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緑の季節【第一部】

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新緑も色濃くなってきた気候もいい季節。

その日、一台の自動車が砂利の敷き詰められた駐車場に停まった。
朝のひんやりしていた空気も徐々に暖かさが加わってきた。
車から降りて砂利に足を着けるとジャリと小気味良い音が足元から静寂に近い空気に溶け込んで消える。
やや歩きにくさはあるがジャリジャリと響く音は心を安らかにさせるようで嫌いでは
ない。
駐車場から十数歩も進めば、通行をする為に敷かれた石の通路へとなる。
今朝、出掛けに磨いた黒の革靴が少し白くなったがさほど気にするほどではない。
しかし彼は、スーツジャケットの左ポケットから取り出したチェック柄のハンカチで
掃った。
埃面を内に畳むとズボンのポケットにしまいこんだ。
石畳のこの道は、墓地への階段に繋がっている。
ダークスーツに黒のネクタイ、手には白色と薄紫のスイトピーの花束を抱え、
階段を踏みしめるように上がって行った。

作品名:緑の季節【第一部】 作家名:甜茶