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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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コスモスの咲く頃

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<コスモスの咲く頃>

 思いがけない人物からハガキが届いた。
 三十九才にもなって小汚いアパートで一人暮らしをしているオレにとって、年賀状とダイレクトメール以外で郵便が届いたのは実に数年振りの事だった。

 ハガキには山里の暮らしがようやく板についてきたので遊びに来ないかという事が書いてあった。
 アイツとは同期入社だったが特別に仲が良かった訳ではなく、むしろオレにとっては疎ましい存在だったと言えるかも知れない。
 しかし、人付き合いの良くないアイツにしてみれば会社で友人と言えばオレくらいしかいなかったのかもしれない……。

 ハガキの裏には信州の奥の方の地名が書いてあった。
 オレがアイツに会う気になったのは、仕事が思うように行かずクサクサしていたのと、信州の地名に惹かれたからだろうか。

 金曜の夕方の列車に乗った。
 新幹線を使っても今日中にアイツの家に着きはしない。
 始めから降りた駅の近くに安宿をとる積もりだったのだ。

 ローカル線の窓に額をつけて外を眺める。
 小さなビンの酒を二本空けたせいか、窓ガラスの冷たさが心地よかった。
 窓の外は真っ暗で景色など見えはしない。
 後ろ向きに腰掛けた座席からは黒い山影がゆっくりと小さくなってゆくのが分かるだけだった――。

 それほど大きくない会社なのだがオレには同期の新入社員が十数名いた。
 だからアイツとは研修などが有る度に良く顔を合わせたし、従業員IDが続き番号なのでペアを組まされる事も多かったのだ。