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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夢の続き」 第十三章 婚約

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「うん!ありがとう。もう決めたから、心配しないで。お風呂入ってくる・・・じゃあね」
「出たら、ここにまたおいで」
「いいの?」
「今日だけずっと居たいの・・・」

洋子は恭子の姉として話が出来たことを嬉しく感じていた。ずっと一人で悩んできた自分と違い相談できる相手が
居ることの幸せをきっと恭子も感じていることだろうと思えた。
風呂から出た恭子は由美に、「お姉ちゃんと一緒に寝るから」そうにこっと笑いながら伝えた。
「仲が良いのね、朝遅れないようにしなさいよ」後姿にそう話しかけた由美は自分も入浴を済ませて夫の部屋に行きたい、と思った。

約束の日曜日が来た。修司と由美、洋子と恭子は服装を整えて片山の家を訪れた。その日は話をして千鶴子も来ていた。
「お邪魔します。佐々木です」
「はい、お待ちしておりました。どうぞ中へ入って下さい」
「ではお言葉に甘えまして・・・」

「おばあちゃん!洋子です。お久しぶりです、お元気でしたか?」
「ありがとう。おかげさんで元気ですよ。見る度に綺麗になるね洋子ちゃんは・・・そちらは妹さん?」
「はい、新しい妹で恭子といいます。貴史のおばあちゃんよ、挨拶して、恭子」

促されて、頭を下げ千鶴子に挨拶をした。

「恭子といいます。貴史お兄ちゃんとは仲良くしています。これからもよろしくお願いします」
「恭子ちゃんね。中学生かな?お姉ちゃんといい、あなたといい、本当に可愛いお嬢さんを見られて長生きしてて良かった」
「本当ですか?嬉しいです」
「貴史もあなたのような妹が出来て喜んでいるでしょうね。洋子さんはとっても素直で賢い人だから何でも相談するのよ。
きっとあなたの力になってくれるから」
「はい、そう思っています」
「偉いね・・・さあ、向こうに行ってご挨拶なさい」

みんなの挨拶が済んで、テーブルに飲み物と菓子が配られてきた。落ち着いた状況になって修司は秀和に向かって話を切り出した。
「秀和さん、こんなこと言うのは早いのですが、洋子と貴史くんの交際を認めてやっては頂けませんか?」
「交際を認めるって・・・ずっと昔からそう思っていますよ」
「いえ、将来のことを約束させていただきたいのです。いついつと言う具体的な話ではなく二人が社会人になって生活が
出来るようになったら結婚させたいと願っているんです」
「そういうお話でしたか・・・当人同士がそうしたいのなら何の不足もありませんよ。洋子さんなら大歓迎ですよ。なあ美佐子?」
「ええ、あなたそうよね。貴史にはもったいないぐらいの器量よしですものね、洋子さんは」
「ありがとうございます。由美と再婚して新しく洋子が娘に加わりこんな嬉しいことはありません。本当に幸せになって欲しいと
父親として願うばかりです。厚かましくお願いに参上して良かったです」
「修司さん、そんな丁寧に仰らなくても構いませんよ。そのうち親戚になるんですから」
「そうですか・・・そうですね」

貴史は千鶴子としばらくぶりに話をしていた。

「どうだい?おじいちゃんの言葉解決したのかい?」
「間違っていた・・・と言う真意だよね。何人かに会って話を聞いて、調べものしてある程度は考えられるようになったよ」
「そうかい・・・じゃあ近くいい話が聞かせてもらえそうだね」
「待ってて、文書にして持ってくるから」
「そんな丁寧に考えなくても口で言ってくれればいいのよ」
「ううん、作文にして保存したいんだ。将来読み返して考えることがあるかも知れないから」
「そりゃ言い考えだね。楽しみに待っているよ」
「俺さ初めて靖国神社へ行ったんだよ」
「そう!誰と?」
「いま来ている修司おじさんのお父さんと。岡山から遊びに来ていたんだよ。広島で話をした仲だったから、靖国へ誘われて
参拝した」
「どうな風に感じたの?」
「いろいろ言われてはいるようだけど、戦争で亡くなったたくさんの魂が祀ってあるという事だけを考えたら、祈りを捧げたくなった」
「そうよね、宗教儀式が政治に利用されてはいけないかも知れないけど、軍人が居たから日本は生き残れたという歴史もある。
軍人の暴走で多くの一般人が死んだという歴史もある。平和を考える時に被害者意識だけで見ることも偏見だし、勝者からの
意見も偏見だし、頭を柔軟に使っていろんなことから学び、伝えてゆかないといけないと思うよ。貴史にはそうしてもらいたい」
「そうするつもりだよ。社会の教師になってこれからの子供たちに本当の歴史を教えてゆきたい。思い込むことなく、逃げることをしないで
取り組みたいって考えているよ」
「その意気ね。それと、早く洋子ちゃんと一緒になって可愛い赤ちゃんを見せて。おばあちゃんそれを見たらもう未練は
ないから・・・真一郎さんの所に早く行きたい・・・」
「何弱気なこと言ってるの!ずっと俺のおばあちゃんで居てくれなきゃ困るよ。人間はねその人生の長さを決められているんだよ。
長生き出来る人は使命がまだある。短い人は使命を果たした。それぞれに自分が考えている以上に神から与えられている重さが
あるんだよ。軽んじてはいけないよ」
「あなたにそんな説教をされるなんて・・・なんか反対よね。きっと天国の真一郎さんの生まれ代わりだわ、貴史は・・・」

千鶴子は会うたびに若い頃の真一郎に似てくる貴史をそう見ていた。
涙がこぼれ出してじっと見つめる千鶴子に貴史はそっと寄り添った。

「おばあちゃん、長生きしてくれよな。俺も洋子も大好きだから」
「貴史!・・・」
言葉にならなかった。ぎゅっと力強く抱きしめられて強く愛情を感じられた。この年になって戦争から生き残ってきて初めて
もっと生きたいと思えた。貴史と洋子のために・・・