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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ファントム・サイバー

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「今ある世界の破壊と、新たな世界の創造。キミがこのサイバーワールドでやろうとしていたことと同じだよ」
 これに大狼君は首を横に振って答える。
「……最初はそうだったが、ある事実に気付いてからは目的が変わった。真に破壊を好み、自分の世界を創ろうとしていたのはザキマだ。私は純粋に全てを知りたかった。そのために権力が必要だっただけのこと」
 ザキマに全ての罪を擦り付けているのか、それとも大狼君はただ純粋に探求したかっただけなのか、それはわからなかった。
 大狼君は問いを続けた。
「世界の破壊と創造とは具体的にどういうことだ?」
「世界をカオスに還すほどの破壊。そして、創造とは全ての融合。全ての存在が一つに溶け合い、全ての感情や想いを共有する」
「全てが融合した時、そこに個々の自我はあるのか?」
「個の意思は全の意思となり、全の意思は個の意思だよ。自我なんてものは超越している」
 ファントム・ローズの仮面が哀しい顔で口を挿む。
「誰がそんな世界を望む?」
「ボクが望む。全てが交われば、独りで悲しむこともなくなるから……」
 あたしは望まない。
 よくわからないケド、それは違うのと思うの。自分がいて、傍に誰かがいることが大切だと思うの。同じ存在になっちゃダメなの。自分がいて、自分とは違う誰かがいることが、存在していることが、それが重要だと思うの。
 ダメ……頭がごちゃごちゃ。
 けどね……。
「あなたの考えは間違ってると思う」
 あたしはファントム・メアに向かって言った。
 大狼君もそれに続く。
「私の考えと不一致があるようだ。ファントム・メア、君は私の敵だ」
 ファントム・メアの仮面が哀愁のこもった薄笑いを浮かべた。
「哀しいね、世界にはボクの敵ばかりいる。なぜみんなボクの言ってることを理解できないんだ。それがみんなの幸せなのに」
「あたしは幸せだとは思わない!」
 あたしの言葉にファントム・メアが質問をぶつける。
「なら、君にとって幸せとは何だ?」
「あたしの幸せは……大切な人たちが傍にいること」
「傍にいたいなら溶け合えばいい。ずっと一緒にいられるじゃないか!」
「違うの、それは何か違うの……」
「やっぱりいくら話合ってもムダみたいだね。行くよナイトメア」
 闇の衣に包まれ、誰も止める間もなく、ファントム・メアとナイトメアは姿を消失させた。
 そして、ファントム・ローズもいつの間にか、薔薇の香を残して消えていた。
 残されたのはあたしと大狼君だけ。
 あたしはいったいこれから……?

《2》

 大狼君によって通された個室。
「そこのソファに座りたまえ」
 促されるままにあたしはソファに腰掛けた。
 とても質素な部屋。
 金属の壁に囲まれ、置いてあるのはデスクとデスクトップパソコン、テーブルとその上に置かれたノートパソコン、あとはあたしの座ってるソファだけ。
 大狼君はデスクの椅子に座った。その姿のどこからも、あたしに対する敵意を感じない。ケド、あたしはこいつのことを信用しているワケじゃない。
 黒い狼団のトップ。サイバーワールドの人々を苦しめ、破壊の限りを尽くしてきた。あたしはこの世界に来て、それを目の当たりにしている。
 大狼君は直球であたしに聞いてきた。
「私を敵だと思っているか?」
「わからない。ケド、味方とは思えない」
 正直に答えた。
 大狼君の口元が笑った。
「私を敵だと思おうが、恨み憎まれようが、それは構わない。ただ、今は力を合わせたいと思っている」
「なぜ?」
「私よりも事情に詳しいからだ。私はこの世界が好きだ。この世界がなくなる、あるいは別の物になることを私は望まない」
 あたしだってこの世界が嫌いじゃない。この世界だけじゃなくて、あたしの世界だってなくなって欲しくない。
 でも、大狼君には協力できない。だって敵だったのに、手を繋いで仲良しになんてなれない。
「あなたは黒い狼団のトップでしょう? あんなにも人々を苦しめてきたのに、そんな人に協力なんてできない」
「純粋に私はこの世界の情報を握りたかっただけだ、そのために必要なことをしたまで。それにここの住人たちは電影でしかない、生きていないのだよ」
「それは違う。あたしは世界というモノを知って、電影、幻想、夢も幻も、生きているとか、生きていないとか、そういうモノで計れるモノじゃないと思う。存在していることが重要なの」
 大狼君は黙り込んでしまった。
 そして、とても長く感じた時間を破って大狼君が口を開いた。
「君はこの世界の人間ではないのだろう?」
「うん、違う世界からあたしはこの世界にやって来た」
「やって来たという言い方をするということは、その世界での記憶もあるということだな。私もこの世界の住人ではないらしいが、自分がいた筈の世界の記憶がないのだ」
 あたしにはちゃんとある。家族もいる、友達もいる、学校にだってちゃんと通ってる。向こうでの生活があたしにはある。
 大狼君の口から重たいため息が漏れた。
「私はいつも疎外感を感じていた。ここは自分の本来暮らす世界ではない。帰るならば、どこに帰ればいいのか? そのためにとにかく私は情報が欲しかった」
「だからって、あなたのやって来たことは間違ってる」
「果たしてそれはどうかな?」
「間違っているものは間違ってる」
「君は私にはじめて会ったときに、情報が欲しくて来たと言ったはずだ。私から情報を得るということは、私のして来たことを肯定することになる」
「それは……」
 なんか言いくるめられる感じ。
 泥棒から盗品だと知っていて品物を買ったら罪?
 大狼君が情報をより多く手に入れる方法が、別にあったのかどうかわからあない。効率的だと判断したから、大狼君は黒い狼団なんて組織を作ったんだと思う。大狼君の力を借りようとしたあたしには、本当に彼を咎める資格はないのかなぁ?
 口ごもってしまったあたしに大狼君は言う。
「君が肯定できないのは、私が悪で、自分は善だと思いたいからだ。一般論としての善悪は民衆が決めること。しかし、真の善悪とは人それぞれの胸の中にある。間違いだと思いながらすることと、正しいと信じてすることは大いに違う。私は自分の進んだ道は正しいと思っている」
 この人のこと苦手かも。
 本当は大狼君って悪い人じゃないのかも。なんて思っちゃう自分がいるし。
 黒い狼団がすることを通して、そのトップにいる大狼君を憎んでた。なんてヒドイことをする人なのって、思っていたのはたしか。けど、フィルターを通しての大狼君と、実際に会った大狼君にはギャップがあった。
 あたしが想像の中で憎んだ大狼君のイメージは、実際はザキマが持っていたイメージだった。
 はじめて会ったときも、戦う気満々だったあたしに対して、どちらかというと情報を求めようとしていただけだったような気がする。二度目に会って剣を交えた時も、戦うことよりも対話を求めてきた。
 ……何かいつの間のか大狼君を正当化しようとしてるし。
 あたしの中で、大狼君を正当化しようする考えが働いてた。これってもしかして大狼君の術中にハマってる!?
 泥棒から盗品だと知っていて品物を買ったら罪?