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りんみや 陸風6

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 祖父がわざわざ連絡して自分の考えを認めてくれた。つまり、正しい方向に向かっているのだろう。美愛にとって正しい方向ではあるが、それでいいと真理子も思っている。祖父は自分に声をかけない。自分が祖父を拒絶した。それから一切、連絡もなかった。
「真理子、お祖父さまがね、誤解は解きたいから、今度、逢いにくると伝えてほしいって。あなたに連絡しなかった意味は、あなたが考えている理由ではないのよ。」
「・・・私のことを嫌っているのに?」
「だから、それが間違っている。・・・あのじいさまが孫にどれくらい甘いのか、おまえは忘れてるな? おまえの未来が視えなくなるから離れていたんだ。みやだって、じいさまと実際に逢ってたのは数えるほどだ。・・・俺や瑠璃さんだって、ほとんど逢ってないよ。この間、五年ぶりに逢ったばかりだ。」
「・・・これで真理子のことも心配しなくていいって喜んでたわ。だから、解禁するのですって、これからはちょくちょく顔を出すつもりみたいよ。・・・ごめんなさいね、リッキー、あなた、確実に苛められると思うから覚悟しててね。」
 げっと城戸は厭そうに頷いた。新しい婿殿だ。それも抵抗することのできない城戸である。反応が楽しいだろうと惟柾は瑠璃に宣っていた。
「・・・でも・・・みやくんは・・・頻繁に・・・」
「それは最後のほうだけだ。もう視る必要がなくなったから、じいさまはみやにだけ解禁していたんだ。」
「じゃあ、お祖父さまは・・・」
「知ってたよ。城戸くんたちが集められたのは、俺と瑠璃さんが結婚する前のことだ。だいたい、志郎なんて三十年前に引き取られてる。みやが最後の手術を受ける前だ。その頃から、あのくそじじいは準備してくれたのさ。・・・何もかも承知の上でな。」
 そこまでしても保たなかった。あれが最大限だったのだ。夫ばかりと詰っていたのは間違いだった。逢わないということは、未来が視えるということだ。厭われていると疎外感を感じていたことに申し訳なくなった。
「あのじいさまは孫にだけは甘い。おまえのことだって真剣に考えていたはずだ。ただ、おまえがしっかりしてて危なくないから口を挟まなかっただけだ。孫息子なんかより孫娘のほうがかわいいだろうに、逢わないで我慢してくれたんだ。今度、礼を言ってやれ。じいさま、泣いて喜ぶぞ。あのじいさまが泣くのは楽しみだ。写真でも用意しようかな。」
「そんなこと言うから、ダッドに苛められるのよ。りんさんも懲りないわねぇ・・・いい加減に仲良くすれば?」
「してるじゃないか。この間なんてショッピングに付き合ってやったのに。あれぐらい親切にしてやってんだから、あっちが折れればいいんだ。」
「林太郎さんだけだよ。大旦那さまと対等なのは。・・・城戸さん、この人に似てるからって真似しちゃ駄目だよ。林太郎さんは特別だからさ。」
「ええ、それはわかってます。私には、オーナーを呼び捨てにする勇気なんてありません。マリー、条件に変更はない。昨日の条件で・・・・水野に婿入りする。」
「はい、それで結構です。美愛、今夜からは川の字よ。ママも一緒だから。」
「えっ? 今夜?」
「あら? あなた、自分で婿入りするって宣言したじゃないの。もう有効でしょ? ねぇ、美愛・・・ママも一緒のほうが賑やかでいいわよね?」
「うん、そのほうがいい。ねぇ、りっちゃん、ママも一緒でもいいでしょ?」
「・・・美愛がそう言うのなら・・・」
 思い切り尻に敷かれていると佐伯もりんも吹き出している。城戸には日常生活がわからない。言われるままに従うのが今のところは精一杯だ。
「・・・城戸くん、わかんないことだらけだろ? 俺や佐伯さんが質問は受け付ける。」
「すいません、いろいろご教授してください。こういうのは・・・普通なんですか?」
「普通ねぇ・・・気が乗らないなら後日にすれば?」
「林太郎さん、それも不親切な回答だなあ。城戸さん、普通です。別にそう改まったもんでもないし気楽に考えていればいいよ。」
 舅ふたりはにこやかに城戸に教えてやっている。芙由子と瑠璃は、真理子にあまり急激なことはするなと忠告する。
「まりちゃん、城戸さん、戸惑われているみたいだからね。みやちゃんみたいにはいかないのよ。」
「そうよ、真理子。気長に理解していきなさい。」
 ずっと一緒に暮らしていた亡き人は添い寝してもらうのが当たり前の人だった。誰かが一緒でなければ寝不足になるほど寂しがり屋な夫は、妻が留守をする時はどちらかの両親の許へ避難していた。対して城戸は基本的に独り寝が楽な人だ。夫が寂しがるから添い寝していたけれど、それ以外は独りだ。他人と関わることを極端に嫌うというのは、亡き夫から聞いている。対照的なふたりに嫁ぐことになろうとは真理子だって予想しなかったことで戸惑いはある。
「・・・そうなのかしら・・・ねぇ、リッキー、少し距離を空けておくほうがいいの?」
 そう尋ねても、相手も困ったように、「さあ」と首を傾げる。相手だってわからない。はてさて、ここは子供の意見が優先するのだろうな、と娘に意識を飛ばした。
「えっ? 三人がいい・・・美愛、初めてなんだもん。」
「そう、それなら一緒にしましょうか・・・リッキー、やっぱり一緒してくれる?」
「ああ、美愛がそれがいいのなら。」
 まず優先するのは子供だ。こういう形態なら、お互いが意識しなくてもいいだろう。毎日でなくてもいい。
「・・あの・・・マリー・・・ちょっといいかな?」
「はい?」
「仕事はやめて屋敷に住むことになると思う。リィーンのように髪結い床の亭主というやつで了承してもらえるかな? 事業のほうは外されてしまったから、失業しているんだ。もし、金銭的なことで問題があるなら・・・」
「金銭的には、なんの問題も生じないです。別に生活費をいれてくれなんて、みみっちいことを頼むわけないでしょ?・・・そんなことは気にしないで。パパみたいに内職もしなくていいわ。」
 内職って・・・とりんは笑っている。表立って動いていないので、当人が内職などというものだから、真理子も同じように言う。一応は何社かの企業のオーナーを務めている。それに自分でも暇に任せて仕事している。
「・・・こらこら、なんにもしないっていうのも辛いもんなんだぞ、真理子。・・・城戸くん、身体のほうが回復したら、俺の内職の手伝いくらいは廻す。それぐらいのことにしておけばいい。おまえさん、仕事中毒だからな、いきなりは辞められないだろう。それは考えてるからさ。」
「ええ、そうさせてください。なんだか、気分的に落ち着かなくて・・・」
 恐縮して城戸は頭を下げる。ゆっくりしろ、と多賀から命じられているものの、それがストレスになっている。
「仕事しないで遊んでいるのがストレス? そんなことあるのねぇ・・・りんさんもそうなのね? 」
 瑠璃は呆れたようにりんを見ている。働いて働いて、とにかく仕事している夫に呆れているのだが、どうやらそういうことらしい。
「仕方ないだろう。貧乏性なんだから・・・いや、城戸くんは貧乏性だからではないな。こいつのは、病気だ。趣味が仕事なんだからさ。」
「あなただって・・・同じじゃないの。」
作品名:りんみや 陸風6 作家名:篠義