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音楽レビュー

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友部正人『大阪へやって来た』


 友部正人の音楽から感じるのは、何よりもそのコミュニケーションへの欲求である。彼の言葉は十分詩的ではあるが、「詩的」ではあっても「私的」なものの枠には収まりきらない。彼の詩が独白のような様相を呈しながら、その実は呼びかけがメインであるように、彼の言葉は「私的」であることからあふれ出る十分な余剰を持っている。その余剰こそが、「私」ではなく「私たち」を作り出そうとする欲求なのである。
 私的独白の枠を超え、相手に呼びかけ、相手と話し合い、そこに物語を共有する共同体を作り出すということ。そのような、音楽を通じた人と人とのつながりを生み出すところにまで彼の意図は及んでいるように思われる。だから、彼が単純に詩を書いたのではなく、そこに音楽を載せたのは、なによりもその言葉のコミュニケーション能力を高めるためだったと思われる。コミュニケーションは言語のみでなされるものではないことは周知のことだが、非言語のコミュニケーションの媒体として、言語と併存しうるものとして彼は音楽を利用したのである。
 だから、音楽は、彼の言葉をより伝達しやすくするものであると同時に、彼の言葉に触れたものと彼自身との連帯の感情を強めるものでもある。言葉だけでは、人に何かを伝え、人と何かを共有し、人と純粋なつながりを持つのには足りない。言葉を超えた、言葉以上のコミュニケーションと連帯を生み出すために、彼には音楽が必要だったのだ。

作品名:音楽レビュー 作家名:Beamte