小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

虚構世界のデリンジャー現象

INDEX|2ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

木虎と横森とスマートフォンの話




※オリキャラです。
 横森は麹さん(http://www.alfoo.org/diary26/citr_hero/)とこの子。


「フリック入力とか滅べばいいのに」
ぼそりと呟かれた言葉に、横森は顔を上げ首を傾げる。
横森がずっと書類仕事をしていた隣で、委員会室に訪れてからもう2時間、木虎はようやく入手したのだと言っていたスマートフォンにかじりついていた。
横森が覚えている限り委員会室に入ってきた木虎は上機嫌だったはずだ。新しい玩具を手に入れた子供みたいね、と横森が笑えば、こんなの大きな子どもの玩具だろ、と上機嫌に返された記憶もあるので、木虎の機嫌が良かったことは間違いないはずだ。
なのに、今は机の上に両手を投げ出してじっとりと薄っぺらい精密機器を睨みつけている。
「なぁに、フリック入力に行き詰ったの?」
「打ち慣れていないから、効率が悪い。たった1ツイート返信するのに何分かかるんだって話で、TLに追いつけない」
「練習すればいいじゃない」
「俺は実戦派なんだよ。ちなみに行き詰るまで説明書も読まない」
「それ、なんの自慢にもならなくってよ?」
ぶぅぶぅと文句を漏らしながらも木虎の指先はスマートフォンの薄いパネルから離れることはなく、また横森も委員会資料から顔をあげない。
画面上で指を滑らして、時折、耐えかねたように机の上に置いたミニノートで何やら打ち込む。かちかちかちかち、という音は木虎とセットの音だと横森は思っている。何故なら、木虎が委員会室でミニノートから手を離しているのはアニメDVDをみているか、ライトノベルを読みふけっている時くらいなものだからだ。
「前の携帯は壊したの?」
「うにゃ、いい加減寿命きそうだし機種変しただけ。裏の製造年月日みたら4年前でびっくりしたわ」
「それはそれは」
「ま、ICチップ入れ変えれば問題なく使えるらしいから、しばらくは2台持ちだな。料金1台分だけど」
「それはお得ね」
「ただ、ICチップの入れ替えがめんどくさいのが難点だけどな」
横森と会話を交わす間も、木虎はスマートフォンの画面から顔をあげない。上げたと思ったら、ミニノートで開いた『Androidスマフォを買ったら入れておくべきおすすめアプリ』という2chまとめスレからDLするアプリを物色してまたすぐに画面に視線を落とす。
「あんまり根を詰めると目を悪くするわよ」
「しってますー」
「知ってるだけじゃぁ、意味ないのだけどね」
木虎の淹れた、もう覚めてしまった珈琲を一口含んで、横森は呆れたように肩を竦めた。
かちかちというあの音が木虎から聞こえてこないのが少しだけ不思議な気分だった。

 *

木虎と横森。
木虎は携帯/スマートフォン/ミニノートPC常備。ネット中毒者。
でも電話にはでないので捕獲しにくい。

初出:2011/04/15 (Fri)