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明日に向かって撃て!(終)

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苦難の道〜明日に向かって撃て!〜


 踏切を渡り、線路沿いに少し歩いた所にある喫茶店『茶論』に来ている。シャーロックは家で留守番だ。この店は犬連れでは入れない。最近はここをよく利用している。就職情報誌が置かれているので、それが目当てである。というか、喫茶“憩い”には行きづらいからである。
 俺は心に決めたことがある。
 今度緑ちゃんと会う時には、自信を持ってプロポーズをするのだ。それにはやはり安定した収入を得ることだろう。
 その気になればどんな仕事でも出来るのであろうが、やはり得手不得手はある。接客業の求人が多い。そのほかには資格を要する薬剤師とか肉体労働の運搬業とか。

 喫茶店『茶論』でいつものように遅い朝食を取りながら雑誌をぺらぺらとめくっていると、奥にある座席から女の甘ったるい声が聞こえてきた。
 顔をあげて見ると、そのボックス席にいる男女、男が女の肩を抱き寄せて、女のセーターの裾からもう一方の手を滑り込ませているではないか。セーターの中の手の動きが、その本来のふくらみの変化と共に見て取れた。
 俺は見てはいけないものを見た恥ずかしさで頭に血がのぼり、股間部が熱を帯びてくるのを感じながら再び雑誌に視線を落とした。目は活字を追っているが、読んでいるわけではない。
 ウェートレスが水を注ぎに来たので、股間部をそっと雑誌で隠した。

 帰り支度をしてレジに向かう男の顔を見た。見覚えのある顔だ。地元では有名な会社の御曹司である。
 ウェートレスは男に視線を走らせ、小声で耳打ちしてきた。
「あの人ね、女の人をとっかえひっかえして連れて来ては、やらしいことして帰るんよ」