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パックでドスンな話

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ホラー映画が大好きなのに、お化け屋敷は苦手という方、結構いるのではないだろうか。
 私もこのタイプだ。
 ホラーの疑似体験というのは、やはりコワイ。
 作り物の映画でもそうだ。私は洋画のホラーは全く平気なのだが、邦画のホラーは何故か身構えてしまう。身近に感じられる世界だからなのだろうか。

 しかしダンナは、ホラー映画もお化け屋敷も、全く平気なタイプ。
 強烈なホラーを見ていて私がビクッとしても、隣りで見ていたダンナは無表情、無反応。どんなホラーにたいしても顔色一つ変えない。
 …ちゃんと映像見てんの? と、何度もツッコミをするほど。
 お化け屋敷でもそうだ。こっちの方がもっとヒドイ。私がビクビクしている間に一度、置いていかれた……。残されたこっちはもう、発狂寸前。
 この後ダンナがどうなったか……言うまでもない。

 ―――私が何を言いたいのかと言いますと。
 ダンナにはコワイものがないのか? というくらい、いつも冷静なのだということ。
 一度家のカギをなくして帰って来た時は、捨てられた子犬みたいにプルプルして青ざめていたけど。この後無事、私が(←ここ四倍角)助言したコンビニで発見。
 そんなダンナが腰を抜かしたコトがあった。
 これは、そんな出来事。

 ある夜、私は顔にパックをしていた。
 パック中は表情も動かせないし、瞼にもかぶせたかったので、とりあえずジッとしていようと布団の上に座っていた。
 すると後ろから、

 ダンナ「なにしてんの?」

 と、呑気なダンナの声。近づく気配。

 私(ん?)

 私が振り向くと。

 ダンナ「―――ひっ!?」

 ドスン!!

 私(…え!?)

 私が半目に開いたその先で、中腰だったダンナは派手にお尻を畳に打ちつけていた。眼鏡ごしから見えるダンナのその目は、まるで地球外生命体を見るような……目。
 そんなビックリしたの!? ていうか、なにさ、その目。
 ダンナはじ~~~っと私の顔を見つめ、

 ダンナ「……なんだ、パックか……」

 と、納得を含んだ溜息とともに、

 ダンナ「まっ黒黒すけみたい……」

 去り際にポツリと呟いた。

 まっ黒……?
 
 ―――はっ!?

 そうだ。今日は墨の効果がなんちゃらかんちゃらの黒パックをしていたんだ!!
 ダンナの驚きも納得。
 薄暗い部屋の中にポツンと体育座りしている女に声をかけたら、唇しかでていない謎の黒い人間。
 確かに……ビビるかも……。

 この後、不運にもトイレから出てきた黒パックしたままの私に遭遇したダンナは、再び悲鳴を上げた。
 
 ……黒パックは、もうやめよう……。

 ☆オマケ☆
 ダンナにコワイものを聞いてみた。

 私「キミってコワイものないの?」
 ダンナ「あるよ~」
 私「え、なになに?」
 
 ワクワク……。

 ダンナ「世間」

 ……。
 ………。

 なんだろう。
 この、肉をきって骨をたたれた感じは……。

作品名:パックでドスンな話 作家名:愁水