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無題Ⅱ~神に愛された街~

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Episode.4 服屋



ノヴェムには広い土地を有するがために、特別な地域分断がしてある。
まず、大まかに中央、西、東、北、南の5つの地域があり、その中にまた細かい地域に別れている。中でも有名なのは、中央地区「ラヴィス」――ここでは幅広い物資が外から輸入され、世界中の貴重な品々がマーケットのように売られている。この街・・・「都市」の首都と言ってもいいだろう。次に、東地区の「ノクス」。
「ノクス」は医療が発達しており、腕のいい医者達が世界中から集められ、密集している場所だ。

そして、鬨とヴェクサが今いるのは中央地区「ラヴィス」の一番西側である。

「ここからだと服屋が近いな」
「ンじゃあ、まずは服屋にいくか?」
「まぁそれが妥当だろうな。順番的にはその後食料、その他で、最後に武器か」
「わかった。ンじゃ、はぐれても東に行けば何とかなるってことだよな・・・」
「そうだが・・・はぐれる気満々なのはやめてくれ」
「いや、保険だよ、保険」

ヴェクサの場合、保険が保険として利かないから不安なのである。
忘れがちだが、ヴェクサは一度自分の統治していた街ですら方向が解っていなかったことがあった。本人も何度か「方向音痴」と言われているようだったし、気をつけなければ変なことに足を突っ込んでいそうで不安だ。・・・不安ばかりである。

「この街って、何回か来たことあンのか?」
「あぁ。何度かな」
「他の街は?どれだけ行った?」
「アセディアにある街はほとんど回ったな・・・そろそろ他の大陸に渡ろうと思ってたところだ。まぁ、元々はこの街はそれだけのために寄るつもりだったしな」

この街の南側には大きな港があり、そこから他の大陸に渡れる舟が出ているのだ。

「へぇーー・・・じゃぁ、その話を今度聞かせてくれよ」
「・・・・・後でゆっくり話してやるさ」

そんな会話をしながら街を進んでいく。
朝食を取った時からだいぶ時間はたっているが、まだ朝の時間だ。
人は思ったより少なく、人ごみで迷うという心配はないだろう。
ヴェクサも気をつけているのか、鬨からなるべく離れないようにしているようだ。

(しかし、方向音痴はなんとかしないとな・・・)

街の中ならまだいいが(最悪宿にさえ戻れればいいわけだし)、旅の途中で森の中などで迷子になると見つけられる可能性は0と言っていいだろう。
ただでさえ迷いやすい森の中では探す側だって命を危険にさらすことになるのだ。
それだけはなんとかして防がねばなるまい。

鬨が思うに、ヴェクサは別にそこまで方向音痴というわけではない。
あの地下で見せていた記憶力には驚かされるものがあった。それなのに街では迷っていたというのは、おそらく記憶が違うのだろう。ヴェクサの覚えていた街の光景と、現在の街が違い過ぎたのだ。
ヴェクサがいつあの地下から「起きて」来たのかが解らない以上確信はないが、おそらくヴェクサは定期的にあの地下へこもっていたのだろう。
時間の止まった地下と街を行き来していたというのなら、「街がよく変わる」と言っていたヴェクサの言葉にも納得できる。
まぁ、それでも残る疑問はあるが、理論的に間違ってはいないはずだ。

「ヴェクサ、昨日見たこの街の地図は覚えてるか?」
「は?なンだよ唐突だな・・・あぁ、大体は思い出せるぜ」
「そうか」

一人納得している鬨に、ヴェクサは訝しげな視線を向けたが、説明をする気のない鬨に視線を前に戻した。

作品名:無題Ⅱ~神に愛された街~ 作家名:渡鳥