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てっしゅう
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神のいたずら 第六章 新しい恋

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第六章 新しい恋


河口湖での二日目を迎えた。一番最後に起きてきた碧はシャワーを浴びてバスタオル姿でダイニングにやってきた。

「碧、着替えてから来なさい。髪も濡れているじゃないの」由紀恵は注意した。
「だって・・・暑いもん。家族だし気にならないよ」
「女性として恥ずかしい事をしているんだよ。それぐらいはもう解りなさい」
「ママ、いいんだよ。碧はまだ女じゃないから・・・」弥生が笑いながら言う。
「お姉ちゃん!また意地悪言う・・・」
「弥生、それは言い過ぎよ」
「はいはい・・・悪うございました。もう直ぐ女の予定でしたね」
「謝ってないじゃないの、そんな言い方して・・・もう、兄弟仲良くしてよ・・・」

二階に上がってTシャツを羽織ってから、テーブルに碧は座った。
「今日はどうしよう?帰りにどこか寄りたいところがあったらそこに行こうか」
秀之がみんなに聞いた。

「富士急に行ってから帰ろうよ」碧はそういった。
「それがいいわね」弥生もそう頷く。
「じゃあ決まりだ。混んでいるかも知れないから早めに出て向かおう。食べたら荷物まとめるんだよ」
「うん、解った」そう返事をして、碧も弥生も二階の部屋に行って自分達の荷物をまとめた。

「ねえねえ、お姉ちゃん・・・碧ね昨日の夜に下で一人でジュース飲んでいたら、ママがバスタオル姿で部屋から出てきたの。シャワー浴びたいからって言ってたけど・・・変よね?」
「大人の事情よ・・・ハハハ・・・」
「それ!私が言った台詞よ、もう・・・ごまかして」

4人が向かった富士急ハイランドはすでに駐車場に入る車で列をなしていた。やっと入れたが、ジェットコースターには長い列が出来ていた。

「碧、弥生、パパとママは乗らないから他に行くね。終わったら連絡して・・・」
「えっ?乗らないの・・・」
「いいのよ碧、きっと怖いのよ」
「ママ!怖いの?」
「パパが嫌だって言うから、ママも遠慮しておくのよ」
「なんだか怪しいよ、それ・・・」

確かに子供達の言うとおり乗りたくなかったのは事実だ。長い列に並ぶのも嫌だったもう一つの理由だ。
碧は弥生と一緒に100人ぐらいの列に並んでいた。家族連れや若いカップルが目立つ。後ろに並んでいた高校生ぐらいの男子が話しかけてきた。

「ねえ?どこから来たの?」
「東京」碧は答えた。
「兄弟?」
「うん、そうだよ」
「何年生?」
「私は中一、お姉ちゃんは高三だよ」
弥生は喋らずに黙っていた。何よ話しかけてきて・・・と言う感じでいた。
「中一なの?小学生かと思った・・・俺は高一だよ、貴志って言うんだ。こいつは同級生の真人。名前教えて」
「碧、お姉ちゃんは弥生。お兄ちゃんはどこから来たの?」
「お兄ちゃんか・・・ハハハ、そうだな。東京だよ、一緒だな。誰と来たの?お父さんとお母さん?」
「そうだよ。お兄ちゃんたちは?」
「友達5人とバスで来た」
「みんな男の子同士で来たの?」
「違うよ。女子もいるよ。みんな同じクラスなんだ。ねえねえ、これ乗ったことあるの?」
「もちろんあるよ。初めてなの?」
「そうなんだよ・・・ここから見ていると結構急だから、怖いって言って三人は並ばなかったんだよ」
「じゃあ、パパやママと一緒だ。怖がりなんだよね」
「そうなんだ・・・碧ちゃんは良く話してくれるね・・・初めてなのに。まだ少しいるんだったら、この後も一緒に遊ばない?」
「お姉ちゃんがいるから・・・ゴメンなさい」
「そうか・・・そうだな」

