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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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紡がれる因縁 第7章《因縁》


 因縁を辿る力
 因縁を紡ぐ力
 しかし何故彼らはここに集められた?
 それが因縁

 第7章 因縁

 始まりは過去に遡る――。400年以上も昔、ゼロとメフィストはある研究所にいた。その二人の間に割って入って来た男がゼオスであった。彼はその研究所で事件を起こし、その際に姿をくらまし、ゼロまでも姿をくらまし、その後を追うようにメフィストまでもが姿をくらました。
 そして、ゼロはいつしか伝説ハンターとして名を世界に轟かす存在となっていた。ゼロは当時ハーディックと呼ばれる男と一緒に仕事をしていた。そして、ゼロはハーディックと共にゼメキス伯爵の屋敷に乗り込み仕事をこなしたことがあった。そのハーディックの息子がジェイクである。そのジェイクは今回、彼の父親であるハーディックと同じ以来を受けることとなった。
 クィン――彼はメフィストの息子であった。彼の父であるメフィストはゼロとゼオスと、ある因縁で繋がっている。しかし、今のところ役立たずのクィンが大魔王とまで呼ばれた妖魔貴族の息子だったとは……。
 ゼロの紅い目はゼオスをしっかりと見据えて放さない。
「ゼオス、何故キサマが?」
「僕は偶然を操る姫を頂きに来ただけだよ。彼女は無意識の内に偶然を操り、因縁を持つ者を引き合わせる能力を持つ。じつにおもしろい能力だろ? その能力を上手く使えばきっと世界をこの手に……だからゼメキス伯爵、君は彼女の記憶を封じて能力までも封じたのだろ?」
「そうだ、偶然を操る能力などあってはならん能力だ」
姿を消していた薔薇姫が突如風と共に姿を忽然と現した。
「そうです、私の能力を悪用されると大変な事になるでしょう。だからと言ってもう記憶消されるのも嫌です。どなたか私を殺してください」
ゼオスは冷ややかな言葉を返した。
「それはできない、だろ?」
「その通りです。私は死ねない、偶然が私を死なせてくれない」
そう言った直後薔薇姫は短刀を取り出し自分の腹に突き刺そうとした――のだが、建物全体が大きく揺れた。地震だ、地震が起きたのだ。そして薔薇姫はバランスを崩した拍子に床に倒れ、短刀を手放してしまった。
 床に落ちた短刀をゼオスは拾い上げ薔薇姫に投げつけた。がしかし、やはり短刀は薔薇姫に刺さることはなかった。短刀は薔薇姫にしていたペンダントに偶然に当たり床に落ちた。
「おもしろい体質だね。だからこそ僕は君を必要としているのだけれど」
ゼオスは薔薇姫に近づきその手を取った。
「さあ、僕と行こう」
「嫌です」
この言葉を合図に真っ先にゼロが剣を構え、ゼメキスは槍を構え、ジェイクも続いて剣を構えた。クィンはというと、物蔭に隠れて応援の準備をしていた。
 ゼオスの手が薔薇姫の口元に当てられ瞬間、薔薇姫は深い眠りに落ちた。薔薇姫を眠らせた彼の身体に異変が起きた。瞳の色が黒瞳から紅へ、そして背中からは漆黒の翼が――。
「くくく、いくらでも相手になるよ掛かっておいで」
「遠慮なく行くぜっ!!」
真っ先にゼオスに刃を向けたのはジェイクであった。
 切っ先で床を擦りながら翔け、剣を下から上へと振り上げる。剣は確実にゼオスを捕らえていた、がしかし剣は相手を切り裂くことはなかった。
「たかが人間が僕に刃を向けるなんて、身の程知らずとはこういう時に使う言葉なんだね」
