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夏風吹いて秋風の晴れ

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月夜の夜の笑顔


金曜日の夜になっていた。明日は赤堤の叔父の家に純子ちゃんがやってくるはずだった。
あれから、叔母からも叔父からも何も連絡はなかったけど、それはきっといい事のはずだった。
夕飯を終えて、直美は俺がいれたコーヒーを飲みながらソファーでくつろいでいた。
「叔母さんから連絡なかったなぁー」
「なにが?」
直美が空けたままのドア越しに隣の部屋にいた俺に聞いてきていた。こっち机は机に向かって来週期限の授業のレポート書きをしながらだった。
「純ちゃんのね、生活用品よ・・ほら、弓子ちゃんの時には一緒に叔母さんとデパート行ったじゃない?今回もお誘いあるのかなーって思ってたから」
「あっ、そうだねぇ・・でも、なにも買うものってないんじゃないの?小さいし・・」
「そうかなぁー 叔母さんって純ちゃんにも、そういうのきちんと揃えそうなんだけどなぁー やっぱり弓子ちゃんと一緒に行ったのかなぁ・・」
コーヒーカップを片手に、話しながら、直美がこっちに歩いてきていた。
「うーん そうかなぁー どうなんだろ・・俺のところにも何も連絡ないんだけど、直美のとこにも電話ないの?」
「うん、ないんだよね」
「そっか・・」
「でも、あれかなぁー それっていい事なのかなぁー そうだよね、うん、そうそう」
自分で返事をしていた。
「少し、さびしい?」
「うーん、そんなことはないけど・・まっ いいでしょ、家族のことですからね、うん」
ちょっとの笑顔を浮かべていた。
「そうだよ、なにもこっちに連絡ないってことは いいことだって」
「うん、うん、ちょっとはさびしいけどさ、一緒にお買い物かなぁーって勝手に思ってたからさぁー」
「そっか、まぁそうだよなぁー この前は部屋のカーテンも直美と一緒にかけたのになぁー・・今度は全然手伝えって言われないのもなぁー たしかに、少しだなぁー」
俺も少しだけ、今回は蚊帳の外って感じは思っていた。確かに、それはそれでいいことなんだろうなぁーってのは思っていてもだった。
「明日のことって、今日も連絡ないんでしょ?直美のとこにも・・」
「うん、ないよぉー」
「そっかぁー 俺は仕事終ってからだけど、先に行ってる?明日ってバイト休みなんでしょ?」
「うん、どうしよう?一緒に行こうか?劉と?豪徳寺の駅で待ち合わせでもする?」
直美にしてはめずらしい言い方だった。
「いいけど、先に行ってればいいじゃん。手伝って欲しいんじゃないかなぁー 叔母さんも・・」
「でも、弓子ちゃんいるから大丈夫かもよ・・しゃしゃりでてもなぁー」
「そんなことないだろ、連絡なくても、あてにしてるって。いつもちゃんと手伝ってるから、忘れてるだけだって・・」
「そうかなぁー」
「うん、たぶん、明日の宴会って大人数かもしれないよ。教会の神父さんたちも繰るかもよ?」
「うん、そんな気はするんだけど・・」
「じゃぁー 手伝ってあげてよ、大変だろうけど・・3時ごろにでも行ったら喜ぶよ」
「そうしようかなぁー 行ってもいいのかなぁー 」
直身なりに考えているようだった。
「叔母さんさぁー きっと、いつも直美に手伝ってもらってるから、悪くて今回は気を使ってるのかもよ。たぶん きっとね」
想像だけど、きっとそうじゃないかと思っていた。叔父が俺のところに連絡をよこさないのもそういうこともあるんだろうってだった。
「あっ 電話・・叔母さんかもよ?直美でなよ」
「えっ、うん」
受話器の向こうはやっぱり赤堤の叔母のようだった。直美の話し声をきいてると、どうやらお昼ぐらいから、手伝ってくれないかしらって事のようだった。直美はさっきと違って、快くその話を受けているようだった。なんとなく少しだけ心配していたけど、直美の話している顔をみていると、余計な事だったのかもって思えるようだった。
最後のほうの話は、なんだか、最近遊びに来てくれないじゃないって叔母に言われているみたいで、それに、そんなことないですよぉーって答えているようだった。とにかく明るい声の直美にほっとしていた。

「明日さぁー お昼過ぎにに来てちょうだいって言われちゃったぁー 大変だなぁー いっぱい来るらしいよぉー お隣さんたちもなんですって・・いつも手伝ってもらって悪いから、今回はお願いしないつもりだっけど、やっぱりどうにも1人じゃできないからって、頼まれちゃった・・がんばんなきゃ」
「そっか、頑張ってよ、悪いけど」
「もうさぁー ゆっくりご飯だけおよばれしようと思ってたのになぁー 」
直美は文句を言いながらうれしそうな顔をしていた。そんな直美がかわいかった。
「じゃぁー 俺は7時半ごろだからさぁー おいしいのは別にきちんと残しておいてよね」
「うん、まかせて」
いつもの大好きな笑顔だった。
「ねぇねぇ 劉さぁー それって来週なんでしょ?提出日?」
机の上に広げていたレポートのことのようだった。
「火曜日の提出だけど・・」
「じゃぁー まだ平気だよね・・」
「まぁ そうだけど・・」
「じゃぁー 着替えて走ろうか?」
何をいきなりってだった。
「今から?マジで?」
「そ、マジで」
「どうしてよ・・」
「走ったら気持ちいいかなぁーって思っちゃったからって理由でいい?だってそうなんだもん」
「どこまで?」
「そうだなぁー 馬事公苑まで」
「ひえぇー マジで?でさぁ、それって明日の朝は走らないでいいわけ?」
「だめぇー」
「えぇー」
「うんと、じゃあ明日の朝は少しでいいや。だから いこう。今日涼しいし、ねっ」
いやいやだったけど、うんって返事をしていた。こういうときは絶対譲らない子だった。
それはそれで、かわいいことでもあることだった。

外は、9月にしては涼しい風が吹いていて、目指す馬事公苑の方角には、満月が光っていた。
それに向かって直美はうれしそうな顔で走っていた。

作品名:夏風吹いて秋風の晴れ 作家名:森脇劉生