小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

―…邪気眼…だと…!?

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
まっすぐに続く廊下を教師と共に歩む。教師は顎鬚を蓄えた中年の男、親しげに俺に話し掛けている。教師としては確かに好感の持てる人物であると思う。しかし、この教師こそ、俺の動向を関する監視者―…サーヴィランスであることをすでに俺は知っている。気付いていないとでも思うのか、馬鹿め。
「なんだァ、緊張してるのか?表情が固いぞ」
 そう言って俺に爽やかな笑顔を向けるが、ふふ、内心それどころではないだろう。何せこの俺は、普通の人間ではない。右手に悪魔の能力(チカラ)…邪気眼を持ちながら人として生まれてきた暗黒の騎士―…ダークネスナイトなのだから…!
堅く拳を握った。この腕に宿った能力―…邪気眼―…こいつが厄介だ。今は俺の力で、この腕の力を抑えているが、こいつはあまりにも危険。この力がバーンアウトした時に、どれだけの人間に被害が及ぶか分からない。それでも被害者を少なくするために、 アメリカ政府が俺を都会から追放し、田舎へ追いやった。最も、こんな田舎に追いやったところで俺の右手の全能力が開放されたら地球の半分が吹っ飛ぶぜ。
「ま、みんないいヤツだから心配ない。何かあったら俺にも相談するんだぞ」
 …心配しなければならないのはそっちの方だろ?白々しい。鼻で笑うと、教師は変な顔をしていた。
 ふと窓の向こうを見ると、雲一つない青い空。グラウンドには体育の準備をしている生徒、そのグラウンドの周りをぐるっと囲むようにして生い茂っている緑がそよ風に踊る。いい天気だ。この俺に似合わないくらい、いい天気だ…な…。
「何か、来る…」
「あ?何か言ったか?」
「いや…」
 嫌な予感がする。いや、これはあくまで予感だ。しかし、ああ、これは…転校早々に、困ったものだ。
 教室のドアの前に着く。教室に近づくにつれて、この邪悪な波動も大きくなっている。闇の力を持つ右手が疼く。これは警告(アラーム)だ。この教室の中には確かに、俺の敵になりうる奴がいる。しかし、それ如きで臆す俺ではないのだよ。隣にいる教師が俺に笑みを浮かべた。嫌味な野郎だ。しかし、この俺にはそんなものは通用しないのだ。
「じゃあ、俺が紹介するからお前はみんなに自己紹介するんだぞ。みんな、お前が来るのを楽しみにしてたから」
「フン…楽しみ、か…」
「………」
 教師は…―否、サーヴィランスは眉根を寄せた。

* * *

「ええ?転校生?何それ私、聞いてない!」
「葵は知らなくて当然だよ。みんな知らなかったんだもん。教務室で先生たちがうちのクラスに転校生が来るっていうのをみぃちゃんが聞いたんだって!男!イケメンだといいねぇ」
遅刻ぎりぎりで着いた教室は謎の転校生の話題で持ち切りだった。へえ、と空の相槌を打つ。実をいうとその転校生よりも、今朝ぶつかったイケメンくんの方が気になるのだ。変なことを口走っていたけれども、顔は確かにカッコイイ。人は見た目が9割派な私は、もう彼が気になって仕方ない。いや、待てよ?もしかしてそのイケメンくん=転校生っていう展開だったりするのかな。でもそれってありがちすぎる。いやいや、そんな漫画みたいな展開はないわよ。それに、そうだとしたら捻りがなさ過ぎる。さすがに内輪だけの冊子とは言え、もう少し展開を練るわよね。
「何よ、難しい顔して」
「ううん、ちょっと考え事…ていうか、あのね、今朝なんだけど」
「あっ、葵!先生来たよ!」
 今朝の話をしようかと思った直後、教室のドアがガラっと開いたのだ。そうして入ってくる、うちの担任の高原先生と―…
「ありがち展開が来た…」
「キャッ、超イケメンじゃん!葵見て!」
 …そうだ。いいのだ。ありがち展開でもいいのだ。ただし、イケメンに限ってるから、いいんだ。
 その転校生は見るもまさしく、今朝ぶつかったイケメンくん。少し長い髪に片目が隠れて、その表情と相まって、少し陰鬱そうな雰囲気をかもし出している。影がある、というのかしら。それがまた彼を一層クールに見せた。
 先生が黒板に音を立てながら、彼の名前を書いていく。
『大神 光』
 何て大仰な名前!犬神家の一族を髣髴させた。だがしかしそれがいい。
「名前もカッコイイね!」
「ねっ、光くんだって」
 口々に彼のイケメン具合を囁く女子たち、物珍しさに騒ぐ男子たち、それを尻目に高原先生がよく通る声をあげた。
「静かにしろー。その調子じゃみんなもすでに知っていたようだが、今日は転校生を紹介する。ご両親の仕事の都合でこの学校に転校してきた大神光くんだ。みんな、仲良くするようにな!」
 先生が大神くんに挨拶を促すように彼の肩に触れると、彼は急にばっと身を引いて叫んだ。
「俺に触れるなッ!」
「えっ、あ、悪い…?」
 そのいきなりの言葉にクラスは静まり返った。思わず先生も謝っている。それを見た大神くんは満足したように、ふと口元で笑って小さく言う。
「ふん、今回は親の仕事の都合ということになっているのか…まあ、いいだろう。俺の親は俺が生まれてすぐに死んだというのに…な…」
「…でもあれさっき教務室で一緒に挨拶して」
「あれは試作機(プロトタイプ)だッ!」
「えっ、君の両親エヴァなの?」
「違う!貴様、加持のような顔をして―…ハッ、貴様、加持なのか?ネルフから、俺をッ―…!ク、クク…そうか、そういうことか…図ったな、シャア!」
 加持なのかシャアなのかっていうかエヴァの次はガンダムかよ!と男子の突っ込みが入ったが、大神くんは気にせずに続ける。
「フン、まあいいだろう。―…時がくるまでは、貴様らのお遊びに付き合ってやろう。しかし、絶対に俺に触れるな。自らの命が惜しいなら…な…」
 だめだ、だめだこの人完全にどこかに頭の中身を置いてきてしまっている人だ…!クラスの盛り上がりも失せ、しんと静まり返っている。完全に全員ドン引きしている。
「フッ…しかし、俺は一般人にむやみやたらに攻撃したりはしない。安心しろ」
 安心できません。一般人にそんなことをいう人に安心できません。完全にクラスの沈黙を別の何かと勘違いしている様子。先生も固まったまま。もはや、大神くんの独壇場と化している教室。これはみんな引いているんだよ!なんで気付いてくれないの大神くんっ…!
「あ…ああ、ほら、なかなか個性的な、自己紹介だったな。うん、面白いヤツだなあ、オイ!なっ、みんな」
「貴様、この俺を愚弄するか?」
 気付いて!先生の精一杯のフォローに気付いて!見てるこっちがヒヤヒヤするから!ていうか一番前の子とかもう彼のいたいたしさにお腹かかえてるからッ!
「ふん、どうした貴様。ああ、俺のオーラにあてられたか?まあ、一般人には仕方ないな。俺にかかわったやつはこうなるんだ…ふっ、孤独の身にはもう慣れたが…」
 当たらずしも遠からず!惜しい!あと一歩で気付けるよ!しかしそのマイワールドに全員が閉口、先生もさすがに口元を引くつかせている。
「あはは、本当個性的だな〜。で、ああ、君の席はね、うん。佐藤!佐藤葵の隣な」
「佐藤…葵…?」
作品名:―…邪気眼…だと…!? 作家名:笠井藤吾