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WishⅡ  ~ 高校2年生 ~

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 奏に頷かれて、
「これは例外!」
 航が咳払い。
「“例外”の方が多くなるんだから、覚悟しといた方がいいぞ、藤森」
 航を横目で見ながら、ノートを構えて慎太郎が奏に笑う。
「そうじゃないかと思った」
 慎太郎に頷く奏だが、笑いながらも指先は鍵盤の上で動いている。
「なんやねん、二人して!」
 口を尖らせる航に、
「歌だけでも形にする?」
 笑いながら奏が問いかけ、
「勿論!」
 航が頷く。
「……超・ハイペースじゃん……」
 慎太郎がノートを放り出してベッドに突っ伏し、それを航と奏がムリヤリ引き起こして四日後目指しての練習が始まった。
  

 暖かい陽射しの中、航を真ん中に左に慎太郎、右に奏が並んで公園のメインストリートを歩く。集まり始めた人達が、目当てのストリートミュージシャンを探しながら交差する。
「ちょっと早目に来て、正解やな」
 あまり人が増えすぎると、いつもの場所が中々空かなくなるのだ。
「飯島くん。その荷物……」
 慎太郎の荷物がひとつ多い事に気付いた奏が首を傾げる。
「これ?」
 背中に回したそれを肩越しに見ながら、
「折りたたみ式の椅子だよ」
 と、慎太郎。背中にあるのは、つい先月まで航が使っていたカウンターチェアーである。
「立ちっ放しだと、体力使うだろ?」
 自分に出来る対策は出来うる限り取ろうと、藤森父に相談して出した結論なのだ。
「ピアノが必要ない時や、ちょっとでも疲れた時は、大人しく座ってろよ」
 どことなく航と似ている奏。きっと、疲れた事にも気付かずに演奏を続けるだろうと思いつつ釘を刺す。
「シンタロ、細かい……」
「お前が大雑把だから、気ぃ使ってんだよ」
「飯島くん、僕、そこまで弱くは……」
 航と慎太郎が言い合う声に隠れるかのように奏が呟いた。
「弱い・弱くないの問題じゃねーんだ」
 慎太郎が微笑む。
「ご両親に心配かけたくないだろ?」
 奏の為……に見えて、実は、両親の安心への保険なのだ。
「“二人で帰る”と一緒や!」
 航がポン! と手を叩く。
『必ず、二人で帰ってくる事。……玄関を開ける時は、必ず、“二人”だ』
 半年前、航の祖父が言った言葉を思い出す。
 どちらが欠けても“心配”に変わりはない。だから、必ず“二人”でただいまを言う。それと同じで、疲れたら休める場所があるから……それを持ってくる二人がいるから……だから、心配なく送り出して下さいと……。
「大変やな、シンタロ」
「他人事か、お前は!?」
 じゃれるように騒ぐ二人に、
「ありがとう。飯島くん、堀越くん……」
 小さな声で奏が頭を下げた。
「あ! それっ!!」
 その奏の頭をペコッと叩いて、
「前々から言おうと思ててんけどな」
 航が慎太郎と奏を見比べる。
「シンタロ! “奏”!」
 慎太郎を見ながら奏を指さす航。続けて、
「奏! “慎太郎”!」
 頭を上げた奏を見ながら慎太郎を指し、
「で、“航”!」
 自分を指す。
「なんだ、お前は?」
 目的地に到着し、荷物を下ろしながら慎太郎が首を傾げた。
「俺だけ名前で呼んでるのって、おかしくない?」
 詰め寄る航に、
「別に」
 と慎太郎が一言で流し、
「きっかけとかあれば、呼んでたりするんだろうけど……」
 今更、とても……と奏が頷く。
「外国って、呼び捨てちゃうん?」
 航の疑問に少し考える。
「基本的にはね。……でも、“Mr.”とか付けて呼んでたし……」
「同世代にも!?」
「同世代は……」
 準備をしていた奏が、
「“友達”は、君達が初めてなんだ……」
 二人の顔を見て呟いた。その言葉に、航と慎太郎が顔を見合わせて、“どーも”と三人で頭を下げ合う。
「三人で挨拶かね?」
 突然、若林氏の笑い声。“面白いねぇ、若い子は……”と笑いながら、三人の前に立つ。それが合図だったかのように、わらわらと人が集まり始めた。朝早くにやっていた時はジョギング前だったり、散歩途中だったりした人達が、今では、ジョギングや散歩が終わってからも待っていてくれたりする。そんな最前列のメンバーの顔を見て三人が笑顔で会釈し、ライブが始まった。
 言葉もなく、航のギターが主旋律を奏でる。春だというのに、一面がコスモス畑へと変わっていく。その花を揺らすように、慎太郎のブルースハープと奏のピアノが交差するように音を響かせている。互いを見るわけではなく、各々が呼吸を感じて音を繋げていく。
 そして、ライブ最初の曲、“秋桜の丘”の演奏が終わった。
「おはようございます」
 慎太郎の言葉に三人揃って頭を下げる。
 朝の聴衆は、近所の人が殆どで客層がやや高い。だから、選曲もやや大人し目だ。
 そんなコピー曲を数曲演奏したところで、オリジナルの演奏に入る。
「こいつ等、調子にのって、早速作って……」
 親指で自分の右側を指しながら言う慎太郎に、
「“調子にのって”って、何やねん!?」
 航が頬を膨らませる。奏はというと、聴衆と一緒にクスクス笑っている。
「“こいつ等”って、奏も含まれてるんやで!」
 笑とる場合か? ……と膨れ続ける航。
「僕らの三曲目のオリジナルです。“メロディー”」
 膨れている航が呼吸を整えカウントを取る。
  
