小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

Minimum Bout Act.02

INDEX|1ページ/28ページ|

次のページ
 

No.4「少年兵」




 
 ベニーランドの貧困街は、相も変わらず胡散臭い連中で溢れ返っていた。
 右を見ても左を見ても、陰気くさい顔をした男女が、しみったれた腐りかけの看板を掲げる店に出入りしては暗号のような会話を交わす。
 そこが一体何の店なのか、一見しただけでは分からないのだが、案外真っ当な商売をやっている連中が多いからこれがまた面白い。
 朝でも薄暗いこの路地を、シンは1人で歩いていた。数週間前に入った仕事が全て終わり、依頼人にターゲットを無事引き渡した帰りなのだが、喜んだ依頼人に酒を勧められたために朝になってしまった。
 こういう面倒な時に限ってカッツは先に帰っていて、シン1人で依頼人の相手をしなくてはいけなかったりする。
 カッツの野性的感はそういった方向にもよく働くようだ。
「よお、シン。朝帰りとは相変わらずお盛んなこって」
 顔なじみのカフェの店主に店先で声をかけられ、シンは苦笑する。
「違うよ、仕事帰りだ」
「はははっ、よく言うぜ。たらしのシン様がよぉ」
「あー、はいはい。コーヒー1杯な」
 オープンテラスと言えば聞こえは良いが、店内の面積が猫の額ほどしかないそのカフェは薄暗い路地にはみ出してテーブルを置かねばならない。おかげで自然と外に座る形になる。これを店主は無理矢理オープンテラスと呼んでいる。
 シンはそのオープンテラスに無造作に置かれた椅子に腰掛け、店主のブルースが煎れる安物のコーヒーの香りを嗅ぎながら空を見上げた。
 実はこのブルースが先ほど言った『たらし』という単語は隠語になっていて、MBとの仲介役をしているブルースが依頼の情報を伝えたい時に使う。
 ちなみにカッツやルーズが相手の場合、この隠語は変わる。カッツの時は『いい女いるぜ』で、ルーズの時は『いい酒入ったぜ』だ。ブルースが相手に合わせて皮肉を隠語にしているらしい。
「ふう。相変わらずここはジメジメしてるな……」
「そりゃあ仕方ないさ。ここはベニーランドだ。俺達みたいな人間が必死こいて生活したところで、上に行くには知恵も度胸も無さ過ぎらあ」
 独り言を呟いたつもりがブルースに聞こえていたらしく、返事が聞こえてきた。
作品名:Minimum Bout Act.02 作家名:迫タイラ