小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

アイラブ桐生 第二章

INDEX|2ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 


 調理実習も二年の研修期間が終わり、
晴れて、近場に有る温泉旅館の板場での修行が始まりました。
まだ私には、どこかにわだかまりがありました。
デザイン関係の仕事に、たっぷりと未練を残しながらも、
手に職を付けて行くための、板前修行の日々でした。

 板場での仕事は、項目ごとに細分化をされています。
新人に与えられる仕事といえばは、
後かたずけと、食器や道具類の手入れのみでした。
職人が最初に仕込まれることといえば、粘り強さと忍耐力の養成でした。
仕事を覚える前に、まずはその適応性が試されて、
さらにひたすら我慢する心と向上心の蓄積が求められました。
そこでの仕事ぶりが認められると、次に下ごしらえへと進み、
やがて野菜から魚、さらに肉へと階段をあがります。

 煮物、魚の焼き物、汁もの、お造り(刺身など)などを、
その日の献立によって仕上げることが許されるのは、こうした下積みを終えた
板前さんだけに限られています。
これにも専属の板前さんが配置されていて、それ以外の多くの若手は
その下準備と補助として、荒く「こき使われる」のが常でした。



 さて・・・
この年の八木節祭りには、一人で行くことになってしまいました。
いつも一緒に行く相棒が、些細な事故で入院をしたためです。
祭りの期間中は、大幅な交通規制があるために、
唯いつ通行が許された、市内循環のバスを使うのが常套でした。
しかし今回は一人だけということもあり、この日に限って
自分の車ででかけました。


 市内の細い路地をいくつか抜けて、
「本町通り」の近くにある空き地へ、無事に駐車ができた時には、
われながら上出来と、思わずひとりで自分をほめました。


作品名:アイラブ桐生 第二章 作家名:落合順平