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表と裏の狭間には 九話―穏やかな日常―

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そのまま急いでバンに戻る――途中で、ゆりがしっかりと使用済みの閃光爆弾を回収する。
バンに飛び乗ると、バンは即座に発進した。
「っておい!煌と耀はどうした!」
「耀はデータカードをあそこに放置したら、煌は連中を縛り上げたら撤収するわ。今日の仕事はこれでおしまい。あたしたちも着替えたら待ち合わせ場所に行くわ。」
「待ち合わせ場所?あそこへ帰るんじゃないのか?」
「皆で晩御飯よ。焼肉屋を予約したの。あなたも暇なら来なさい。」
いきなりだなー。
っていうかいつ予約したんだ…………。
「雫も呼んでいいか?」
「大歓迎!」
雫に電話………っと。
「まだ仕事中!」
ゆりに携帯を閉じられてしまった。

いやいや。
何か滅茶苦茶あっさり終わってませんか?
こんなに平和でいいのか?
とは思うものの。
平和なことに越したことは無い、んだよなぁ。
さて。
仕事を終えてから(つまり私腹に着替えアークの拠点を出た後)雫に電話すると、一発OKで即座に飛んできた。
場所は駅前の大手焼肉チェーン。
「やっぱり肉でしょ肉!」
「まあ、美味いけどな。」
「あまり女子がそう肉肉騒ぐものじゃないっすよ。」
「兄様も結構楽しそうなの。」
「どうだい礼慈?肉のついでにわっちも味見してみる?」
「……普通に寝る。」
「………テンションたけー。」
「まあ、皆さんらしいですね。」
なんて、それぞれのテンションで入店。
ちなみに俺たちは学校帰りのため制服だ(さっきの煌のは即席で買ったもの)。
案内されたのは八人掛けの座敷席。
「よっしゃ!食うわよ!」
「まあ、遠慮しないで食え。」
「どうせ費用は先輩夫婦持ちっすしねー。」
「誰が誰と夫婦だって言うのよ!?」
「勿論お姉様と煌なの。」
「あんたたち兄弟は自腹ね。」
「ええ!?」
いや、そもそもそんなのでいいのかよ。
「こいつらに限った話じゃなく、俺たちも出すぞ?」
「いいっていいって。素直に奢られときなさい。」
「まあ、こういうのもなんだがオレもゆりも結構金持ちなんだよ。それに、奢るのはこいつら相手にいつものことだからな。ま、気にすんな。」
「そういうことならいいけど………。」
何か煌もゆりも金に関してはおおらかだよな。
旅行のときもそうだし、今日も。
「じゃ、オーダー!」
「カルビ5!」
「ロース4!」
「ホルモン2!」
「最初はタンって相場は決まってるのよ!牛・豚タン3ずつ!ついでに塩ロース5!」
頼むなぁ…………。
「ウーロン茶8にサンチュ10、ライスは……どうすんの?」
「モチ、大で。」
「僕も大っすね。」
「じゃあ………俺も大で。」
「……愚問。」
「女子は普通?」
「わっち石焼!」
「私はクッパなの。」
「また好みが分かれるわねぇ……雫ちゃんは?」
「あ、私は普通にご飯で……。」
「じゃあライスは大4、中2、石焼ビビンバとクッパが一つずつで!」
「何か忘れてない………?」
「野菜なんか頼まないわよ。」
「海産物も却下だ。」
「偏食!?」
「肉屋では肉を食べる!」
「冷麺!」
「それは後で!」
「では………ご注文を確認します。」
俺たち(というか俺と雫以外)のテンションに呑まれつつあった店員さんが確認を取る。
「牛・豚タンが三枚ずつ、塩ロースが五枚、カルビが五枚、ロースが四枚、ホルモン二枚、サンチュが十枚、ウーロン茶が八つ、ライスの大が四人前、中が二人前、石焼ビビンバとクッパが一つずつ。以上でよろしいでしょうか?」
「それでお願い。」
あっさりと承諾するゆり。
「…………頼みすぎじゃないのか?」
「いや、十中八九足りないわよ。」
「ミノ忘れた!」
「それか!」
「まあ、何だかんだ言いつつほとんどはライスお代わりするだろうし、肉なんか絶対足りないし、サンチュも即刻追加することになるだろうし、ウーロン茶なんか一瞬だろうし、そんな感じだよこいつら。」
だからお前らも遠慮とかしないでどんどん食え。というかそうでもしないと食いそびれるぞ、と煌は笑っていた。
まあ、こんな感じでわいわいするのもいいかもしれないな。
ちょっとわいわいやりすぎな気がするが。

