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音楽レビュー

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JAMIE CULLUM『CATCHING TALES』


 ジャズは何らかのメッセージを発する音楽でもないし、ただ人々の気持ちを明るくするだけの音楽でもないし、人々に共有されている大衆的な価値観を再確認する音楽でもない。それは、ただ余剰にあるものであり、装飾に満ちたものであり、深刻さや実直さを求めようとはしないのである。JAMIE CULLUMの音楽を聴いていて感じるのは、そこで作り出されているものがメッセージでも元気でもなく、生活をわずかに彩る雰囲気のようなものだということである。
 まず、音楽は微妙に正道からずれ、そこに多様な逸脱を作り出す。歌詞はと言えば、愛やら孤独やら生臭いものではなく、単なる日常的なおしゃべりのようなものである。この日常的なおしゃべりこそが、常識的な安心感と連帯を生み出すのであって、そして音楽による少ししゃれた雰囲気がそのおしゃべりを包み込む。この場を支配しているのは共感の原理である。多分彼は人と話すのがとても得意だ。それは何よりも聴き上手だということだし、親しい雰囲気を維持する力があるということだ。
 このような、日常性をわずかに快楽で彩る音楽は、深刻になっている人や忙しすぎる人を癒すことができる。自らの深みにはまっていた人を日常の浅さに取戻し、また自らを失っている人を日常の共感の連帯の中に取り戻す。彼の音楽は疎外から人を救う優しさに満ちたものであり、気散じという音楽の基礎的な機能を最大限活用しているものである。

作品名:音楽レビュー 作家名:Beamte