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音楽レビュー

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graham coxon『The Golden D』


 このアルバムに顕著なのは、音楽が言葉に勢いを与えている点である。それだけでなく、言葉も音楽に意味を与えたり、音楽が様々なものと結びついて行くのを言葉が助けたりしている。言葉が淡々と対象を指示し、音楽がそれに雰囲気を与える、そんな単純なモデルでは捉えつくせない音楽と言葉とアーティストと対象の複雑な結合を生み出しているのである。
 「JAMIE THOMAS」では、単純にジェイミーをほめたたえているだけである。だがそこに執拗な音楽が付加されることで、JAMIEという言葉がジェイミーを指示するという静的な関係だけではなく、むしろJAMIEという言葉がジェイミーに勢いよく向かって行く、そんな関係が出現するのだ。それだけではない。JAMIEという言葉はコクソンの内面から強く押し出されたものでもあるし、聴く者の心を動かそうとするものでもある。執拗な音楽を言葉に添えることで、言葉は対象や表現者・受容者へと勢いを持って結合していくようになるのである。
 「MY IDEA OF HELL」では、「This is my idea of hell」が繰り返される。これは、ここで鳴らされる音楽を地獄のイメージと結合する役割を果している。音楽は指示機能を持たないただの雰囲気ではなくなる。明確に対象を指示し、しかもその指示には運動が与えられる。「OOCHY wOOCHY」では、かわいい、たまんない、そういう言葉がジャズのメロディに乗って繰り返される。これは単に諸事から切り離されたものではなく、逆にいろんなものと結びつけられていくものだと思う。言葉が音楽の力を借りて、コクソンの感慨を指示すると同時に、コクソンにそのような感慨を与えたものを漠然と指示する。
 このようにこのアルバムは、雰囲気としての音楽と単なる指示としての言葉、という次元を超えている。音楽も言葉もアーティストも対象も複雑に結び付けられ、しかもその結びつきは動的なものである。歌詞の内容は自己否定が多いが、この自己否定はコクソンの勤勉さの裏返しではないだろうか。勤勉であるがゆえに挫折に敏感であり、それゆえ焦慮に導かれて沢山音楽を生産する。しかもただの音楽ではなく、色んなものを動的に結び付ける有機的な音楽である。言葉の裏側にある勤勉さがこのような生産的な音楽を作り出しているのだ。

作品名:音楽レビュー 作家名:Beamte