小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

住めば都 ~整形外科病棟~

INDEX|9ページ/37ページ|

次のページ前のページ
 

2、麻酔医



手術前日の夜。麻酔科医のA先生がベッドサイドに来てくれた。手術時の麻酔の説明をするためだ。

すでに2週間前に手術を済ませた隣のベッドの田崎さんが昼間にこんなことを教えてくれていた。
「あのね。ここの麻酔の先生、面白いんだよ。とっても真面目に話をしてくれているんだけど、なんか滑稽なの。言い方やしぐさがね。楽しみにしていてごらん」

その麻酔の先生が言った。
「宮村さん、手術は明日ですね。麻酔は全身麻酔をして行います。あっという間に終わりますから全然心配はありませんよ。手術の時間は、午前の手術の関係で多少早くなったり遅くなったりします。予定は1時からになっていますから、お水は朝の8時までは飲んでも構いませんよ」
「え〜!! ホントですか? 良かった。今日の10時が最後でなくていいんですね」
私は明日の朝8時までお水は大丈夫と聞いてホッとした。食べるのも飲むのも「ダメだ」と言われれば、もっと欲しくなるタイプの私は、毎年、人間ドックを受ける前の絶飲・絶食がく苦しくて苦しくて、バリウムを飲むのも嫌だけど、この絶食がとっても嫌で、検査が億劫になる原因にもなっているのだった。

「何か心配なことはありますか」
「あのう、ここに来るまでペインクリニックでずっと注射をしていたのですが……」
ペインの注射の痛かったことを思い出しながら聞いた。
「ペインの注射とは全然違いますから、大丈夫です。ペインは腰にしていたでしょう」
と言いながら、A先生は腰をクイッと捻り、腕を大きく振って腰に注射をさす真似をする。

「あのう、24年前に帝王切開をしたんですが、麻酔から覚めるときがとっても苦しかったんです。今回もそんな風になったら嫌だなあと思ってるんです。話し声も聞こえていたし……」
「それは、全身麻酔と違いますよ。注射はここにしたでしょう」
とまたさっきの腰をクイッと捻るポーズをとる。そしてまた大仰に腰に注射を刺す真似をする。その格好が可笑しいのなんのて……。

いけない! 昼間、隣ベッドの田崎さんが言っていたことを思い出してしまった。
真面目な顔で真面目にお話をしてくれているのだが、お尻を捻って腰に注射をする格好が面白くって面白くって、下を向いて、奥歯をかみ締め、必至で笑いをこらえていた。ごめんなさいA先生。