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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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紡がれる因縁 第1章《迷いの森》


 旅に出る
 旅の目的?
 ただ飽きた、そんだけ
 自分の未来は自分で築け……?
 俺は今の事で手一杯だ

 俺の名前はジェイク、プロのハンターだ(自称だが)。
 そんで、俺は相棒のクィンってのと一緒に旅をしてるんだが、俺は剣、そのクィンは主に魔法を担当している。そのためクィンは古代文明にも精通している……らしい。実際どのくらい詳しいのか知らない。
 ハンターってのは簡単に説明すると、人間に害を及ぼす奴らをやっつけたり捕獲したりする仕事だ。数ある仕事の中でも、5本、いや3本の指に入る危険な仕事と されている。
 ハンターってのはふつーは、狩る相手によって専門のハンターがいるもんだが、俺らは依頼さえあれば何でも狩る、時にはハンター家業とは関係ない仕事もやる。要するに金さえ貰えれば、なんでもやる。
 まぁ最近じゃあ、俺らみたいになんでもこなすハンターが増えてきている。時代の流れってやつか?
 で、まぁ、今は何してるかっていうと……実は……まぁその……なんだ……相棒にはデカイ声じゃ言えないんだが……迷った……道に迷っちまった。

 第1章 迷いの森

 二人の若者は森の中にいた。
 アニスの村まではあと、どのくらいだろうか? この森に入ってから、どのくらい歩いたのだろうか?
 2時間、いや3時間くらいか――実を言うと1日以上この森の中にいる。本来であれば1時間とかからずに抜けることのできる森なのだが……?
 そのためであろうか、二人の若者は少し疲れた足取りで無言のまま歩いている。
 そして最初に話を切り出したのはジェイクだ。
「よし、休憩にしよう」
「また……ですか? さっき休んだばっかりですよ」
 とクィンがジェイクを上目遣いで見つめ、少し呆れた口調で言う。
「…………。(こいつ気づいてる……俺が道に迷ったことを)」
「……正直に言ってください、それがあなたのためになるということですよ」
 クィンは不適な笑みを浮かべ目線を落とした。
「……っ何が? (絶対気付いてる……ヤバッ!)」
「とぼけないでください!」
 クィンが怒るのも当然だ。なぜなら、この森に入るきっかけを作ったのはジェイクの『近道をしよう』という言葉が原因だからだ。
「そーいえば、さっきっから、同じような景色が続くなぁ……ははは (これ以上はヤバイ!)」
 と、わざとらしく言ったのがまずかった――。
「……フッ、とぼけないでください! 道に迷ったなら、迷ったとはっきり言ったらどうですか!!」
 クィンはそーとー頭にきているらしく、それに押されたジェイクは、申し訳なさそうに頭を下げた。
「……すまん……迷った。でもなぁー、分かってんだったら早くフォローしろよ! オマエの役目だろそーゆーの」
 と、言って食って掛かったが、それに対してクィンは少し皮肉を込めてこう言った。
「だって、ジェイクが言ったんですよ、『この森なら前に来た事がある、黙って俺に付いて来い』って、僕はクィンが『黙って』って言ったから、そうしたまでです」
「はぁ! そんなの言葉の綾だろ!!」
「わかってました」
「性格悪いぞ……オマエ」
「あなたと付き合うようになってからです」
 沈黙が二人を包み込んだ――。
「……ふ、はははは!」
「……フッ」
 沈黙によって冷静さを取り戻した二人は、今のケンカが莫迦らしく思えて思わず笑ってしまった。
 少しはにかんだ表情をするクィン。そして、何事もなかったかのようにジェイクが、
「……で、どーする?」
「……どうしましょうか?」
 そのとき、遠くのほうで女性の悲鳴が!
「きゃぁぁーーーっ!!」
「…………!!」
「行きましょう!」
「そうだな、道に迷ってるよりましだ、行くぞ!」
 二人は悲鳴が聞こえた方向へと森の中を駆け抜けて行った――。
 二人の前に現れた女性は女性というより、まだ、少しあどけなさを残す少女と言ったほうがいいだろう。
 少女は少し安堵の表情を浮かべ、
「あ、あの、助けてください。あなたたち、あの、強そうだし魔物に追われていて、あの、お願いします」
 少女の言葉からは焦りと動揺の色が見受けられる。
 ジェイクはまぁまぁ落ち着けって感じで少女に歩みより尋ねた。
「で、その魔物ってのは?」
「あ、あの、後ろに……」
 少女はジェイクとクィンの後ろを指差した。ジェイクとクィンが驚いた表情をして後ろを振り向くとそこにはモンスターが!!
 モンスターは緑色のゴツゴツした筋肉質の巨体を上下に揺らし3人を睨みつけている。
 クィンはモンスターを一瞥し、そのモンスターが何なのかを瞬時に判断した。
「ゴブリンのようですね、それも変種のような。僕の魔法を使えば楽勝です……と言いたいところなんですけど、実は、昨日から変だなぁと思っていたんですけど……その、なんですかね……」
「早く言えよ」
「この森、結界が張っているらしくって……魔法が封じられていて、でも1回くらいなら使えるかも……ははは」
 モンスターを前にして魔導士が魔法を使えないとはただの人同然、もしくはそれ以下の戦力にしかならない。
「使えねぇーなんだよそれ。わかった、ここは俺にまかせろ!」
 ジェイクは腰に掛けてある鞘から剣を抜きモンスターにその刃を向けた。
 モンスターは動じる様子を全く見せずジェイクを獣のような目つきで睨み舌なめずりをした。
「ソコノ、オンナヲワタセ」
「こいつ、人間の言葉をしゃべれるのか!?」
 ジェイクはゴブリンを指差し肩越しに後ろを見てクィンに聞いてみた。
「普通のゴブリンより知能が高いみたいです。気をつけてください!」
「ハヤクシロ! サモナイト……」
「さもないと何だってんだ!」
「ウゴォーーーッ!!」
 ゴブリンの拳がジェイクの顔面に近づいて来た。ジェイクの顔面に拳が当たる刹那、彼は不適の笑みを浮かべ、そしてゴブリンの視界から姿を消した。
 ゴブリンは辺りを見回したがジェイクの姿は無い!!
「こっちだデカブツ!」
 ジェイクの身体は木の上にあった。そして地上へ切っ先を向け落下し、ゴブリンの身体を突き刺す。モンスターの雄たけびが静かな森に木霊する。
「ウゴォーーーッ」
「ジェイク離れて下さい!!」
「OK」
 ジェイクは剣を抜きながら後ろにジャンプした。すると、間を空けずゴブリンの身体に大地に轟く雷光が落ちた。
「グフッ!」
 モンスターの身体は地面に大きな音を立て土煙を上げながら倒れ込み、そのまま動かなくなった。
 それを見た少女は安堵感から地面にへたり込んでしまった。
 クィンは少女に近づき手を差し伸べた。少女はその手に掴まり身体を起こされながらこう言った。
「命を助けていただき、ありがとうございました」
「どういたしまして」
「いいとこばっか持ってきやがってちゃかり最後止め刺してんじゃねぇよ」
「まぁいいじゃないですか」
 ジェイクはまだ少し不満だったが、そのことよりも少女のことが気になった。
「で、何でモンスターに追われてたわけ?」
「そ、それが……」
 ジェイクの質問に少女の顔は血の気を失い凍りついた。そしてまた地面にへたり込んでしまった。
「どうしたんですか!?」
 少女の目からは涙が止め処なく流れ地面を濡らす。
作品名:リブレ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)