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1.ほおづえついて(11/6) :ワンノン


 寂れたビルの一室。
 嫌味な笑顔を浮かべた男が、つまらなそうに椅子に座るもう一人の男に話しかける。
「お、どうした? ほおづえなんかついて」
「アンタが帰らないからデショ? 用事ないなら早く帰ってヨ」
 話しかけられた彼は、諦め口調でそう答える。
「用事はあるって言ってんだろ。これからここに来る客に用があるんだ」
「誰が来るっていうのサ…オレまだやることあるし、ホント帰ってくんないカナ?」
 言葉と裏腹に無表情に彼は言う。
 男はその様子に、にやりと笑ってこう返す。
「見ねーから好きなだけやりゃいいだろ。それともなにか、俺に見られたら困るのか?」
「困るに決まってるデショ!オレの仕事をなんだと思…」
 言葉の途中、挿していたイヤホンから聞こえてきた音に彼は言葉を止めた。
「お、きたのか」
 すぐに察して男が言う。そして「どうだ?」と言わんばかりにアイコンタクト。
 それがしゃくにさわった様子で、彼は顔に苛立ちを浮かべながら立ち上がり怒鳴り声をあげた。
「ネェ、なんでそういつもいつも気軽にココ教えるノ!?やめてくれないカナ!」
「いいじゃねぇか、俺とお前の仲だろ? 今回の仕事にも一枚かませてやっから!」
「…ったく…」
 そして扉を叩く音。
 これが、事件の始まりだった。