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カナダの自然に魅せられて  ~リスを探して10日間~ (1)

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2、ルームシェア



バンクーバーの入江に面した27階の一角。それが美月の住むマンションだった。

お部屋全面大きなガラス窓。台所を真ん中に4つの部屋に4人の独身女性が住む。日本人が2人にドイツ人と韓国人の4人。
バスルーム・洗面・トイレ・台所は共有。台所には、コンドミニアムのように冷蔵庫・電子レンジ・オーブンなど共有するものが備え付けられている。それが魅力だという美月。

1年という約束だったから、家財道具も必需品を買い揃えるのは馬鹿にならない、大きなものは持って帰れないし…。この備え付け家具というのは短期間外国に住むのにはうってつけだ。それに、普通は家族用に作られた4LDKの部屋それぞれを一つずつ使ってシェアするというのもいい考えだった。

荷物が届く前の1日目の夕方、ホテルに荷物を置き(姉の荷物だけだけど…(^^;)美月の住むマンションに向かった。
美月はバンクーバーの街を案内し、スーパーで買い物しながらマンションに連れて行ってくれた。
初めて見るバンクーバーの街は珍しく、また面白いものだった。街の様子やスーパーの様子はまた後で書くことにしよう。

これなら私でも住みついて帰ってこないだろうなと思ったのは、ベランダからの眺めの素晴らしさだった。ゆったりとした時間の流れを感じる空間だ。
隣のマンションとは50~100メートルぐらいは十分に開いていて、日本のように顔を突き合わせているような息苦しさは全く感じない。視界が広く遠く広がっているのがまず第一にいいと感じた。
 
ベランダから眺める運河のような入江、ヨットハーバー、アイスホッケーのドーム…
カヌーの練習艇が行き交うのが見える。
時々、七色の虹のマークが船体に彩られた小さな渡し船も通る。対岸に渡る橋の役目をしているらしい。渡し船は斜め横断も出来るから、陸上から行くより目的地に早く着けるのが魅力なのだと言う。この渡し船には乗船場のようなものはなく、波止場に立って待っていると、渡し船の方から近づいてきて停まってくれる。水の上のタクシーのようなものだった。

どことなく港町神戸にも似ている。神戸で生まれ育った美月には、懐かしさを感じさせるのではないだろうか。

「こんなにいいところだったら、美月がちっとも日本に帰ろうと思わへんのもわかるよねぇ、お姉ちゃん。私もここやったら住んでみたいなぁ。」
「そうやね、あの子は住むところには拘る子やからね。このマンションもずいぶん探したらしいよ。」
と姉は言った。

8月の4日だというのに、日本のようなジトジトとした湿気はなく、さわやかな風が吹く夕刻であった。


目を足元に移す。
27階から見下ろす下界に足がすくむ。クラクラして、そのまま吸い込まれそうな感覚に見舞われながらも、興味津々手すりをしっかり持って覗いてみた。

低いマンションの屋上には、芝生が植えられ、噴水の水が流れる人工の小さな川まで作ってある。テーブルといすが並べられ、ビーチパラソルまであって屋上庭園のようだ。

近くのマンションはおしゃれな建て方をしているものばかり。全面ガラス張り。円筒形や半円形のマンションも見える。
向かいのマンションではどのお部屋のベランダにもテーブルといすが並べられ、大きなバーべキューセットが見える。バーベキューじゃなくても、こんなふうにベランダで食べることがこの地では多いそうだ。このお部屋のベランダにも白いテーブルセットは備えてあった。

ベランダと言えば、日本では洗濯物や布団が並んでいるのが日常の庶民のマンションだ。が、ここではそんな光景は全く見られない。