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2.秘密(11/7) :マスターと魔王


 「秘密」というものはとかく人間というやつを惑わしてきたそうだが、人間でなくとも惑わされる者はいるらしい。
「僕から聞いた、てのは内緒だからね」
「はいますたー!」
「じゃあちょっと陛下のとこ行っといで」
「はいますたー!」
 何やら目を輝かせたアホの子…もとい我が主人、のマスター、の使い魔の娘、が奥の部屋にいる我が主人の元へと駆けていく。
 残された彼は、こちらに振り向くと意味ありげに微笑んで、使い魔が向かった方とは逆の方向へと歩き去った。
 彼の行動の大体の予想はつく。
 それによって何が起こるのかも。
 程なくして我が主人が、怒りのオーラを身にまといながら姿を表した。
 後ろから申し訳なさそうに使い魔…もといアホの子が小走りについてくる。
「まったく…あの人はなんでこうくだらないことばかり…」
「あ、あの…ごめんなさい陛下…」
「あぁ、君はいいんだ。あんな嘘を吹き込むマスターのほうが悪いんだから…と。おい!マスターが何処に行ったか知っているな?」
 私に目を止めた主人が断定的に問う。
 口を開こうとした瞬間、私の耳元で声がした。
『秘密だよ』
「……」
 苛立ちを隠しながら無言で、振り向きざまに剣を抜く。
 そのまま一回転して主人に向き直り、「あちらです」と彼の去った方向を示す。
 その瞬間、誰かが走りだす音が壁越しに聞こえ
「ありがとう!」
「あっ…陛下!」
 逃すまいと主人が、その後を追って心配そうに使い魔が、揃って壁の向こうへと消えた。
「…」
 背後を確認し、真っ二つになった一枚のお札を拾い上げる。
 完全に切り裂かれているそれが
『秘密って言ったのにさ…少しはオレにもなびいてくれたっていいじゃん』
 そう捨て台詞を残すと、ひとりでに燃え上がった。
「必ずこうなるとわかっているのになぜこんなことをするのか…人間というのはわからん」
 燃えカスを手から払い落とし、私は小さく呟いた。