剣はゼオスの手に握られていた。
「こんなナマクラな剣じゃ僕の皮膚一枚たりとも切れないよ」
剣を握った手からは血一滴たりとも零れはしない、それどころかゼオスは剣を強く握り締め粉々に砕いてしまった。
「!!」
次の瞬間ジェイクは羽ばたき突風を起こしたゼオスの翼に成す術もなく吹き飛ばされた。
 間を空けず左右上空からゼロとゼメキス伯爵が武器を構えゼオスに襲い掛かる。
 ――双方から繰り出された攻撃を両手で受け止めた。ゼオスは軽々と相手の武器を掴み、そのまま腕を回転させ二人を武器ごと放り投げた。
 片手片膝を床に付け着地した二人は同時に地面を蹴り再びゼオスに立ち向かった。しかしゼオスの力は壮絶絶対であった。
 ゼオスの身体が音も無く地面を滑るように移動したかと思うと、残像が発生し瞬時のうちに二人を仕留めた。床に腹から叩きつけられた二人は武器を手放してしまい、すぐさま武器を拾おうとしたが見つからない。
「探し物はこれかい?」
長い刃を持つ剣と装飾美しい槍はゼオスの手に握られていた。
 ゼロの紅い瞳、そして蒼から紅へと変わったゼメキス伯爵の瞳がゼオスを無言で睨みつける。妖魔貴族の瞳の色が変化し紅に変わるのは感情が高ぶっている証拠である。しかし半妖であるゼロの瞳は元から紅かった。
 ゼオスの紅い瞳とゼロの紅い瞳が互いを見つめ合う。
「ゼロ、君の目はあの時からずっと紅いままなのかい?」
「…………」
ゼロは何も答えなかった。代わりに彼はこれで答えた。
 紅いマントを激しく揺らしながら拳に力を入れたゼロがゼオスに飛び掛る。がしかしゼオスの前では無意味な行為と言えた。
 ゼオスの身体は残像を起こし揺らめくように移動し、ゼロの身体に何発ものパンチを繰り出した。後方に大きくゼロの身体は床に倒れ動かなくなった。
 ゼメキス伯爵、そして物蔭に隠れるジェイクとクィンの表情は明らかに曇っている。武器を失ったジェイクはクィンと共に陰ながら応援をしていたのだ。
「ゼロさんがやられるなんて、ジェイクどうにかしてくださいよ!」
「俺にどうにかできるわけねぇだろ。武器も壊されちまったし、おまえがどうにかしろよ」
うつむくクィン――そして彼は顔を上げスマイルを浮かべた。
「仕方ありませんね、どうにかします。けど、どうにかした後の処理は任せましたからね」
腕にはめられた瑠璃色のブレスレッドを握り締めながらゼオスの前に歩いて行くクィン。彼は何をする気なのか?
「僕がお相手いたします」
クィンはブレスレッドに魔力を注入し砕いた。
「僕はこの血が嫌いで嫌いでたまらない、だからこの血には頼りたくなかった……」
クィンの髪の毛がやわらかな風に巻き上げられ、彼の全身は優しく暖かなオーラに包まれた。そして彼の瞳は漆黒の黒から、血のような紅へと変わった。
「僕も半妖です。でも人間との半妖ではありませんよ、もっと高貴な者の血が僕には流れています」
妖魔貴族である父を持つクィンが妖魔の血を引いていることは当然だった。しかもその血は大魔王と呼ばれた男の血と人間よりも高貴な存在の血であるという。
 余裕のスマイルを浮かべるクィンの顔つきは先程とは別人のようであった。彼は絶対の自信を持っている。
 この時初めてゼオスはこの戦いにおいて恐怖した。彼を恐怖させた者はこれで二人目だった。
「親子揃って僕にこんな屈辱を与えるなんて……くくく、ゾクゾクするね」
そうゼオスに初めて恐怖という感情を抱かせたのはクィンの父であるメフィストだった。
「ゾクゾクするだって? その程度で済むと思っているのか? 凍りつかせてアゲルよ」
作品名:リブレ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)