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天才飯田橋博士の発明

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10 赤い糸が見える装置




「神楽坂君、こんどの発明品で帽子を使うのだが、買ってきてくれないか」

「えっ、またニット帽じゃないでしょうね」

「まさか、オレがファッションに疎いといっても、もう春だ。ニット帽じゃなくて好きなものを買っていいよ」

「は~い」

「え、もう行くのか」

「はい、ヒマですから」
助手の神楽坂舞子は、スキップを踏み損ねながら出て行った。が、舞子はすぐに戻ってきた。

「博士ぇ、帽子はファッションですから服とのバランスを考えなくてはなりません。だから3種類にしていいですかぁ」

「う~ん、同じ試作器を3個も作るのは面倒だよ。1個にしてくれ」

「博士、着脱を簡単にしてくれれば使い回しできますけど」

「簡単に着脱というけどな、う~んんん」

「博士は天才なんでしょう」

「そうだな、何個でも買って来なさい。と言いたい所だが、じゃあ3個にしなさい」

「は~~~ぃ」
舞子は、スキップはやめてモデル歩きをしながら出て行った。


博士の新発明【赤い糸が見える装置】が付いた帽子が完成した。今回は生年月日・血液型はもちろん、親兄弟など舞子の知りうる限りのデータが入っている。

そして博士は自分のデータを入れたものも作成していた。いつもは「出来たぞー」と叫ぶのだが、博士はそれをそっと被り、ワイヤレスで連動しているサングラスをかけて見た。
いつもは舞子が最初にテストをするのだが、作っているうちに自分で試したくなったのだ。

……オレの赤い糸はどうなっているのだろう。……



視角の下方から前方上に向かってそれは見えた。博士はチラッとそれが舞子とつながっていたらどうしようなどと思ってしまった自分を嗤った。

それは斜めに遠いどこかを指しているのではなく。真っ直ぐに天に向かっているようだった。そして赤い糸の先は段々と透けていって先が見えなかった。たぶん結婚して三年目に天国へ行ってしまった妻の所へ向いているのだろう、もう二十年経つのだなあと思いながら博士はふ~っとため息をついた。

博士は気を取り直して「できたぞー」と大きな声で叫んだ。

博士が叫び終えたらすぐにドアの開く音と一緒に舞子が飛び込んできた。

舞子のあまりの速さに博士は、ため息をついている所を見られたかと思った。しかし舞子の興味は【赤い糸が見える装置】に100パーセント行っているようだった。

「説明しよう。いや、しくみの説明なんて耳に入らないだろう。早速試してみるがいい」

舞子は【赤い糸が見える装置】をかぶってみた。

「あれっ、あれあれっ、そんなぁ、いやだ~」
舞子は部屋の中をうろうろ歩きまわりながら悲鳴をあげた。

「ど、どうした!」

「赤い糸が博士の方からこっちへ向かっていますー」

博士は、もう一つの帽子を見て、自分のデータの入った帽子を舞子に渡してしまったのに気づいた。それにしても大騒ぎし過ぎじゃないかと少し気を悪くして博士は舞子用の帽子を渡した。

「神楽坂君、落ち着け、ほら、こっちを被って」

新しい帽子を被って舞子はやっと静かになった。

「どうだ、見えるか」

舞子は、目の前で手を動かしていたが、肩を落として言った。

「博士、見えますけど手繰れません。これでは偶然に会うのを待つしかないですねぇ」



 
作品名:天才飯田橋博士の発明 作家名:伊達梁川