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ミタライハルカ
ミタライハルカ
novelistID. 31780
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真夏の雪

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はっぴ姿で辺りの騒ぎを無視して地面に座って下を向いてなんか作ってる。
よく見ると火薬を持っていた。

「え!?ちょ・・・マジ?そんなとこで何やってんのよあんた!」と思わず叫んでしまう。

と同時にチャリを停め瞬時に右手に持ったきな粉の投擲体制に入る。

「爆弾はまずいでしょ爆弾は!霊がテロとか一体どんだけなのよ!」と内心大焦り。

「ああ!?花火作ってんだよ?お前こそ何投げようとしてんだよ、あぶねえな!」

と、さらに訳の分からない事を言い放ち立ち上がってこっちを見た顔はなんとリョウ君だった。

まず、この姿を見られたことにパニック!
その次に彼のはっぴ姿にもパニック!
最後に火薬を見てまたパニック!

一瞬で知的で温和な彼のイメージが・・・音を立てて崩れた。

「・・・何やってんの?リョウ君」

混乱のあまり思わず同じ事を聞いてしまう。
しかも、今度は名前付き。相手は霊だとわかってるのに・・・。

投擲体制に入っていた右手の力が抜け自然とダランと垂れ下がり指の間からきな粉が地面にこぼれ落ちる。

「お前もしかしてこいつの知り合い?」

片手に爆弾・・・いや彼の言う事を信じるならば花火を持ちながらしげしげと自分の体を見つめるリョウ君。

「あ、うん、まあね・・・ただの同級生だよ」

動揺を必死に隠しながら通常を装う私。

「へぇ~そうなんだ」

あっさり納得された。ちょっと拍子抜け。
そこへ恐る恐る疑問をぶつける私。

「で、さ・・・なんでここで花火作ってんの?」

「いやぁ~・・・まあ、心のこりっつーの?俺、死ぬ前花火職人だったのよ」

「ふ~ん」

「んで、俺が初めてつくった花火をこうドカーン!と打ち上げようとした時にさなんでかしんねーけど暴発しちゃって・・・それにまきこまれて死んじゃってさ」

「・・・」

何も答えられない私。
彼はそのまま話を続ける。

「まあ、俺は最高の仕事をしたと思ってるし、ミスもなかったはずなんだ・・・そんなのさ・・・やりきれねーじゃんか」

「で、もういっぺん花火を打ち上げようとしてんのね・・・」

「まあ、そういうことだな」

悲しい話だ。
同情もしたくなる。

だけど暴発って!!!あぶねーやっぱあぶねー!!!!!

「で、あんたはなにやってんだ?そんなかっこうして・・・・手に持ってんのきな粉だろ?それ」

霊相手に隠し事をしてもしょうがないし今はリョウ君じゃないからまあ良いかと思い事情を話す。

茶化されるかと思ったが意外にも彼は真剣に聞いてくれた。

「そっか~・・・あんたも大変だな」

・・・霊に同情された。

でも、不思議と不愉快じゃなかった。
それどころか今まで誰にもこんな話できなかったから逆に胸のつかえが取れた気がした。

「俺あんたに協力したい」

突然、彼は真剣なまなざしで私を見つめそういった。
顔はリョウ君そのもの。ただ何故か眼鏡はかけて無い。
それだけに視線が直接私に届き思わずドギマギしてしまう。

「ええ!?でもさ、あんた除霊されちゃうんだよ???いいの?????」

パニックになりながらも聞き返す。

「それにどう協力するのよ?」

「俺の花火にあんたのきな粉を乗っけて打ち上げりゃ良いんだよ」

「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~?????????????????」

言ってる事が滅茶苦茶過ぎる。

「駄目だこの人。やっぱ駄目だ。さっさときな粉かけときゃ良かった・・・」

そんな事を小声で呟きつつその場にしゃがみこみ頭を左右に振り激しく後悔する私。

「でもさ、さっき聞いた話だとそのきな粉って燃えたりしないんだろ?」

「・・・うん、まぁ作る時に霊力がこもるらしいから燃えたりとかはしないらしいんだけど・・・でも試したことないし・・・」

私が悩んでる間に続けて彼は言う。

「だったら空までいって花火が破裂すれば町中にきな粉が降りかかって一気に除霊終了!どうだ!!!」

んん?意外と使える?いや、それしかない!!!
そうすればリョウ君と学校で本の話も出来るし最悪のお盆も今日だけで済む。

「そのアイディアのった!」

自分でもどうかしてると思うけどこの時は何だか彼を信じられた。
彼はそんな輝くような目をしてた。

「よし!じゃ準備開始だ!!!」

そう言って彼は親指をビッと立てた。
どうやら癖のようだ・・・ダサダサだけど。

早速二人で商店街のお店から勝手に材料を拝借する。
そしてある程度材料がそろうと今度は場所探し。

「しっかしここら辺じゃ騒がしくて物つくりにゃてきさねーよな・・・どこか良い場所ねーか?」

「そうだね・・・う~ん」

しばらく考えて思いつく。

「学校!あそこだったら色々そろってるし人もいないから静かだよ」

私の提案に即答する彼。

「よし!じゃ決まり!!早速行こうぜ!!!」

停めておいた自転車の所まで戻りありったけの材料をかごに詰め込み

「道案内は頼む!チャリは俺がこぐから後ろに乗りな!!!」

ちょっと戸惑いながらも自転車の後ろに乗る。

「しっかり掴まってろよ!」

途端に猛スピードで走り出す私のママチャリ。
思わず彼にしがみついてしまう。
何だか少し嬉しかった。

私がナビを勤めお祭り状態の街中を人をギリギリでよけながらチャリは駆け抜け学校に辿り着いた。

校門の前に自転車停めて集合時間を決め彼を理科室まで案内し私は調理室へ向かう。

そして数十分後。ありったけのきな粉をリュックに詰めて理科室へ行く。

「お待たせ!」

と言うと彼は「おう!こっちも今出来上がったばかりだ!!出来たてたぜぇ!!!」と答える。

見ると理科室の机の上にはいくつもの花火が綺麗に並べられていた。

「へぇ~!これが花火なんだ・・・ちゃんと見るの始めて」

驚く私を満足そうな目で見る彼。
思い出したように私は彼にビニール袋に小分けした大量の手作りきな粉を手渡す。

「よし!あとはこいつを玉の中に詰めるだけだな」

「うん!」

「これは俺にしかできねー作業だから、あんたは休んでてくれよ」

走り回ったり大忙しできな粉作ったりしてた私は正直ヘトヘトだった。

「・・・ありがと」そういい終える前にへたり込んでしまう。

少し落着いてくると今までは忙しすぎて意識もしなかったけど静かな理科室でリョウ君(の顔をした彼)と二人きり・・・変なはっぴ姿だけど。

彼は見事な手つきできな粉玉を作っていく。
そんな彼の姿は本当に職人って感じで思わず見蕩れてしまった。

しばらくそうしていると突然彼が両手の拳を天に向かって突き上げ「できた~!」と叫んだ。

その大声にビックリして立ち上がる。

「急に大声出さないでよ・・・」

そういいながら机の上を見ると完成したきな粉玉がずらりと並んでいた。
本物は見たこと無いけど思わず「・・・凄い!」と言っていた。

「だろ!」

満足そうな顔でこっちを見る彼。

「そうだ、これ今のうちにわたしとく!」

そう言うと彼はリョウ君のメガネを差し出してきた。

「あんたからこいつに返してやってくれ」

彼は自分自身を指差しながらそういった。
戸惑いつつも受取る私。
作品名:真夏の雪 作家名:ミタライハルカ