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ろーるぷれいいんぐ

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外では朝刊を配っているバイクの音がしている。オレは頭が朦朧としてきたのを感じながらも、止められずにいた。続きはどうなるんだろう。夕食のあと、野球放送を見終わった直後から――明日は学校は休みだし、寝るのはちょっと遅くなってもいいや――と思いながら始めて、ロールプレイングゲーム『ドラゴンシャドー』を止めるきっかけを無くして徹夜してしまった。高校入学のため、封印していたゲームを入学が決まってからやり始めたのだが、すっかりとりこになってしまった。

オレはフラフラしながら立ち上がり、部屋を出て台所に向かった。冷蔵庫の前に立つと【冷蔵庫がある】と頭の中に浮かんだ。頭の中でボタンを押す。【開ける・何もしない】が浮かぶ。【開ける】を選ぶと冷蔵庫が開いた。【牛乳・腐ったプリン・生肉】が現れた。【牛乳】を選ぶ。牛乳を飲み終えたオレは《HPが少し回復した》と感じた。
 ――もう少し冒険だ―― そう思って玄関に行ってスニーカーを履いた。玄関に立つと
どこへ行きますか【学校・シャドー町・ドラゴン市】が浮かんだので【シャドー町】を押した。

シャドー町はひっそりとして、店は皆シャッターが下りていた。「まだ時間が早いんだ」とオレは独り言を言いながら、町の入り口に戻った。頭の中のフィールドマップから【ドラゴン市】を選んだ。

市へ向かう途中、公園があったので探索を始めたオレはゴミ箱を見つけて覗いてみた。【コンビニ弁当の残り】があった。【拾う・何もしない】から【何もしない】を選んだ時に、急にモンスター遭遇の場面になった。

ぷーんと嫌な匂いがしたと思ったら、ホームレスが現れた。【戦う・防御・逃げる】からとっさに【防御】を選んだ。ホームレスはジロリとオレを睨んだ。HPが少し下がった。
【逃げる】を選んでその場を逃れ、少し歩いた所で、バサバサとという羽音とともに「クワッ、クワッ」という威嚇する声がする。「このっ」というホームレスの声も聞こえた。オレは振り返った。ホームレスが空飛ぶ黒いモンスターと獲物の取り合いをしている。

オレは辺りを見渡し、小石を拾って黒いモンスターめがけて投げた。小石は見事に黒いモンスターを直撃しないで、ホームレスの頭に当たった。
「いてっ!」ホームレスがこちらを見た。そして小石をオレに向かって投げてきた。オレは慌てて逃げた。

公園をあちこち探索して【壊れた傘】を見つけ装備した。攻撃力が少し上がった。とりあえず武器は装備した。武器を持つと【戦闘】したくなる。オレは経験値を上げるため、弱いモンスターを捜し始めた。 通りかかった黒猫に急接近したが、黒猫は軽くかわして、薮の中に逃げてしまった。

さらにモンスターを求めて公園をさまようオレに、ズンズンと近づいてくる男がいる。
脇目もふらず、ジョギングという技で接近してくる男は、オレを見て一瞬スピードを緩めたが、【逃げる】を選んだようで、それから急にスピードを上げて公園の外に出ていった。
 ――この場所では経験値が上がらないだろう―― 根拠もなくそう判断したオレはドラゴン市に向かった。


ドラゴン市に入ってすぐ、セブンイレブンがあった。オレはボタンを押そうと思ったが無く、そして自然に開いたので中に入った。―買い物をしますか―の【はい】を押す。ズラズラと並んだ品物の中なら、これからの冒険に必要はものを選んだ。[おにぎり、缶コーラ、チョコレート、絆創膏]を買った。

市の中央へ向かって歩いていると、24時間営業のマンガ喫茶から、たぶんオレより級上の高校生と思われる二人連れが出てきて、目があった。頭の中でモンスター遭遇の場面が現れた。少しぼーっとしていたオレは【戦う・防御・逃げる】の中から【戦う】を選んでしまった。
「んだーオメー、なのかようか」一人が少しろれつの回らないセリフをオレに向けた。
「ここのか、とおか」オレはとっさにそう言って【壊れた傘】をさして身構えた。
「ざけんなー」

おれは見事にモンスターのパンチを受けて尻餅をついた。さらにもう一人の足蹴りをくらい、お行儀悪く道路に寝ることになってしまった。
【防御】を選んだオレに、さらに蹴りが入って、オレのHPはゼロに近くなった。オレは
寝ころんだまま、セブンイレブンの袋からチョコレートを出して、またまたお行儀が悪く寝たまま食べた。HPが回復していく。
「何だこいつ、頭おかしいんじゃない」
「気持ち悪い、帰ろう」

モンスターが引き上げた。オレはゆっくりと起きあがり、つぶやいた。
「まだまだ、鍛えないとダメだな。防具も必要だな」

オレは歩き始めた。道路の少し先に光るのが見えた。近づいて見ると100円玉だった。
ポロロンと頭に音が鳴り《100円手に入れた》と浮かんだ。さらに歩いてビルの入り口が見えたので入った。ドアを見つけしだいボタンを押したが、どこも開かなかった。また外に出て、冒険を続けた。

――とりあえずはもっと攻撃力のある武器と防具をそろえなくては――と、オレはショップを探した。どこにも剣と盾を表した看板は無い。隠れて営業しているのだろうか。それらしい所を探して歩いているうちにまたHPが低下している。――先程の戦闘で毒を受けたのだろう――そう冷静的確に判断したオレは傷口を探し、絆創膏を貼った。さらにオニギリもお行儀悪く歩きながら食べた。頭の中のどこかでポイントが減るかなと思ったが、そう上品なキャラクターでは無いらしく、お行儀が悪くてもポイントは減らなかった。

武器屋は見当たらず、オレは勤め帰りだろうと思う厚化粧でおミズ風のおばちゃんに、
「この辺に武器と防具を扱っている店はありますか」と尋ねた。

おばちゃんは、30秒ほど頭の中で検索をしたが、「ブキトボウグ」は非合法なドラッグという答えが出たようだった。
「あんた高校生でしょう、そんなもんに手を出すんじゃないよ」と言って頭から足までオレを値踏みするように見た。
「まあ、もっといいおもいをさせてあげることができるけど、あんたお金持ってんの?」
通行人に?付の言葉を貰ったことは無く、オレは言葉を探したがどこにも無かった。
オレはキャンセルボタンを押して、その場を去ろうとしたが、おばちゃんは気に入らなかったらしい。
「お金が無かったら、話しかけてくるんじゃねえよ」

オレはおばちゃんの声に押されるように早足になってその場を離れた。
 ――お金?―― そう言えば、残りはいくらだろう。
1980円――バーゲンの値段のような残金を、もっと増やせないものかとオレは考えた。――拾ったアイテムを売る―― それしか無いだろう。しかし、【壊れた傘】は一応武器だし、値段はつかないだろうと冷静に判断したオレは、素早く次の行動に移った。

大通りから脇道に入り、手前の家から探索に入った。玄関の前に立ち頭の中でボタンを押した。ドアは開かなかった。庭をチェックしたが何も無かった。

次の家には[愛想のいい犬」が出迎えてくれた。オレは経験値を上げるためにその犬を【壊れた傘】で打った。
「パコン!」頭を一撃。
その犬は一瞬何が起こったのか理解できずに首をかしげた。
「パコン!」さらにもう一回。
[愛想のいい犬]が[普通の犬]になった。
「パシッ!」背中を一撃。
作品名:ろーるぷれいいんぐ 作家名:伊達梁川