても、今日使ったルアーは魚に全然似ていなかったな」
 僕が東海林君に話しかけた。
「ああ、クランクベイトのことかい? あれは魚に似せて作られているんじゃないよ。あれはバスの攻撃本能を刺激するんだ」
「ああ、なるほどね」
 僕は釣りの前に父から見せられたルアーを思い出していた。するとそこに、ほんのり赤い顔をした父が口を挟んだ。
「バスをイライラさせるんだよ。今日、健也に貸したルアーを振ったら、音がしなかったか?」
「何か、カラカラ音がしたけど」
「あのルアーにはラトルという玉が入っているんだ。音でもバスを刺激するように作られているんだ」
「へえー……」
「俺が前に住んでいた神奈川では、よく真夜中に暴走族が走っていてね。うるさいのなんのって。張り倒してやりたかったよ。それと同じだな」
 東海林君が笑いながら、張り手をするふりをする。
 まったくルアーとはよくできているものだ。僕はルアーの奥の深さに少しだけ首を突っ込んだような気がした。
「人間ならば手で追い払うところだけど、魚には手がないだろう。だから口で噛み付いて追い払おうとするんだ」
 東海林君がパーの手を勢いよく握り、グーを作った。まるで魚が一瞬で口を閉じるように。