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表と裏の狭間には 最終話―戻れない日常(前編)―

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「面白い物を見つけたわよ。」
すっかり閑静になったアーク関東支部の拠点、その支部長室。
明後日に卒業式を控えた今日この日の昼。俺たちは、そこでいつも通り菓子を適当に出して、お茶を適当に注いで喋っていた。
午前中で準備は終わり、午後は丸々空いていたのだ。
そこで、ゆりが突然、本を取り出した。
「面白い物?」
ゆりが持っているそれは――横長で、薄くて、表紙は硬そうで、更に子供受けしそうな絵が書いてあって――要するに、絵本だった。
「何だそれは?」
「知り合いの絵本作家が書いたのよ。で、見事本になったからって一冊くれたの。今度市場に出回るものよ。」
……お前の人脈は本気でどうなっているんだ?
「暇潰しに読んでみましょ。」

『これは、むかしむかしのお話です。

あるところに、二つの小さな国がありました。
二つの国はとっても仲良し、その国の王子様と王女様もとっても仲良しでした。
みんな笑顔で、みんな幸せに暮らしている二つの国でした。
ところが、ある日突然、ある大きな国が攻めてきました。
小さな二つの国は、なす術もなく、あっという間に滅ぼされてしまいました。
でも、王子様と王女様は、二人で逃げました。
手を繋いでどこまでも、どこまでも。

あるところに、小さな国がありました。
その国の王様とお妃様と、王女様は仲良し三人親子でした。
優しい二人の愛情を、一身に受けて育った王女様は、とてもいい子に育ちました。
ところが、ある日突然、王女様がお散歩をしている間に、大きな国が攻めてきました。
そして、大きな国の王様によって、優しかった王様とお妃様は、殺されてしまいました。
王女様がお家に帰った時に見たものは、優しいお父様とお母様ではなく、優しかったお父様とお母様でした。

あるところに、大きな国がありました。
その国の王様の子供は三人兄妹。次期王様のお兄さんと、双子の弟さんと妹さん。三人はとっても仲良しでした。
ところが、ある日突然、国の中で大きな地震が起こりました。
国は大変な混乱に陥り、三人兄妹は離れ離れになってしまいました。
そして、三人のお父さんとお母さんは、ある大きな国の兵士に、暗殺されてしまいました。

別々の国から逃げてきた六人は、やがて運命の出会いを果たします。
出合った六人は、大きな国への復讐を決意しました。

そして、六人は、ある国の仲間になりました。
その国は、誰も知らない、秘密の国でした。
その国は、いろんな悪い国をやっつけている国でした。

六人は頑張って、その国の偉い人になりました。
そして、六人はもっと頑張って、家を買いました。
昔の家ほどではありませんが、とても大きな家でした。
六人は、家族になりました。
そして、六人には、秘密の国のことを知らない、普通のお友達も出来ました。
六人の家は、秘密の国の外にあったのです。
やがて、そのお友達と、一緒の家に住むことになりました。
六人家族は、七人家族になりました。

あるところに、一つの国がありました。
その国は豊かな国でした。
その国の王子様と王女様は、とっても仲良しの兄妹でした。
ところが、ある日突然、王様とお妃様は、事故で帰らぬ人となりました。
すると大変なことに、国の中の悪い人たちが、国を自分たちのものにしようとして、悪いことを始めました。
それが嫌だった王子様と王女様は、国を捨てて、逃げました。

やがて、七人家族のそばに、とても仲のいい兄妹がやってきました。
秘密の国の六人は特に気にかけたりはしていなかったのですが、ある日、大変なことがおこりました。
仲良し兄妹のうち、お兄さんのほうに、秘密の国があることを知られてしまったのです。
この国があることが世界中に知られたら、大変なことになります。
どうしようと六人は考えました。
そして、そのお兄さんを仲間にしようと考えたのです。
幸いなことに、お兄さんは快く仲間になってくれました。

そして、秘密の国を知る六人は、七人になりました。

それからしばらく後、その兄妹も一緒に住むことになりました。
七人家族は、九人家族になりました。
九人になった家族はとっても賑やか、みんな仲良しで、笑顔が絶えない家族になりました。

それでも、最初の六人は諦めていませんでした。

大きな国への復讐は、今や六人の夢となっていたのです。

その夢が叶うかどうかは、誰にも分かりません………。』

「………これは。」
「ええ。あたしもそう思うわ。」
「まるで、私たちみたいなの。」
「本当っすね……。」
「……知り合い?」
「あはっ……わっちらのストーカーさんとか?」
俺にはあまり分からなかったのだが……。
ゆりたちは、何か心に来るものがあったらしい。
「いえ、あたしの知り合いではあるけれど、表の知り合いよ。あたしたちの事は知らないはずよ。」
「偶然……なのか?」
「ええ。あたしも信じられないけどね。」
「なあ、どういうことなんだ?」
いい加減我慢しかねて、聞いてみる。
「ああ、紫苑は全員の過去を聞いたわけじゃなかったのよね……。この童話、あたしたちが辿ってきた人生に、驚くほどそっくりなのよ。」
そして、ゆりたちは、俺に聞かせてくれた。

『あるところに、小さな国がありました。
その国の王様とお妃様と、王女様は仲良し三人親子でした。
優しい二人の愛情を、一身に受けて育った王女様は、とてもいい子に育ちました。
ところが、ある日突然、王女様がお散歩をしている間に、大きな国が攻めてきました。
そして、大きな国の王様によって、優しかった王様とお妃様は、殺されてしまいました。
王女様がお家に帰った時に見たものは、優しいお父様とお母様ではなく、優しかったお父様とお母様でした。』

「これはあたしね。あたしの両親の話は、前に少ししたでしょう?」
「ああ。聞いた。確か、霧崎組と敵対していた組の組長夫婦だったんだっけ?」
「そうよ。その組が、『小さな国』ってわけよ。王様とお妃様はあたしの両親。王女様はあたしね。」
「ああ。」
「両親は、あたしがある日、散歩に出ている間に殺されたのよ。あたしの地元は自然が豊かでね。あたしは散歩するのが好きだった。そして、『お散歩をしている間に、大きな国が攻めてきました。』つまり、あたしが散歩している間に、両親は霧崎組の襲撃を受けたのよ。あとは、『大きな国の王様によって、優しかった王様とお妃様は、殺されてしまいました。』ね。そのまま両親は死んでしまった。『王女様がお家に帰った時に見たものは、優しいお父様とお母様ではなく、優しかったお父様とお母様でした。』当時はまだ幼かったから、両親の死体を見ても、そこまでの衝撃を受けなかったのがせめてもの救いよね。ただ、『眠っているだけ』なんて思ってたわ。でも、すぐにお父さんとお母さんは、小さな壷になって帰ってきた。」
「そうか………。」
「つまり、『大きな国』が霧崎組で、その『王様』が霧崎平志ってわけよ。」

『あるところに、大きな国がありました。
その国の王様の子供は三人兄妹。次期王様のお兄さんと、双子の弟さんと妹さん。三人はとっても仲良しでした。
ところが、ある日突然、国の中で大きな地震が起こりました。