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表と裏の狭間には 十八話―家族旅行―

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「でも言わせてくれよ。感謝せずにはいられないんだ。」
レンは、あの日以来、何度もお礼を言ってくる。
それももういい、と言っているのに。
「お前も普段俺を助けてくれるだろ。俺のも、それと同じだよ。」
「むぅ………。」
レンはなにやら唸る。
しばらく黙った後、レンは口を開いた。
「やっべ………、のぼせたかも………。ちょっと紫苑、マジで助けて。ここ………誰もいな………い。」
バシャン、という音が背後からした。
はぁ!?
「レン!?おいレン!?」
誰もいないというのは本当だろう。騒ぎが全く起きない。
「これはマジでヤバイ………ッ!」
俺はすぐさま露天風呂を飛び出し、レンを助けに向かう羽目になった。

二日目―輝SIDE―

「……………。」
「……………。」
……………。
部屋の中に、キーボードを打つ音と、ゲームの効果音と、BGMが響く。
それ以外、何も響かない。
ゲーム。
それは本来、とても賑やかなもののはずだ。
去年と同じく、持ち込んだPCゲームと、テレビゲームを起動させてプレイしているのだが………。
限りなく、空しい。
僕は黙々とキーボードを叩き、耀は黙々とアクションゲームで遊ぶ。
「……………………。」
「……………………。」
僕のヘッドフォンからは、声優の声やBGMなどが響き続け、その外側から耀がプレイしているゲームの効果音やBGMも聞こえてくるのに。
空しい。
朝食を済ませた後は、ずっとこんな感じだ。
「兄様は何をしてるの?」
「ギャルゲー。」
「それを堂々と言うのもどうかと思うの。」
「………耀は?」
「スマブラなの。ボスバトルを攻略中なの。」
「ふうん………。」
会話が続かないという。
あー………。
僕たちって、いつもこんな感じだからなぁ………。
………あー!もう!
僕はパソコンをシャットダウンすると、コントローラーを持ってテレビの前に行き、Wiiに接続した。
「あれ?兄様?」
「ボスバトル、僕も混ぜるっす。」
「………うん!」

ゲキムズというのは、とんでもない難易度だ。
ボスの攻撃が、ほとんど一撃必殺に等しい。
まぁ、ゲーマーである僕と耀の腕なら、そこそこ楽しめる程度の難易度だ。
とか言いつつ、結局クリアするまでに昼食を挟んで三時間も要してしまったのはご愛嬌と言ったところか。
ボスバトルをクリアした後は、二人で対戦して遊んでいた。
CPUは無し、アイテムも封印、フィールドは戦場オンリーというガチ対戦だ。
実力はおおよそ五分と五分。勝っては負ける、いい勝負だった。
そしてその後。
夕食後、風呂を済ませた僕と耀は、散歩に出ていた。
夜の、川に。
……心配しなくても、入水しようとかしているわけではない。断じて。
というか、そんなことは絶対にしないけど。
耀がいるのに、自殺なんかしてられるかっていうのだ。
耀が死んだら、分からないけど…………。
いやいや、この話の流れは止めよう。
とにかく僕は、耀と一緒に、川辺を散歩していた。
美しい月下の川辺。
涼しい水音と、風の音。
そして、砂利を踏む二人分の足音。
「夜の川辺もいいね、兄様。」
「そうっすね。」
二人で、肩を並べて歩む。
静かだ。
朝の、空しい静寂とは全く別の、綺麗な静寂だ。
水と風の音に混じって、虫の声も聞こえてくる。
月の蒼い光が地面を照らし、水が光を反射する。
それが風に舞う紅い葉を照らし、幻想的な風景を創り出している。
「兄様。」
「なんすか?」
「好きです。」
「…………………。」
いきなりどうしたというのだ。
「突然どうしたんすか?」
振り返った耀は、月の光に照らされて、耀いていた。
「私にもよく分からないの。でも、これからはゆっくり出来なくなりそうだから。今言っておいたほうが言いと思ったの。」
「…………。」
「予感がするの。これから、組織は大きな戦いを連続で経験することになる気がするの。そして、きっと、組織は崩壊するの。それに巻き込まれて、私たちもきっと………。」
「……………。」
「だから、今、ここで言うの。兄様、好きです。」
耀の言っていることは、分からなくもない。
僕も、そんな予感がしているのだ。
夢にも見た。
大きな戦いを連続で経験し、組織が根本から揺らぐ。
そして、音を立てて崩れ行く。
そして、ゆりも、煌も、礼慈も、理子も、紫苑も、僕も。そして――耀も。
だから、耀の考えも、よく分かる。
「そうか。」
「そうかって………、反応が淡白すぎるの。」
「付き合うのか?兄妹で?」
「それは………。」
「分かってるさ。そういう問題じゃないんだろう?」
「うん………。」
それより兄様、口調変わってるの、と耀は言った。
「真面目に話してるんだからこれでいいんだよ。キャラなんか作ってて、真面目な話が出来るか。」
「うん………。そうだね。」
耀の口調もフラットになる。
「どの道僕とお前は一心同体、がっちりと組まれたペアリング。いつまでも一緒だよ。」
僕がそう言うと、耀は嬉しそうに微笑んだ。
「ずっと………一緒だよ。兄様。いつまでも、いつまでも、ね。」
「つか、このまま病まないで欲しいっすよ。耀、夜月タイプから金女タイプにずれ込むパターンっすから。」
「兄様が浮気なんかしたら、分からないの。」
二人で適当なことを言って、笑いあった。
そう、今の僕たちは、これでいい。
まだ、これでいいんだ。
まぁ、ゲームだったら月光の下、風に舞い散るのは桜の花びらって相場は決まっているのだが。
紅葉でも十分絵になるから、まぁいいか。

その後、僕と耀は夜遅く――日が変わるまで。
その間僕と耀がどんな会話をしたか、または何をしたかは、二人だけの秘密である。
語るつもりなんかない。

部屋に戻ると、kneg(これなんてエロゲ)?と言いたくなる様な三人が眠っていた。
こいつもこいつで勝ち組じゃね?
だって、自分のことをここまで好いてくれてる献身的な妹がいて、更に何があっても味方してくれるような純粋で強い絆で繋がっている親友の美少女を恋人に持ち。
しかも、それでドロドロしてないっつーんだから。
僕がこんな状態になったら、絶対に耀が病むだろうしなぁ………。
三人は、まるで寝付く直前まで喋っていたかのように、頭を寄せ合って眠っていた。
「この三人、本当に仲がいいの。」
「仲がいいってレベルじゃない気がするっすけどね。」
僕たちも、こうありたいものだ。

二日目―理子SIDE―

「……………。」
「……………。」
この野郎。
何で朝から寝てるんだよ。
っていうか、どうして別に部屋を取ってまで寝るかな………。
まぁ、朝食の後、部屋ではバカップル兄妹がゲームをしているわけだけどね。
つーか、どうしてわっちはこいつに付き合ってここに居るんだろうね?
そもそも、どうしてこいつはわっちがこの部屋にいるのにこんな安らかに眠っていられるんだろう?
余裕過ぎるだろ。
わっちの前で寝るなんて、狼の前で眠る羊みたいなものなのに。
普段からあれだけギリギリ(というかむしろアウト)な発言ばっかりしているのに。
「…………。」
襲ってやろうか?
まぁ無理だろうけど。
いくらわっちでも、女子である以上男子の礼慈には勝てないし。