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飛鳥川 葵
飛鳥川 葵
novelistID. 31338
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 その瞬間、女将は大口を開けて物凄いスピードで走り寄ってきた。慌てて立ち上がり、逃げようと体を反転させた時、物凄い力で右肩を掴まれた。爪が食い込んで痛い。女将は訳の分からない唸り声を上げている。とにかく逃げなくてはと必死で腕を振り回すと、肉の潰れる嫌な音がして手が離れた。一目散に舟に駆け寄り、海へと出す。振り返るとぞろぞろと何人も群がり始めている。なんなんだ一体。とにかく舟を出すと必死で漕いだ。漕ぎながら冷静に考えてみる。そうか。ヤツラは島の住民だったんだ。あの緩慢な動きは間違いない。でも昼間は? 分からなくなってきた。
 後ろを振り返るとヤツラは波打ち際でウロウロしていた。どうやら海には入ってこれないらしい。しめた。このまま沖に出て船を探そう。
 また考える。島の住民がヤツラなら最初から勝ち目はなかったんだ。だから毎晩サイレンが鳴っていたんだ。察するに、あのフェンスをヤツラは越えられないのだろう。安全地帯というわけだ。じゃあ、あのヘリは? 救援ヘリなのか? そうならこの島の実態を知っているコトになる。僕は何故いたんだ? 分からない。肩が痛む。熱を持っているようだ。
 舟が浸水を始めた時、船を見つけた。コンテナ船だ。あらん限りの声を振り絞る。シャツを脱いで振り回す。オールで水面を叩く。とにかく気付いてもらわなければ。甲板に誰かいる。頼む。気付いてくれ。熱が増して意識が朦朧としてきた。舟の浸水も止まらない
頼むから助けてくれ。

「おいおい。あの島から脱出できたの一人かよ」
「それよりワクチンを早く打て。助かるものも助からんだろ」
「助かりたいのかねぇ」

 目の前が真っ白だ。まだ朦朧とする。僕は助かったのだろうか。分からない。人の声がする。

「まさかこんな結果になるとはねぇ」
「そうだな。上も何考えているんだか。あの島に人を放り込むなんて」
「まぁ、実験なんてそんなもんだろ。ほとんどがヘリに助けられて失格。残りはくたばっちまった」
「とにかく彼一人だけでも生き残れてよかったよ」
「この根性なしが生き残るたぁね」
「真面目にルールを守ってただけじゃないか」
「あれか? 『夜は外出せず音を立てるな。丘には入るな。脱出は夜にしろ』って矛盾したやつか」

 今なんて言った?

「とにかくこれでオペレーション・ゾンビ・アイランドは終了だ。彼の経過観察は必要だがな」
「はいよ。お~い。この根性なし。ゾンビになって俺等襲うなよ」
「ワクチン打ったんだから大丈夫だよ。さて彼には全ステージ・クリアがかかってる」
「そうだな。ほんと、上は何考えてんだか」

 どういうコトだ? 僕は被験体なのか? もういいや。助かったなら。さぁ、お次はなんだ?
作品名: 作家名:飛鳥川 葵