こいつら、絶対遠慮ってものを知らんだろう。
俺と煌と雫の三人がもっぱら焼く側で、その他は食う側を一貫して譲る気がないらしい。
………三人がかりで焼いているのに、片端から消えていく。
煌がいい感じに追加注文したり俺たちの皿に取り分けたりしてくれなければ、ペースの掴めない俺と雫は全く手をつけられていないだろう。
………確かに。
冒頭、煌が言った事は正しかった。
恐るべき速度で消費される品々。
そして恐るべき速度で補充される品々。
なんという散財っぷりだ。
会話………特にナシ。
ただ、騒いでいる。
『ちょっとそれあたしのよ!』『僕が焼いてたんすよ!』『……渡さない。』『お前らの誰でもなく俺と紫苑と雫ちゃんが焼いてるんだろうが!』『しているうちにゲット!』『理子ぉおおおお!』『お姉様の取りかけたヤツゲットなの!』『妹が変態なのはさておき次の肉はないんすか!?』『アンタが全部掻っ攫ったんでしょうが!』『店員さーん!』『ロース5ミノ3カルビ4ハラミ2!』『サンチュ8忘れてる!』『お前らもうちょっと分別を弁えろ!』
………こんな感じだ。
「雫、ちゃんと食えてるか?」
「うん。美味しいよ。それに、こうやって皆で騒いで食べるのも、楽しい。」
「そうか?ならいいんだけどな。」
「ああもう!」
煌が頭をかき回しつつ俺たちに告げる。
「もうこいつらのは俺が焼くから!お前らはお前らで焼いて食え!全然食ってねぇじゃねぇか!あ、さっき注文したヤツ、一通り二人前ずつ追加で!」
煌はそう言うと運ばれてきた肉を急ピッチで焼き始めた。
俺と雫も、煌の言葉に甘えてこっちの分をこっちで焼くことにした。
「そこ安全だと思うなぁっ!」
「お前が手を出すから混乱すんだろうが!お前のはこっちだ!」
「うん、本当にちゃんと食えよ?ここまで騒いでんのにほとんど食えてないって逆に馬鹿馬鹿しいよ?」
「そうだね。よっし!食べるよー!」
「その息だ。食え食え。」

一体いくらかかったのだろう。
正直、あまり考えたくないな。
というか、あれだけ盛大に食い散らかしておきながら、その費用を顔色一つ変えず払える煌とゆりにもびっくりだが、平然と雑談してるこいつらもこいつらだろう。
っつーか、普段は眠そうに気だるそうにしている礼慈が、争奪戦でその他の面子と互角にやりあってるのがすごかった。
やっぱり、こいつら似たもの同士なんだろうなー………。
「ふぁ~。食った食った。」
「毎度のことだがな。」
と、ゆりと煌が店から出てきた。
「いや、本当にいいのか?大分かかったんじゃないのか?」
「それは訊かぬが華ってもんよ。美味しいんだからいいじゃない。」
「まあ、じゃあ、ご馳走さん。」
「今日はご馳走様でした。」
「おう。また機会があったら声掛けるわ。」
まあ、食事中の連中の様子を見ると、本当にいつもこんな感じみたいだし。
スポンサー二人がいいならいいか、と考える。
……最近こんな考えが身に染み付いてきてるような気がするな。
「美味しかったね、お兄ちゃん!」
「ああ。そうだな。また今度来ようか。」