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キツネ目をつかまえろ

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「そうですか。しかし、意外に根性がないんですね。ひとこと謝ったらそうしましょう」
「謝るよ。ごめんよ。悪かったな」
「まあ、いいでしょう」
 いつの間にか何人かの通行人が立ち止り、ことの成行きを見守っていた。解放された若い男は、不満気に周囲を見回している。肘をさすりながら、薄笑いしているようにも見えた。
「何年か前、自転車が歩行者をはねた事故があったこと憶えてますか?被害者が老人で、翌日死亡したんです」
 対照的に結城は深刻な表情である。
「ほんと?それ、やばいね」
 若い男も表情を変えた。
「損害賠償を請求した遺族が裁判で勝訴して、確定した賠償額は六千八百万円でした」
「マジっすか?!それハンパじゃないっすね!」
「殺人者になったら、財産も将来も何もなくなるんです。気をつけてください」
 早川は感動していた。タクシーの乗務員としての立場から何か発言したかったが、何も云えなかった。
「そうだね。そう、気をつけないと拙いね。勉強になったよ」
「アルバイトに遅れそうなんでしょう。早く行ってください」
「うん。ごめんね、じゃあ行くから、ありがとう」