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てっしゅう
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「深淵」 最上の愛 第一章

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森岡は手帳を取り出して、名前を確認した。
「まず、お前名前なんて言うねん」
「・・・石田です」
「石田か、そうか、真木夏海と竹下真奈美って言う風俗嬢知らんか?」
「夏海と真奈美・・・源氏名なんですか?」
「たしか・・・エリーと淳子や」
「エリーと淳子・・・十三でっか?」
「そうや、知ってるのか?」
「淳子っていう女は知ってます。豊中やったと思いますけど、ちゃいますか?」
「豊中や。家知ってるか?」
「組のもんと一緒に住んでると思いますけど・・・名前出したら私が叱られますよってにニ三日したら場所知らせますわ。連絡先教えてもろうていいですか?」

こんなことで探していた一人の居場所が解るとはラッキーだった。

少し遅れてしまったが4人はホテルのレストランに着いた。
「今日は歓迎会も兼ねているので、仕事のような堅苦しい会話は止めて、気楽に話しましょう」絵美のその言葉に反応するように森岡が口を開いた。

「いやあ、さっきはびっくりしましたわ。ものすごい早業で投げ飛ばしたから・・・あれなんですか?」
「嫌だわ、そんな言い方。女らしくないって言いたいんでしょう?」
「ちゃいますよ!感心しているんですから」
「子供の頃からね、空手と合気道やっていたのよ」
「そうでしたか、いや本物やわ」
「あなたこそ立派な体格よね?柔道してたの?」
「はい、近大の柔道部でした。近大って解りますか?」
「もちろんよ。近畿大学でしょ」
「嬉しいです。知っていやはるなんて。早川さんはどちら出身ですか?」
「いいじゃないそんなこと。聞きたいの?」
「別にそういう訳と違いますけど・・・」

及川が耳元で、「東大だよ」と知らせた。

「やっぱり・・・俺らとすべてが違うって思いました」
「あらあら、すごい褒め言葉ね。何処の大学かは大きな問題じゃないわよ。何をしているかって言うことと、出来ているかって言うことが大切なの。大阪府民のために、日本国民のために自分が何をしているのかって考えられる人が偉いのよ」
「はい、自分もそう思っています。及川さんも朋子も同じだと思います。早川さんに全てを任せて着いてゆきますので、解らないことは教えてください。お願いします」
「仕事は抜きって言ってるでしょ・・・でも今の言葉は嬉しかったよ。朋子さんも素敵な男性を好きになったわね」

大きな咳を森岡はした。
「ダメよ、ごまかしても・・・観念しなさい」絵美のその言葉が切なく胸に響いた。
「早川さんは結婚されないのですか?」
「森岡くん、今の私見ていて結婚なんて出来ると思うの?」
「それは・・・どう言う意味ででしょう?」
「恋愛をしている時間があるのかって言うことよ」
「難しいでしょうね、多分」
「多分じゃないのよ、絶対に無理なの」
「寂しいですね」
「ありがとう。寂しくなんかないのよ。使命感があるから」

使命感・・・確かにそれは強かった。でも絵美はみんなに話せないことがあった。自分の弱さを見せるようで言えなかったのである。

早川絵美は着任して直ぐに及川と森岡に言い含めていたことがあった。それは、自分が女性だしまだ33歳と言う年齢だったので勤務中の会話以外で「警視正」と階級呼びをしないようにと言うことだった。数人着任している男性の警視正や上官はほとんど一般人と関わる事がなかったが、絵美は友人や部下との交流を深めたかったのであえてそのしきたりは守らなかった。その代わり、身分を知られないようにすることには気を遣っていたのだ。

「森岡くん、朋子さんあなたのことが好きなのよ。知っているんでしょ?」
「えっ?その話題振るんですか?」
「もう32なんだから、きちんと決めて結婚考えたらどうなの?」
「俺だって、早川さんと同じで暇がないですから」
「そうね、事件だ事故だの24時間勤務のようだものね。朋子さんはよく理解しているでしょうけど、いつも夫が傍に居ないのは辛いわよ。構わないの?」
「私はこれでも警察官です。夫が何をしているのか、したいのかが解らないようでは結婚できないと思います。むしろ普通の女性のほうが警察官の妻には無理だと思いますが」
「偉いわ。森岡くん、ここで婚約しなさい!私の命令よ」
「そんな・・・それ規則違反ですよ。断ったら・・・左遷ですか?」
「私は誰とも付き合わないし結婚もしない。この世で好きになる人はもう居ないって決めているから。朋子さんの思いを叶えてあげて。彼女は可愛いし、あなたを愛してくれるわよ」
「朋子が俺のこと思ってくれているのは知っています。早川さんを初めてみたとき自分の女性に対する常識がみんな吹っ飛んだんです。身分が違うことぐらい解っていました。でも・・・」
「それ以上は言っちゃだめ。今私が言ったことであなたは解ったはず。全部リセットしなさい。朋子さん、許してあげて」
「早川さん、解っていました。森岡さんが気にしていたこと。女ですものそのぐらい気付きます。気持ちが収まるまで待っています。私の想いは変わりませんから」

リラックスして話そうと集まった4人だったが、思わぬ恋愛話になって及川の出番は無くなっていた。最後に少しだけ口を開いた。
「森岡、わしが仲人したるさかいに、早よう結婚しろ」
「及川さんまでそんな事言わはるなんて・・・」

事件の捜査中にもかかわらず4人は久しぶりに仕事以外の話題で会話を楽しんでいた。

約束どおり森岡の携帯に一樹会を名乗る男から電話がかかってきた。
「だんな、わかりましたぜ。豊中に居りましたわ。住所言いますよってにメモしてくれはりますか?」
「そうか、助かったわ。うん・・・阪急の何処の駅や?」
「岡町です」
「そうか・・・おおきに。あまり無茶したらあかんで」
「へえ、解ってますがな。ほな切りまっせ」

早川に報告した。

「じゃあ、警部と一緒に直ぐ調べてきて。場合によっては連行して構わないから。それと男がいたら夏海のことも聞いてみて。案外知ってるかもしれないから」
「了解しました。行って来ます」

森岡の運転する覆面パトのカーナビを頼って車は現場に着いた。
「この辺やな・・・シャトー豊中やったな・・・」
「警部!ここちゃいますか?」
「そうや!ここや。二階やな」

部屋の前に着いた。ドアホンを押す。
「どなた?」
「竹下真奈美さんか?」
「せやけど、誰や?」
「警察や、ドアー開けなさい」
「待って・・・服着るさかいに」
「早よしいや!」

中でなにやらがさがさと音が聞こえた。

「なにしてるねん!鍵開けなさい」
「すみません・・・散らかってたもので」

中に入って二人は部屋の散らかっている様子にびっくりした。

「めちゃくちゃやなあ・・・何しててん?」
「ごみ出す時間に起きられへんから、溜まってしもうて」
「まあええけど、聞きたいことあるねん。上がってもええか?」
「どうぞ。奥はまだましですから」
「邪魔するで」

ベッドの置かれた奥の間は座るだけのスペースがあった。ゴミ箱に男との後始末のものとティッシュが山ほど捨ててあった。
「さかんやな、毎日してんのか?」
「悪いの?」
「そう言う訳やない。腕見せてみい」

真奈美はさっと後ろに隠した。