小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

傀儡師紫苑アナザー

INDEX|20ページ/40ページ|

次のページ前のページ
 

 人ごみを掻き分け、ヴァージニアの手が桂木の肩に掛かった。
「逃がさないよ!」
 ぎょっとした桂木が後ろを振り向いた。
「今度はおまえかっ!」
「あんたはあたしが殺すんだ!」
「クソッ!」
 桂木は全身の力を込めてヴァージニアにタックルした。
 後ろに飛ばされたヴァージニアには目もくれず、桂木が車道に飛び出して逃げる。
 ヴァージニアの目が見開かれた。
「お父さん危ない!」
 自分を呼ばれた桂木に耳にその言葉は届かなかった。
 恐怖に顔を歪ませた桂木の身体を大型トラックが跳ね飛ばした。
 激しい衝突音に歩行者たちの目がいっせいに向けられた。
 人が宙を飛ばされている。
 地面に叩きつけられた桂木にヴァージニアと愁斗が駆け寄った。
 桂木の脈を取った愁斗が静かに告げる。
「即死だったらしいな」
「いいざまだよ」
 吐き捨てたヴァージニアは愁斗に目を向けようとしなかった。
 誰も呼んでいない救急車が事故から30秒も立たないうちから到着し、桂木の屍体を搬送していく。この救急車は桂木の腕の怪我で呼ばれた救急車だった。しかし、この救急車は本物ではなく、亜季菜の手が回った偽者の救急車だった。
 愁斗の横に来た黒服の男が小さな声で告げる。
「桂木の脳が損傷を受けていないことを祈るのみです」
「僕は紫苑の回収をしてきます。手回しのほうをよろしくお願いします」
 事件は呆気なく幕を下ろした。
 ヴァージニアも戦う理由をなくし、人ごみの中に消えていった。

 (完)