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ミタライハルカ
ミタライハルカ
novelistID. 31780
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真夏の雪

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「う~ん・・・きな粉きな粉・・・明日までに・・・もういや~~~~~~~~~~~~!!!!」

いつの間にか眠っていたらしき私は咆哮と共に立ち上がる。

皆の視線を一斉に浴びようやく今が図書委員会の会議中だということに気づき

「・・・すいません」

と下を向きながら謝る。

そして、静かに着席。
恥ずかしすぎる。

何事もなかったかのように再開される図書委員会の会議。

隣に座っているリョウ君が心配そうに小声で話しかけてきた。

「はつかさん、大丈夫?大分うなされていたみたいだけれど・・・なんかあったの?」

「う、うん・・・だだだいじょうぶ・・・も、もう平気だから・・・何もないよ平気平気!!!」

と、猛烈にどもりながら答える。

「そう、ならいいけど・・・何か疲れてるみたいだけど無理しないでね」

「・・・ありがとう」

しかし、夢にまで見るなんて・・・最悪。
けど、本当にリョウ君にばれなくて良かった。
もし追求されたらうっかり白状してしまいそうだった。

私の使命を。

リョウ君とはクラスは違うが図書委員になって彼を知りお互い本の趣味も合う事もあって本の貸し借りをする仲になりいつの間にか彼のことを意識するようになった。

良くある展開だと自分でも思うが好きな気持ちはとめられない。

しかし、私は恋愛にかまけてる暇は無い。今の所。
期間限定だけどこの町を守らなければならないのだ。
そんな憂鬱な季節が今年もやってきた。

それはお盆。

一年に一回霊たちが還ってくる日。
そして人にのり移りいたずらの限りを尽くす日。
私の世界が滅茶苦茶にかき乱される日。

・・・ホント天国でおとなしくしてくれれば良いのにと思う。

死んだのだからいい加減それくらい悟って欲しい。

「皆が霊を迎える事をすっかり忘れちまったからなのかねぇ・・・」

去年なくなったおばあちゃんはそういってたけど反抗期の子供じゃあるまいしそんな幼稚な理由で人に迷惑をかけるのはやめて・・・頼むから。いや、ホント。マジで!

図書委員会の会議が長引きつかれてる所に加えて家ではとある作業が待っている。

その為リョウくんと本の話をする間もなくダッシュで帰宅してきた。
その不満と連日の疲れが私をイライラさせる。

「毎年毎年・・・こっちのみにもなって欲しいっての!」

憂鬱な気分できな粉を作りながら私は呟く。
段々ときな粉を作る手つきが乱暴になる。

ついに手が止まり、動きも止まり、頭を抱え、しばらくして・・・

「あ~~~~~~~~~~~~~~!!!もうやだめんどくさい!!!!!やめる」

そういってきな粉を放り投げようとした瞬間携帯が鳴った。

この着信音は!!!

投擲体勢に入っていたきな粉をソッとテーブルに置き今までとは打って変わったようなかわいらしい手つきで携帯をチェックする。

「はつかさん、明日こないだ借りた本もって行きます。すごく面白かったよ。感想は明日学校で。」

簡素な文章がリョウ君らしい、と思った。

しかし、明日はお盆・・・年に一度の大仕事の日。
当然彼にも会うことは出来ないだろう。

いや、会えたとしても本の感想など言って貰える訳が無いこっちが一方的にきな粉をぶっ掛けるだけだ。

途端に憂鬱になるがメールの返信は忘れない。

「気に入ってもらえてよかった。感想楽しみにしてる。じゃあ学校で!」

こちらの気持ちを気取られないように相手に合わせた簡素な文章を打ちちょい時間を置いてから返信。

ホントはもっと絵文字とか使って女の子らしい文面にしたいのだけどお盆がその邪魔をする。

「どうして、私が、霊を???」

私は自分の除霊体質を呪った。

うちは代々霊を払ってきた。
その血筋のせいでお盆は大忙し。
それなのに人に愚痴る事も出来ない。

お母さんは去年やっとその使命が私に移ったので肩の荷が下りたようだが以前は私同様お盆の度に愚痴ってた。

「どうして私がナスを?・・・毎年育てて・・・毎年ぶつけて・・・もういや~~~!!!」

愚痴と言うよりは若干ヒステリー気味だったかもしれない。
そのせいでよく私や弟はナスの標的にされた。

「練習よ練習♪」というにこやかな言葉とは裏腹に母の声には確実に怨念がこもっていた。

その証拠にお盆が終わると「この恨みはらさでおくべきか!」といわんばかりに数週間なす料理ばかりが食卓に並び家族一同ゲンナリしたものだ。

ちなみに除霊に使用される物は人によって違う上にルールもある。

第一に手作りでなくてはならない(除礼する力がその物に乗り移るようだ)。
第二にお盆に関係したものであること(霊が喜ぶから?)。
第三に除霊の際巫女服を着用する事(これはまあ雰囲気を出すためだと思う・・・多分)。

私の場合はきな粉(軽い物で助かった・・・母には滅茶苦茶嫉妬されたが)。
お盆に食べるおはぎに使われている黄色いあれ。

「こりゃ徹夜かなぁ・・・」

そんなことをボンヤリ考えつつひたすらきな粉を作ってたら寝てしまった。
連日のきな粉作りに加え図書委員会の会議で疲れたと言い訳しておこう。

・・・とりあえず。

で、目覚めたらお盆。

寝ぼけ眼で辺りを見回すとうちの家族もスッカリ霊にとりつかれ母はワンワン泣いてるわ(失恋女性の霊だ)父は汗だくになって腕立て伏せをもう千回ほどしてるわ(ボディビルダーの霊だ)弟はエアギターしながらシャウトしてるわ(売れないロッカーの霊だ)で家中大騒ぎ。

「写真とっとくか・・・」

ポケットから携帯を取り出し彼らの痴態を激写する。
特に母は念入りに。ナスの仕返しだ。

「とりあえず、まずこいつらから黙らせないと・・・ふぁ~」

とあくびをしながら作りおきのきな粉を彼らに向けて適当にぶっ掛ける。

すると今までとりつかれていたのがうそだったかのように皆その場に倒れ意識を失う。
そしてその体から湯気のような物が出てくる。
これが多分霊なのだと思う。

去年初めてみたときはびっくりしたけどもうなれたもので天に昇っていく彼らに向かって一応手を合わせる。

ちなみに霊に取り付かれないのは使命を持った私だけ。勿論滅茶苦茶孤独。

時折、誰か助けてよ!って叫びたくなる。でも、誰もわかってくれないしそもそもこの事なんか覚えていないからはなしようが無い。覚えているのは自分だけ。

「結局はひとりぼっちか・・・」

そんなことを一人呟き憂鬱になる。

とりあえず、気分転換にシャワーを浴びてから二階の自室へ行き巫女服に着替える。
鏡の前に立つ巫女服姿の自分を見て「コスプレか!」と思わず苦笑。

一階の台所へ行ききな粉を小分けにしたビニール袋をリュックに詰め外に出る。

そして通学用の自転車のカゴにリュックを乗せて道に出ると町は霊たちのいたずらでちょっとしたお祭り騒ぎ。

基本的に乱暴な霊は少ないが一応気をつけないとときを引き締める。

「しかし、巫女服でチャリって動きづらいと言うか何というか・・・間抜け。」

辺りで騒いでいる霊たちに早速きな粉をぶっ掛けながらそんなことを呟く。

とりあえず商店街辺りからせめてみようとチャリをそちらに向けると何だか変な奴がいた。
作品名:真夏の雪 作家名:ミタライハルカ