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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「夢の続き」 第十三章 婚約

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第十三話  婚約


二階から先に恭子が降りて来た。
「お姉ちゃん、お母さん、どうしたの?」
「ゴメンね恭子、ちょっと辛い事話したから、泣いちゃった」
「お姉ちゃんも?話したの?」
「私は違うの。気にしなくていいよ。それより貴史と話は出来たの?」
「うん、お姉ちゃんとの事聞いちゃった!」
「何を?」
「内緒・・・」
「後で貴史に聞くからどうせ解るのよ!」
「洋子、今話したところでしょ。そんな言い方しないの」
「だって・・・」
「恭子も素直になって話してあげて。貴史もいいけど洋子もあなたにとってはとても良い相談相手なのよ」
「お姉ちゃん、私のこと嫌いになっているように感じたから・・・」
「そんな事どうして思うの!あるわけないじゃない」
そう答えた由美に洋子は続けるように話した。

「恭子、ゴメンね。わたしは少し嫉妬していたの。あなたが貴史と仲良くするから。でも、お母さんに言われて気付いたの。
私がもっとあなたのこと考えてあげなきゃいけないって。許して」
「お姉ちゃん・・・恭子はお兄ちゃんに相談したかっただけ。悪いのは私のほうだった。すこし、お姉ちゃんと張り合うところが
あったから。許して欲しいのは恭子のほう。嫌いにならないで・・・」

恭子は洋子にしがみ着くようにして泣き出した。

「忘れよう、今から本当のお姉ちゃんと妹になるの」
洋子は恭子の髪の毛を撫でながらそう言った。
「うん、ありがとう」
由美は感動した。自分と恭子との距離以上に洋子と恭子の距離が縮まったと思えたからだ。

貴史が階段から降りてきてその様子を見て、
「おお!お前ら・・・そうだったのか!」と冷やかした。

「貴史!何がそうだったのか、なのよ。言いなさい!」
「怒るなよ。冗談で言ったんだから」
クスクス笑っている由美を見て洋子はさらに怖い顔になって言った。
「お母さんまで何笑っているの!」
「ゴメンなさい・・・貴史の言い方が可笑しかったから」
「洋子、八つ当たりは止せ。それより、恭子との話が終わったから俺は帰るよ」
「ええ?もう帰るの」
「何か話しでもあるのか?」
「別に・・・ないけど」
「じゃあ帰る。恭子、しっかりな。後は洋子に相談しろ。詳しく教えてくれるぞ」
「うん、ありがとう。そうする」

「貴史、もっとゆっくりしてゆきなさいよ。洋子が可哀そうじゃないの」
「お母さん、でも話はないって言ったから」
「話だけする仲なの?あなたたちは」
「ええ?・・・そんなこと恭子の前で言わないでよ」
「違うの、意味を間違えないで。一緒に居る時間が嬉しいっていうことが言いたかったの」
「そうだな・・・洋子お前の部屋に行こう」
「うん!そうする。じゃあ、恭子話は夜聞いてあげるからね」
「はい、仲良くね、お姉ちゃん!」
「ませた事いわないの!」

さっきまで怖い顔をしていた洋子は機嫌を直して貴史と二階へ上がっていった。

「お母さん、お姉ちゃんとお兄ちゃん、仲がいいのね。恭子とっても羨ましい」
「そうね、早くあなたもそういう人が出来るといいわね。その今の相手の人はどんな感じなの?」
「うん・・・どんなって、そうね背は高くてバスケ部活でやっているの。話し好きじゃないけど、恭子が一方的に喋っているから
聞いてはくれているよ」
「へえ〜、スポーツマンか。かっこいい人なのよね?」
「友達にはそう言われる」
「好きなの?」
「解らない・・・」
「どうして?」
「自分のことあまり話さないから、良く解らないの」
「男の人ってそういう人が多いわよ。貴史みたいな子は少ない方なのよ」
「ふ〜ん、おしゃべりがしたいのにちょっと不満に思う」
「恭子はまだそういう気持ちなのね・・・お部屋に遊びに行くのは止めなさい」
「どうして?」
「きっと・・・求められるから」
「絶対に?」
「そんな気がする」
「お兄ちゃんもそう言ってた。気をつけるようにって」
「お母さんも同じよ。まだ早いって思う」
「お姉ちゃんも同じだったら・・・止める」
「それがいいわね。洋子は同じ年頃だから恭子の気持ちとこれからを一番解ってくれると思うわ」
「嬉しい・・・お姉ちゃんが出来て。恭子はずっと一人だったから淋しかった」
「それは洋子も同じよ。仲良くしてゆけるわねお互いに」

洋子が下に降りて来たのは食事の時間になってからだった。貴史は「お邪魔しました」と言って一緒にご飯を食べることなく
家に帰っていった。そういうきちんとしたところも由美は気に入っていた。
食事が済んで恭子は洋子の部屋に入って行った。

「お姉ちゃんいい?」
「もちろんよ。座って」
「うん、聞いていい?」
「何を?」
「お兄ちゃんとの事」
「どういうこと?」
「その・・・」
「興味があるの?恭子は」
「そうじゃないけど・・・羨ましいから」
「貴史とは小さい頃からずっと遊んできた。私は父親が居なくなってからは貴史の家に行くことが多かった。
中学三年の夏休みに母が留守をしていた時間に貴史がやってきて、ふざけているうちにベッドに倒れこんで、
気がついたら・・・キスされたの」
「聞いたよ」
「そう、急にだったからびっくりして、確か声を出して泣いちゃったの。なんて言うのかな・・・信じていたのにって
いう感情やら、急に大人に見えたりの怖さも感じたの」
「大人に見えた?怖さ?」
「うん、何か威圧されそうな感じよ。押さえ込まれるって言う恐怖感みたいな気持ちね」
「貴史お兄ちゃんのこと好きだったんじゃなかったの?」
「そうだけど、一緒に居ることで幸せだったからそれ以上の気持ちは当時なかったのよ。解らなかったと言った
方が正しいのかも知れないけどね」
「お兄ちゃんがそう感じたのね。お姉ちゃんのこと好きって」
「どうだかわからない。単純にしてみたかっただけっていうのかもしれなかったし」
「もし、もっとされていたら、今は無かった?」
「多分ね。絶交したでしょうね。もちろん同じ高校にも行かなかっただろうし」
「へえ〜そんなに嫌なことだったの?」
「私のことそんな風に簡単に扱って欲しくなかったって言う気持ちもあったのよ。何度も謝ってくれて、自分の気持ちが
収まって来て初めて貴史のことがやっぱり好きなんだって思えるようになった。そうしたらね、今度は自分から
積極的に迫るように変わったの。不思議ねものよね、怖いっていう感情は消えて、欲しいという感情に変わる。恭子には
刺激的過ぎるかも知れないけど、そういうものなの」
「今の彼がキスしてきたら恭子はきっと拒否すると思う。嫌いじゃないけど、そういうんじゃなく仲良くしたいだけだし。
買い物に出かけたり、遊園地に行ったり、楽しくおしゃべりが出来たり、勉強教えてくれたりしてくれるのが嬉しいから」
「そうね、まだ中学生だもの。我慢しなさい」
「貴史お兄ちゃんとお母さんはお姉ちゃんの言うことに従えばいいよ、って言ってくれた。同じ年頃だから良く解るだろう
ってね。正直遊びに行きたい気持ちもあるけど、今は止めるね。高校生になってからちゃんと考える」
「偉いね。恭子の気持ちが理解出来ない彼だったらそこまでね。悲しむことはないから本当に好きになってくれる人を
探すのよ。遊びや興味で許しちゃいけないから」