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夏風吹いて秋風の晴れ

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叔母に返して


「ごめんねぇ 自分でさせちゃって・・直美ちゃん」
叔母が台所から手を拭きながら戻ってきていた。
「いいえぇ こっちこそ忙しい時間に、ですから」
直美が頭を下げていた。
「あらっ これなの?綺麗ね」
叔母がすぐに直美の胸元で光っているネックレスに気がついていた。
「あっ、はぃ」
「あら、綺麗だわ、よかったわね直美ちゃん」
「はぃ、なんか劉に悪いことしちゃったみたいで・・」
「うーん、返さなくてもよかったのよ、直美ちゃんにして欲しくてあげたものなんだから・・」
3年前に叔母が直美に譲ったネックレスのことだった。
「いいえぇ こっちこそ 返しますなんて、変なこといいだして・・すいません」
「いいのよ、気持ちはわかってるから・・ありがとうね 直美ちゃん」
「いいえ、失礼なことしちゃって・・はぃ ありがとうございました。このネックレスのおかげで、東京にきてからずっといろんな、いいことあったような気がします。」
「そうかしら・・そういってもらえるとうれしいわ・・」
「はぃ。お守りでしたから・・あっ、でも劉が交通事故にあったのは、ちょとなのかなぁ・・でも、元気でしたから・・」
「そうね、元気ですものね」
叔母がこっちを見て 笑いながらだったし、一緒に直美もうれしそうだった。
「はぃ、叔母さんお返しします」
直美は綺麗に箱にいれてきた叔母からもらってこの前まで肌身離さずつけていたクロスのネックレスを差し出していた。
「いいのね、ありがとう」
「はぃ。こちらこそ・・」
叔母がわるそうな顔で直美の手からその箱を受け取っていた。
「劉ちゃん、偉いわね」
叔母がこっちにだった。
「えっ、あっ、でも、直美が喜んでくれたから・・うん、それで、こっちもうれしかったから・・」
「そう、ごめんなさいね」
「いえ、いいんです。ずっと直美の首元で輝いてくれれば、こっちもうれしいですから。見てるの好きなんで・・」
ちょっと言ってて恥ずかしかったから、少し笑いながらだった。
「叔母さん、弓子ちゃんに譲ってあげてくださいね」
「はぃ、そうします、ありがとう、ほんとに・・直美ちゃんも娘だと・・ずっと・・なんだけど・・茨城の親御さんには悪いけど、そう私は思ってますからね・・これを返されてもね・・いろんな事かんがえさせちゃって ほんとにごめんなさいね」
「やだぁー 叔母さん・・こっちこそ変な気分にさせちゃって・・」
真剣な顔で、叔母が直美に言って、それに直美が答えていた。
叔母はなんだか、泣きそうになっていた。
「まぁ えっと、そういうことで、これからも よろしくってことで・・」
俺はいい言葉が浮かばなくって、変な言葉を発していた。
「劉ちゃんたら・・」
叔母が笑いながらだった。
「お腹すいちゃったなぁー 弓子ちゃん達が車洗い終わったらご飯がいいなぁー」
「あら、まだやってるのかしら・・いいのに・・」
「うーん けっこう面白いのかもかなぁー ねっ、楽しそうだったよね、直美も一緒にてつだってくる?俺、手伝いに行こうかなぁー」
「あっ、じゃあ 私も・・・面白そうだもん・・やったことないし・・」
直美がうれしそうな声だった。
「じゃあ、いこうか?もうすぐ終わりそうだし・・それでお昼にしよう」
「うん、そうしようか。叔母さんそれでいい?」
直美が叔母に聞いていた。
「はぃ、でも早くしてね、終わらなくてもきりのいいところでね。おかず冷めちゃうから・・お願いね、直美ちゃん。劉ちゃんはそういうのダメだから・・」
「はぃ。そうします。任せてください。ではいってきます」
直美が言いながら席をたって、それに合わせて俺も一緒に立って玄関に向かっていた。
「終わらなくっても 早めに切り上げてあげてね、叔母さん大変だから・・」
「うん。わかってる」
玄関で靴を履きながらだった。
「ねぇ。今日、弓子ちゃんに渡すかなぁ・・」
「えっ、あぁー うーん どうかなぁー なにかあったときかなぁー まだ中学生だしね・・・学校とかにはしていけないでしょ?」
「それは そうだろうけど・・でも、学校行くときだけそれは 外せばいいことだし・・でも、何かの記念日とかにかもね・・弓子ちゃんに渡すのって・・」
「うん、でも、それは、きっと叔母さんが時期をみてでしょ・・」
「うん、そうだね・・」
「よし、やりますか?」
「はいよー 劉―」
玄関のドアを開けながら 二人で大きな声をだしていた。こんな直美が高校生のときから大好きだった。
「あっ、直美ちゃん」
玄関をでると、純ちゃんが、手に大きなブラシを持ってこっちに気づいて笑顔を見せていた。どうにも、俺より直美のほうがこのチビちゃんには人気のようだった。
もう、弓子ちゃんは車にワックスをかけていたし、チビちゃんの手の中のブラシはただのお遊びようになっていた。
「弓子ちゃん、お昼できちゃったからさぁー 手伝うから、急いでやっちゃおう」
直美が車の向こうにいて、一生懸命手を動かしていた弓子ちゃんにだった。
「はぃ、もうすぐですから・・」
「うん、なにしよう・・よくわかんないんだけど・・」
「直美さんは、すいませんけど純ちゃんみてもらっていいですか?お家かえってって言っても聞かないし・・水を車にかけそうで・・あぶなくって・・」
「あら、そう、じゃあ 劉がそっちね、わたしはこっち」
純ちゃんを小さく指差していた。
「はぃ、すいません」
「じゃぁー やるかぁー」
なんだか、わざと大きな声を俺は出していた。
「はぃ、よし がんばろうー」
直美が、また、それに答えて大きな声だった。
「はぃ」
続いて弓子ちゃんで、
「はーい」
って純ちゃんが直美に耳元でなにかを言われて、大きなかわいい声で、ブラシを高くうえにだった。
にぎやかな 4人が、笑っていた。
高い高い 秋空の下だった。

作品名:夏風吹いて秋風の晴れ 作家名:森脇劉生