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家に憑くもの

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健次郎は、ポケットの中で携帯電話が振動するのを感じた。メールの着信だろう。誰からのメールなのかは、すぐに予想がついた。
 ―― 真由美からだ。

真由美は、自分が福岡に単身赴任してから、なにかと世話を焼いてくれた。やがて、真由美は健次郎のマンションに来て、食事の世話や掃除などをしてくれるようになった。そうしているうちに、二人が会社の上司と部下という関係から、男と女の関係へと発展して行ったのは、自然の成り行きだったと、健次郎は考えている。真由美も、最初からそれを望んでいたのだと思う。今では、真由美は週末ごとに健次郎のマンションに来て、泊るようになっていた。
健次郎は、ベッドの中で真由美に自宅に帰ると伝えたときの、真由美の表情を思い出した。せつないような、悲しいような、なんとも言えない表情だった。ほんの1泊2日だよと言っても、真由美の表情は晴れなかった。
ねえ、いつ奥さんと離婚できるの。いつわたしと結婚してくれるの。
そう言った真由美の顔は、真剣そのものだった。思い詰めた様子さえ見て取れた。きっと、真由美からのこのメールは、自宅にいる自分へのあてつけか、妻への嫉妬だろう。
真由美に何かお土産を買って行ってあげよう。機嫌が直るような。
作品名:家に憑くもの 作家名:sirius2014