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表と裏の狭間には 十七話―二度目の夏―

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あたしの人脈で、国家権力を好き勝手に介入させられるとはいえ。まさか、たったの三日で事態を解決できるとは思っていなかった。
どんな手段を使ったのか、気になったので聞いてみた。
だけど、紫苑は答えてくれなかったのだ。
頑なに喋ろうとしない。
何があったのか、何をしたのか。
一向に喋ろうとしないのだ。
雫ちゃんも、頑なに喋らない。
まぁ、殺してないということは、きちんと明言しているが。
殺してたら流石にこっちに連絡来るだろうしねぇ。
そして、三日で事態を解決したという連絡を受け。
あたしは、今年の旅行を企画した。
蓮華に対するサプライズとして。
だが、そこで問題が二つほど起こったのだ。
一つは、蓮華の体調の悪化。
重度の風邪だった。
恐らく、ここ数日のストレスの影響で、免疫力が低下していたのだろう。
二つ目は、この台風だ。
恐るべき勢力を持つ、台風十号が来襲したのだ。
これのせいで、紫苑と雫ちゃんは向こうに足止めを食っている。
今、蓮華が一番会いたいであろう紫苑は、帰って来れないのだ。
だから、あたしができる限りのことをするのだ。
家族だしね。

あたしが全てを失ったのは、まだ小学生だった時だ。
それも、小学校低学年の時。
あたしの両親は、ある暴力団の組員だった。
いや。
そこの組長と、その補佐だった。
これだけで、随分私に対する印象が変わったのではないだろうか。
無理もない。
今、暴力団と抗争を繰り広げている組織の幹部で、仲間からの信頼も厚いあたしが、実は暴力団の組長の娘だったなんて。
だけど、違うのだ。
言いたい事は分かる。
『暴力団の幹部の娘なんて、犯罪者予備軍に決まっている』と思っているのだろう。
でもね、違うのよ。
あたしの両親は、確かに暴力団ではあったし、確かに犯罪行為をしていたけれど。
彼らは、自分のルールを厳しく守っていた。
人を殺さない。
薬を売らない。
娘の前では、その手の話をしない。
この三つだけは、厳格に守っていた。
端的に言って、あたしの両親は、最高の両親だったのだ。
優しくて、厳しくて。
悪いことをしたら、きちんと叱ってくれた。
良いことをしたら、きちんと褒めてくれた。
それは、暴力団としての観点からではなく。
きちんとした、警察が推奨するような一般的な観点からで。
そして、いつもあたしに、謝っていた。
俺たちが悪い奴でごめん。
おまえにいつも駄目だって言っていることを私たちがしてごめん。
でもおまえにはこっちに来ないで欲しいから。
私たちはおまえまで巻き込みたくないから。
だからごめん。おまえと同じところにいれなくてごめん。
でもせめて、おまえと一緒にいるから。
そう言って、いつも謝っていた。
そして、あたしを『正しい』方向へ導いてくれていた。

そして、ある日、両親は突然死んだ。
否、殺された。
誰に。
あの忌まわしき、聖邪鬼組――いや、霧崎組の長、霧崎平志にだ。

霧崎は当時のアークによって追い詰められたのだが、寸でのところで警察に駆け込まれたらしい。
これは、あたしがアークに入ってから知ったことだが。
当時のアークによって追い詰められた霧崎は、警察に駆け込むしかなかったようだ。
あたしとしては、当時あいつをそこまで追い詰めた指揮官と会ってみたいのだが。
霧崎を追い詰めるのが難しいのは、あたしが生まれる前から証明されている。
過去、警察――それも公安の暗部に2735回追われて、その全てを無傷で乗り切っている。
アークの記録によれば、だが。
だが、アークの記録に載っているだけでだ。
公安零課に関する情報は、アークでも掴みきれない。
つまり、記録に載ってない分も含めると、記録の倍くらいは逃げ延びているはずだ。
しかも、警察に捕まったときも殺人罪だけで済んでいるのだった。
余罪は無限大にあるはずなのに。
つまり、そこまでの技術と、力と、パイプを持っているのである。
だから、今あたしは、周到に計画を練っているのだが………。
正直、どこまで通用するのか分からない。
でも、殺す。
あたしは、霧崎を殺す。
復讐のために。
あたしの全てを奪っていった、あいつを。

両親が死んだ後、あたしの生活は一変した。
親戚連中は誰もがあたしを引き取ろうとせず、放置していた。
あたしは、役所の児童課の人間の手引きで、あちこちの施設を回っていた。
どこも、あたしを引き取ろうとはしなかった。
当然だ。
あたしは、『暴力団組長の娘』なのだから。
既にどこも満員で、赤字もちらほら覗く施設の現状。
そして、このあたしの生い立ち。
二つの要素が絡まりあって、あたしはどこの施設にも引き取られなかった。
児童課の職員の対応も冷たかった。
多分、普通の孤児に対する態度よりもずっと。
どうして自分がこんな汚い人間の世話をやかなくちゃならないんだ。
そう言いたいのが丸分かりだった。

あたしを引き取ってくれたのは、当時のアークの重鎮であった、現警視総監の野々宮さんだった。
そして、その繋がりでアークに入隊したのだ。
その後、中学生になったあたしは独立し、そして、皆と出会ったのだ。

家族って、なんなんだろう。
あたしが過去を回想するのも、こんなことを考えるのも、蓮華の一件があったからだろう。
幸い事なきを得たものの、どうしても考えずにはいられない。
家族って、なんなのだろう。
血縁関係?
否。
養子に血縁関係はない。婚姻したって血縁関係はない。
だとすれば、民法で定められた関係か?
それも否だ。
虐待を受けている子供なんて五万といる。
そんなのは、家族なんていえないだろう。
だとすれば、なんだろう。
あたしは………。
詳しい事は、自分でも分からないけど。
家族は、家族だと思う。
本当に、何を言っているのか分かってもらえないかもしれないけど。
あたしは、あたしの家に住んでいる全員を、家族だと思っている。
これこそが、両親を除いた、あたしの家族だ。
だから、あたしは、この場所を、皆を。
どんな手を使ってでも、守り抜く。
あたしが今までうだうだと語っていたのは、これが言いたかったからなのかもしれない。

台所に立つ。
あたしが腕を振るうことになった。
まぁ、雫ちゃんや蓮華には及ばないまでも、あたしもそこそこの料理の腕はある。
風邪の蓮華に食わせる粥くらいは作れる。
土鍋を用意。
この家の料理器具は、大抵のものは揃ってる。
そして、磨いだ米をと水を入れて、火にかける。
その間に、野菜を刻む。
そして、ひき肉を出しておく。
水が煮詰まったあたりで、刻んだ野菜とひき肉を入れる。
ひき肉は豚だ。
米と一緒に煮込んで、出汁をとるとともに、素材ベースで味付けをするのだ。
煮込まれて野菜から滲み出た栄養素が、米が炊かれる過程で米にも吸収される。
あとは米を炊くだけなので、吹き零れないように火加減をチェックする。
この作業が、かなり大変なのだ。
そうこうして、米が炊き上がり、お粥の完成だ。
塩で軽く味を調えてから、器に盛る。
種を抜いた梅干を乗せて、完成だ。
それを蓮華の部屋まで運ぶ。
「蓮華?入るわよ。」
一応声をかけてから、扉を開ける
蓮華は、さっきまで寝込んでいたのだろう、腕をついて半分だけ上体を上げていた。