順番が回ってきた。碧と弥生、後ろに貴志と真人が座った。ゆっくりとコースターは上り始めた。

まっ逆さまに落ちる感覚にキャーキャー声がする。碧も弥生もバーにしがみつきながらキャーキャー言っていた。コースターが戻ってきたときには腕が痛くなるほど力が入っていた。

「面白かったね、お姉ちゃん」
「うん、スリル満点だったよ。久しぶりに騒いだわ」
貴志が近寄ってきて、
「碧ちゃん、のど渇いたんじゃない?コーラでも奢るからおいでよ」
「ママに怒られるよ・・・知らない人に着いて行ったら」
「あれ?そう来たか・・・じゃあここで待ってろよ。買ってきてあげるから。それならいいだろう?」
弥生が丁寧に断りを入れた。
「すいません・・・ご親切はありがたいけど、自分で買いますから」
「気にしなくていいんだよ。さっき並んでいる時に話相手になってくれたから、お礼だよ。待ってて・・・」

走ってフードコートに行きコーラを二つ碧と弥生のために買って戻ってきた。
「はい、お待たせ・・・いいから飲んで、お姉さんも」
「お兄ちゃん、ありがとう。お姉ちゃん飲んでも構わない?」
「仕方ないわね・・・ありがとうございます」ちょっと頭を下げた。
「お兄ちゃんじゃなく、貴志って呼んでくれよ・・・碧ちゃんとまた会えるかも知れないしね」
「うん、貴志さん・・・」

この時はそれでもう二度と会わないと思っていたが、しばらくして二人は東京で再会する。

「ママ!終わったよ。とっても楽しかった。ねえお姉ちゃん?」
「そうね・・・久しぶりに乗ったわ。前に来たときは碧が小さくて乗れなかったものね・・・さっきは乗った事があるって言ったけど・・・ウソよね?あれは」
「誰にそういったの?碧・・・」
「高校生の男子が話しかけてきたの・・・その時に言った」

そうか、昔来たときは乗らなかったんだ・・・隼人としての経験で、つい言ってしまった。ちょっとこれから気をつけないといけないと思った。

帰りの高速道路では気分が悪くならなかった。首都高速に入る手前で少し渋滞したが日が暮れる前に家に戻ってこれた。家族の絆がしっかりとなった二日間の旅行であった。由紀恵は碧に恥ずかしいところを見られたが、夫と仲良く出来ていることが嬉しかった。この年齢ぐらいから夫婦は離れてゆくと友達に聞かされていたから、そうなっていない自分達が嬉しいのである。

これも考えたらあの事故があったからかも知れない。今は助かった命と夫に感謝しなければと思えるのだ。

夏休みも終わり二学期が始まった。始業式の日、達也は真っ黒に日焼けした顔になっていた。
「黒くなったね・・・泳ぎに行ったの?」
「うん、家族で沖縄に行ったんだよ。碧はどこかに行ったの?」
「河口湖に行った。富士急にも行ったよ」
「楽しかった?」
「楽しかったよ」
「後で少し話したいから・・・裏の公園に来て、終わったら」
「いいけど・・・何?」
「その時話すよ」

達也が待っている公園に碧は行った。ベンチに座って碧を見つけると手を振ってきた。
「待った?」
「いや・・・さっき来たところ」
「何?話って・・・」
「うん、言い難いんだけど・・・二学期から塾に通うんだよ。土曜日や日曜日も試験とかがあったりして、今までみたいに逢えないから、その事言っておきたくて・・・」
「それは、聞いているよ。達也君の時間が空いた時に逢えればいいから・・・気にしないで」
「それでいいの?ずっと逢えないかも知れないけど・・・」
「何で?私が嫌になるとでも思ったの?」
「そうじゃないけど・・・誘ってくれても無理だからって言いたかっただけ」
「言わなくてもいいのに・・・そんなことまで。達也君が勉強を優先するんだから仕方ないじゃん」