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Reborn

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 私の知らない風景がどんどん現れてくる。私の頭の中の地図には描かれていない建物や道路ばかりだ。一度来ただけでは地図を作ることすらできない。すべての風景が、それぞれ切り離され独立しているようで、私はそれらに、さっきの道からさっきの交差点で左に曲がった道だな、程度のわずかな関係づけしかできなかった。しかもその関係づけもすぐに忘却されるのだった。知らない人たちがひしめく会議場にいるかのように、私は風景からの孤独を感じた。
「最近ねえ、なんて言ったらいいのかなあ、「人生という病」に侵されてるよ。」
私は思い出したように話し始めた。これについてはブログですでに書いていたから、外に吐き出すのを繰り返す必要はないと思っていたが、やはり話したかった。ブログは一応一定の数の人に読まれているが、それが肉体的に受け止められたという確証がない。その点会話だと、言葉が相手の肉体へと作用し、肉体へはまりこんだ分だけ相手の記憶にも残る。私はそのような言葉の手ごたえを感じることで、自分の思想が完全になることを望んだのだ。思想は孤独には完成しない。他者との共有において徐々に完成していく。
「何それ?」
「人生ってのは一つの物語だと思うんだ。出生、就学、就職、結婚、死。その間にも、例えば先生に叱られて泣いたとか無数の小さな出来事が入っていく。それらが偶然と必然で結びついていって人生の繊細でそれでいながら大きな流れが出来上がる。その人生の繊細さの中にどこまでも分け入っていくこと。同時に人生の大局的な流れ、出来事の連鎖をマクロにも見ていくこと。いくつかの出来事が連なった後にその全体を振り返って感銘を受ける、そういう視点とか。要するに人生をミクロにもマクロにも愛しかつ憎むこと。これが、人生に深く毒されるという意味で、しかも苦しみを伴い容易に元には戻れないという意味で、「人生という病」と呼ぶのにふさわしいんだ。」
「それしんどくない? なんかすごく壮大なことを言ってる気がする。」
「しんどいけど、それを引き受けなければならない。理由はわからないけどそんな義務感を感じるんだ。これが最近の俺の転向。」
「はあ。侵されちゃったんだねえ。」
友人はそう言いながらハンドルを切った。目的のラーメン屋の駐車場に入っていった。一郎ラーメンという古びたラーメン屋だった。

作品名:Reborn 作家名:Beamte