  ♪ 言葉のない世界で
  
 静かなイントロから始まる、新しい歌。
  
  ♪ 響くのは メロディー
  
 慎太郎の声に、詞の端で航と奏の良く似た声が重なる。
  
  ♪ 茜色の雲が……
  
 わずか四日前に出来たばかりだとは思えないほどのハーモニーだ。
  
  ♪ キミがいること
  
 サビに入り、そのハーモニーに聴き入る聴衆。
  
  ♪ ここにいること
  
 後半のサビは更に旋律が別れる。それまで、語尾部分を少し違えていただけのハモが、完全に三部に分かれるのだ。
  
  ♪ 悲しみも 苦しみも
  
 それまで奏が歌っていた旋律を航が歌い。奏は、慎太郎に近い音程で歌う。練習していて気が付いた奏の音域は、航と同等の高音部から慎太郎より少し高い程度の低音部。ピアノを弾きながらだと余り小細工は出来ないから、旋律自体は単純なのだが、それがかえって三人の声を引き立たせていた。
  
  ♪ 紡いで繋げる
  
 短い曲だから、聴き入った途端に終わってしまう。
  
  ♪ ボクらのメロディー
  
 下げた頭を戻した三人の目に、物凄い勢いで拍手する若林氏の姿が映った。
「“三人”っていうのが、こんなに演奏の幅を広げてくれる物だとは思ってなくて……」
 慎太郎の言葉に二人が頷く。
「いずれは、ここで演奏する曲、全部、自分達のに出来れば……って考えて……」
「ホンマにっ!?」
 航が唐突に慎太郎の話の腰を折る。
「そのつもりじゃねーのかよ?」
 は? ……と航を振り返る慎太郎。
「だって……なぁ?」
 航が奏を振り返り、二人で頷く。
 昨日までの“ハイペース反対宣言”な慎太郎からは想像も出来ないセリフなのだ。
「……いいねぇ。オリジナル」
 最前列の若林氏は、ご機嫌である。
「元気の出る歌や、疲れを癒してくれるような歌が聴きたいねぇ……」
 若林氏の呟きに聴衆が頷き、同意する。それを見て、
「はいっ!!」