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てっしゅう
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「神のいたずら」 第四章 両親と優

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第四章 

「私はこれで帰ります。碧ちゃん、またね」
「先生、ありがとうございました・・・今度は来月だね」
「そうね、楽しみにしているから」

家族全員で早川医師を車まで見送って、さようならをした。

その夜、碧はまた弥生の部屋で寝た。ものすごく寂しい気分がして一人じゃ寝れないと思ったからだ。

「お姉ちゃん、ゴメンね。碧はいつまでも大人になれない・・・泣いてばかり・・・」
「いいのよ、そんな事。辛い事があったんだもの。お姉ちゃんが代わってあげれれば良かったのに・・・ゴメンね、碧」
「お姉ちゃんは悪くない!そんな事言わないで・・・また泣いちゃいそうだから・・・」
もう涙がポロポロと落ちてきた。

弥生は本当に代われるものなら代わってやりたいと思っていた。自分の方が大人だから耐えられると思っていたからだ。

「今日はお姉ちゃんとくっついて寝よう・・・碧が寝るまで身体さすってあげるから、安心して寝なさい」
そう言って弥生は頭と身体を優しくさすってやった。温かい弥生の身体に抱かれて碧は先ほどの激しい動揺も姿を潜めていた。

「お姉ちゃんが居てくれて碧はよかった・・・なんかママみたいに感じる・・・」
「身体は大きくなってきてもまだまだ甘えん坊ね」
「うん・・・ずっとこうしていたい・・・」
「いいわよ。碧がそうしたいなら・・・」
「お姉ちゃんは優しいのね。碧は小さい頃の記憶が戻らないから、急にこんなことをしているように思えて、迷惑じゃないかって・・・」
「気にしなくていいのよ。前も言ったけど、たった一人の妹なんだし、お姉ちゃんが出来ることはこれぐらいだけだから」

隼人の中にも弥生に対する感謝の気持ちを強く感じさせていた。隼人から見れば、まだ少女の年齢なのに、心強く感じられる感情が今は素直に受け入れられるようになっていた。

今夜はもう一つの部屋で同じようにベッドで仲良くしている光景が見られた。少し意味は違うが・・・とにかく良かった。明日からいつものような小野家が取り戻せるからだ。


翌朝碧は元気に学校へ出かけた。達也も心配していたらしく、席に着くなり、「大丈夫か?」そう声をかけてくれた。
「うん、昨日はゴメンね・・・元気になったから」笑顔で返事した。右隣の席に座っている詩緒里がじっと見て、「あんたたち仲いいのね・・・朝から、妬けるわ」そう冷やかした。

いつもどおり部活も終えて、帰り道達也と少し話したかったから、学校の裏にあった公園に行った。

「昨日はね、事故を思い出して急に不安定になったの。これからも時々起こるかも知れないけど、直ぐに治るから大丈夫。心配してくれて、ありがとう」
「いいんだよ。碧が元気になってくれたら、それで」
「優しいのね・・・ねえ?好きって言って!」
「ここで?誰かに聞かれるよ・・・」
「誰もいないじゃない。それに碧は聞かれても平気。変なことしてないし、もう大人だモン」
「大人か・・・」達也は目線を少し下に移した。

「何処見てるの!身体見たでしょ?ヤラシイ・・・」
「見てないよ、誤解しないで」
「おっぱいが小さいから、子供って思っているんでしょ!」
「違うよ、そんなところ見てないし・・・なんか変だぞ、今日は」
「変じゃないの!達也君が変なんじゃない。見たりして」
「だって・・・可愛いから・・・見たくなっただけ」
「うそ!・・・男の子ってやらしい事考えているってお姉ちゃんが言ってた」
「参ったな・・・じゃあもう見ないよ・・・」
「見てもいいの・・・二人だけのときにそうして」
「二人だけのとき?・・・碧、お前こそ変なこと考えてないか?俺達中学一年だぞ」
「じゃあ、達也が子供っていうことよね?」
「はあ?なにそれ?」
「だって、キスも出来ないから・・・」
「やっぱり変だ。碧の事好きだけど・・・そんなことしたいって思わないんだ。いけないか?嫌われちゃうか?」
「碧が思いすぎなんだよね、達也君のこと・・・もう少し他の子ともお話しようかな・・・そうしたらより理解できるようになるかも知れないから・・・」
「やめろ!何言ってるんだ!俺がそうしてもお前はいいのか?」

ちょっとしたことから、だんだん喧嘩になってきた。

碧の中にいる隼人は、直ぐでなくても構わないが、持ち続けている性欲を解消したいと考えていた。一番近いのは目の前にいる達也に抱かれることだ。今の身体でどのように感じるのかは未知数だが、達也だったらいつでも構わないと小さな身体からそうメッセージを伝えたがっていた。

「達也君のこと好きだから、碧は何をされても構わない。早いとか考えてないし・・・」
「12歳だろ?そんな事普通は考えないぞ・・・逆に俺が迫っても嫌がるほうが自然じゃないのか・・・なんかおかしいぞ、やっぱり」
「もういい!他の子と付き合うから・・・」

碧は立ち上がって、歩き始めた。自分の恥ずかしい部分を否定されたことで、嫌悪感が出たからだ。自分で言っておきながら、達也の傍に居たくない気分に陥ってしまった。

「待てよ!碧・・・待てって!」追いかけてきた。
「いや、手を離して!帰るから、今日は・・・」
「俺は・・・怖いんだよ。これ以上進むことが・・・自信がないんだ。碧の方がずっと大人って思ってきたから。俺がバカにされちゃいそうで・・・その・・・下手だし」
「達也君・・・」振り返って、もう一度手を握り返した碧は、もう自然に唇をそっと寄せた。

誰が見てても構わない。注意されてもいい。達也と今はこうしていたい、そう思った。一瞬の事ではあったが、達也の唇と碧の唇は柔らかく重なった。
男性の時とは違う感触が脳に伝わってきた。

「女性は部分じゃなく脳で感じるんだ・・・」初めてそう悟った。だから、初めに好きという気持ちが無ければ、こんなことは絶対に出来ないだろうし、しても感じないだろうと、男性との違いを噛み締めていた。

二人は元の視線になって、ちょっと恥ずかしく感じた。うつむいている碧に、「もうしないでよ・・・急になんか」そう言った達也の顔は真っ赤になっていた。


「ただいま〜」
「お帰り!碧、ちょっとここに来て」母親がそう言ったので、カバンを床においてそのままの格好で近寄った。

「あのね、事故の事なんだけど、弁護士さんから電話がかかってきて、被害者の訴訟が始まるんだって。解る?」
「解るよ。国にするの?」
「ううん、バス会社よ」
「だってバス会社は悪くないよ」
「運行上の責任を免れないって・・・難しいことは解らないけど、次の日曜日に被害者の遺族とか、後遺症のある人を対象に弁護士さんが会合を開くそうなの。早川先生もあなたには精神的な後遺症が残っているから、参加した方がいいっておっしゃって。だからそのつもりでいてね」
「そう・・・解った」

被害者の集い・・・自分の両親が来るだろう。隼人は優の時とは違う複雑な思いがしてきた。
「ママ、先生に電話したいの。番号教えて・・・」
「何を聞くの?」
「ちょっと・・・携帯から掛けたい」
碧は母親から携帯を借りて自分の部屋で電話した。