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CROSS 第13話 『帰投』

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第1章 足探し



   第13話 『帰投』

【時間軸】 … 異次元暦42733年 11月16日 朝
【場所】 … 『世界『悪魔魂』』(デモンズソウルの世界)
       ラトリアの塔エリア
       旧大日本帝国連邦軍捕虜収容所駐車場



 山口と妖夢は、収容所の駐車場で、あちこちに放置された車の中から、ちゃんと動く車を探していた。救出地点に早く行かなければならないのだが、動く車は簡単には見つかりそうになかった。なぜなら、敵の悪魔連合軍は、ロボットも意志のある敵とみなしており、ロボット制御の車を全て破壊していたからだ。そこで、あればの話だが、元々数少ない手動式の車を見つけなければならなかった。
 駐車場の入口付近に立つ曲がったポールで、大日本帝国連邦のボロボロの国旗が、ユラユラと弱々しくはためいていた。屋外に設置されている自家発電機からは、火花がときどき散る。

「そういえば、まだ『放射能除染薬』をもらっていないんですけれど、今もらっていいですか?」
妖夢が一台の車から降りてきてからそう言った。残念ながら、その車もダメなようだ。
「……そうだな。あっ」
 山口はそのとき、壊れたトラック2台の間に放置してあった、無傷のオープン式の四輪駆動車を見つけた。うまく敵からの死角となっていたらしく、まだ十分に動きそうだ。ただし、電気式なので、バッテリーの残量が不安だった。

「それじゃあ、御自慢の刀をオレに持たせてくれないか?」
その大丈夫そうな車に向かいながら、山口が妖夢に頼んでみる。放射能除染薬との交換条件というわけだ。
「……少しだけならいいですよ」
妖夢は歩きながら背中にある2本の刀のうちの1本を鞘から抜いた。山口はそれを見ると、ポケットからその『放射能除染薬』を取り出した。カプセルタイプのその薬を、山口は妖夢に放り投げた。妖夢は楽々とそれを手にすると、抜いた刀を、柄のほうを山口に向けて差し出した。
 山口はうれしそうな様子で、その刀の柄をつかんだ。

   バリリリリリ!!!!!!

 山口が刀を手に持った途端、刀自体から激しい電流が流れ出した……。山口は、驚きと電流のしびれのせいで、刀から手を離して地面に落とした。刀は山口の手から離れた途端、電流は流れるのを止めた……。
「刀1本持てないんですか?」
妖夢がクスクスと笑いながら、今は静かな刀を拾った。
「おまえ、その刀に結界を張っているだろ!」
山口が少し怒った口調でそう言った。
「私が張っているわけではありませんよ? この刀が自らが張っているんです」
妖夢はそう言うと、その刀という刀を背中の鞘に戻した。
「じゃあ、もう1本のほうを」
「ダメです。たった今、「手に持った」でしょう?」
山口は舌打ちした後、
「……なんて奴だ。半分幽霊の小使にしか持てない刀でごまかしやがって、痛っ!!!」
妖夢の半霊部分に当たる霊魂が、山口の背中にぶつかってきた。
「聞こえてますよ」
妖夢はそう言うと、タダで手に入れることができた『放射能除染薬』の錠剤を飲み込んだ。
「…………」{先に刀を受け取るようにすればよかった!}
後の祭りである……。